緊急会議
前回のあらすじ
戦線布告
掃除が終わり、みんなで城に集まった。
会議の前に王様の演説…というか謝罪会見だ。
内容は簡単。
戦争になる。ごめん。という趣旨で、頭を下げたところ、非難の声は一切上がらず、むしろ支持率が高まった感じ。
「日頃の行いが良いんだね。」
と、クウがつぶやく。
「実はそうでも無かったり?」
とリョウがにやけて続ける。
演説を終えたところで会議室に集まる。
メンバーは俺たち4人と王様、フベルト、大臣数人、将軍様だ。
と、その将軍が真っ先に口を開いた。
「さて、戦線布告したからには手があるのだろうな?」
「もちろん。こっちには数多の戦いを勝利に導く軍師様が居ますからね。」
と、リョウが俺を指差す。
「ハードル上げすぎだバカ。まあ、手は考えてあります。」
「では、聞こうか。」
実際はRPGが得意なリョウに任せたい。
面倒が来る前になすり付けられた…
「まず、今回の戦いはふつうにやればまず負けるでしょう。」
大臣がざわつくがリョウたちは「当たり前だな」といった顔で頷いている。
「数、質、技術、魔法、どの面においてもかなりのハンデがある。なので、冒険者たちに協力を要請します。」
すると将軍が片眉をあげる。
「しかし、その程度で足りるのか?」
「いえ、全然。というか、冒険者の力を借りるといっても、彼らにはここを守ってもらいます。」
「実際の戦闘は兵士と騎士団だけだと?」
「ええ、スパイを送り込まれて内部崩壊なんてダサいですからね。」
「しかし、それではより厳しいではないか!」
と、大臣が叫ぶ。
「話を最後まで聞いてください。力で勝てないならここで勝つしかありません。」
と、自分の頭を指でつつく。
「と、いうと?」
「まず、今回の戦いは大まかに言えば防衛戦です。こちらが攻めるわけではないですからね。そして、帝国はアリスター王国と距離があります。」
と、地図を指差しながら言う。
「なので、相手はまず前線基地の設置を余儀なくされます。」
「つまり、その基地を造らせないと?」
「いいえ、その逆です。むしろ作り終わるまで待ちます。」
「何?」
「基地が出来ればそこに駐屯します。つまり、敵軍はそこでキャンプするわけです。といっても一度に運べる物資には限りがあります。」
「何が言いたい。結論を先に言え。」
「今回利用するのは人間の三大欲求です。」
「「「三大欲求?」」」
と、将軍含め、多くが首をかしげる。
「はい。食欲、睡眠欲、性欲は人間が本能的に求める最も強い欲求と言われています。なので、基地の人間のそれらを断ちます。」
「はぁ…」
多くがポカンとしているが、続ける。
「まず、基地が出来たら、食料庫を氷漬けにして冷凍保存します。」
なぜ燃やさないのかというとリョウが「食材の無駄遣いだ!」とうるさいからだ。
なので、冷凍保存(時間で溶けるとはいってない)で手を出せなくする。
と、そこにリョウが口を挟んできた。
「ただし、少しだけは残しておくがな。」
「何故だ?全て潰した方がいいのでは?」
「簡単なことだ。基地の奴らはその残りでやりくりしなきゃならない。つまり、配分を巡って絶対にいざこざが起きる。それで、喧嘩が起きれば自分から数減らしてくれるってこと。ついでに上官に謀反とかしてほしいかも。それと、わずかな幸福を求めて争う人間が滑稽だからかな。あ、それに伴ってだが、こちらの兵士にはしっかり食事を取らせろ。食材にも気を使え、なんなら俺が厨房に立つ。」
「涼太郎、いい顔してるね。」
「あはは…リョウの顔がいい顔かどうかはさておき、そういうことです。食料がなければ、士気が下がり、能力も低下します。そのためにも、補給経路の道を塞ぐ必要がありますが、これは俺がやるのでご安心を。」
つまりは道を岩で塞げばいいということだ。
「さて、次は睡眠欲です。一日中寝かせなければいいので、シラトのつむじ風や、クウの炎の花火で絶えず妨害します。あ、性欲は正直どうしようもないので放置です。ここらで質問は?」
「では、我らは何を?」
と、将軍が聞いてくる。
「こちらの兵士には防衛に集中させてください。これは持久戦です。いかに食料を食べさせず、寝かせないかが鍵です。それさえできれば相手は自ずと崩壊していきます。」
「我らはただここを死守すればいいということだな。」
「はい。あとは俺らが出来る限りなんとかします。」
「わかった。君らに任せよう。作戦の内容も納得出来るからな。何かあれば言ってくれ。」
と、そんな調子で会議は終わった。
解散後、家へ一度帰宅するために帰路につく。
「なあ、ロボルたちと俺らで正面からぶつかるのじゃダメなの?」
「たしかに、シラトの案も捨てがたかったさ。でも、下手にこっちの手の内は晒したくなかったからね。あと、ロボルたちは家の防衛に回したいし。」
「たしかにな。あ、先帰っててくれ、おれフェリクスに援軍要請してから帰る。」
「なあ空成、烏天狗のみんな動かせるかな。」
「少しなら出来ると思うけど、多くは無理かな。でも、掛け合ってみよう。」
「ところで軍師殿?次の策はお考えで?」
「その軍師ってのやめろよリョウ、まぁそうだな。戦いが長引けば、向こうの将軍クラスが出てくる可能性があるから、それに備えることくらいかな。何より、相手が未知数すぎるんだよな。」
「どれくらい続くかね〜これ。」
「さあ?少なくとも2週間やそこらでは終わらないな…」
予備のプランも考えておかなきゃな。
次回、開戦じゃー!
ツイッター
@kisame_novelist