リーダー
前回のあらすじ
一匹と思うじゃん?
「僕は向こうの方をやるから、翔はそっちお願い。」
「了解。気つけろよ。」
街のところまで戻ってくると、遠目で2匹のワームが暴れてる。
その内片方は俺がやる。
現場まで少し距離がある。
勇麟さんが居たはずだが、どうしたんだろう。
心配だが、今はひとまず置いておく。
「なあ、あの、超獣化?俺も出来るのか?」
おもむろに姐さんに聞いてみる。
『出来る。しかし、今のお前には他の奴らのようにうまくは行かないだろう。』
「え?どうして。」
『理由は簡単だ。“足りない”。その一点だ。』
「足りない…」
『せめて合体剣をまともに触れるようでなければな。体力もそうだが、筋力などもろもろ不完全だ。出来ないこともないが、下手をすれば文字通り体がバラバラになるぞ。』
「くっ…」
『努力してないとは言わん。それはあたしが一番わかっている。たが、まだ早い。』
「わかった。なら、アドバイス2倍増しで頼むぞ。」
『了解した。』
そして、ワームと会敵する。
攻略法は変わらない。
口周りを中心に真縦か真横に斬る。
「だけど、キツイな!」
4人でやっと倒した相手を1人でやり合うのは骨が折れる。大剣の方で戦うが、サイズ差を感じざるを得ない。
そして、攻撃を避けるのも一苦労だ。
『バカ!下がれ!』
遂に反応が一瞬遅れた。
大剣で防いだが、俺は体当たりをモロにくらい、店に突っ込む。
机などをを粉砕し、十数メートル吹っ飛ぶ。
「ゲホッ…ゲホッ…」
腹に刺さった木片を抜き、転がってる酒で消毒する。
「あとで弁償かな…ハハ…」
『笑う余裕あるのか!?骨だって…』
「任されてんだ…あいつらに…!」
店から剣を引きずりながら出る。
「なんてったって…リーダーだからな…」
「なぁ、チーム結成するにあたってさ、名前どうする?」
ゲームの大会出場にあたり、チーム名は必須だ。俺たちはリョウの家に集まってご飯を食べながら話し合う。
「そうだな〜厨二臭くなくて、他にないようなのがいいよね。あ、空成ケチャップとって。」
「でも漢字とか平仮名は使いたくないよな。カタカナがいい。おい、ミナトかけすぎだぞ。ちゃんと味ついてるだろ。」
「うーん、四人だからフォー?もちょっと安直だよね。アルファから四つめのデルタを入れるのはどうかな。」
「でもあれ三角形だよね。てか、国とかによっては4って不吉な数字って言われてるし。むしろ4にこだわらなくてもいいんじゃない?どう?ショウはなんかある?」
「ん?なんでもいいよ?」
「最終的にリーダーが決めるんだからさ。なんかないの?」
「なんで俺がリーダーなんだよ。」
「え?だって」
「「「ショウは嘘つかないでしょ?だから一番信頼できるじゃん。」」」
あの時結局チーム名は決まらなかったけど、みんなの言葉はすごく嬉しかった。
ワームがこっちに突進してくる。
その時決めた。絶対にみんなを裏切らないと。
半獣化し、剣を合体させ構える。
だから…
「こんなところで死ねないんだぁぁぁ!」
剣を振り下ろし、ワームの突進と正面から競り合う。
競り合ったまま数十メートル後ろに下がる。
たしかに、俺は他の3人に比べてパワー型だが、まだ転生してから間もない。
来てからもそれなりにクエストだったり、特訓したりしてはいるが、成長速度には限界がある。
リョウは向こうで決して足が速いわけではなかった。
だが、ウベルの力は加減が大事だ。
料理が得意なリョウにとっては味を調整するようなものだ。
シラトは向こうでもプラモデルを作ったりゲームで正確な射撃ができたりと手先が器用だった。
クウは向こうでは学年でトップクラスに頭が良かった。
しかし、俺は別に料理が得意なわけでも、手先が器用でも、頭が特別良かったわけでもない。
ただ、あいつらと仲が良かっただけだ。
力持ちだったわけでもない。
そんな自分に負い目を感じていた。
だが、そんな俺をリーダーとして、仲間として肩を組んでくれるみんなに嘘はつかない。
そのためにも、こいつは俺が殺す。
「姐さん!超獣化!」
『しかし、体が…』
「俺は…死なないから…!」
『!』
「あいつがリーダーとよんでくれてる内は死なないし、死なせない!だから!」
『わかった。そのかわり、きっと死ぬほど痛いぞ!』
体の奥から何かが込み上げてくる。
それはそのまま血となって口から吐き出る。
そのせいで一歩下がる。
(こんなのに耐えてたのか!?あの2人…!)
いや、違う。
この痛みは、苦しみは試練だ。
俺とみんなとの差を埋めるための試練だ。
目の前がチカチカする。
体が軋む。
傷跡から血が吹き出る。
だが、関係ない。
これで追いつけるなら…
これでみんなを裏切らなくて済むなら…
一歩、また一歩と前へ進む。
そして、ワームの顎の下の地面を思いっきりかちあげる。
ワームはそのまま後ろへよろめく。
苦しみは消えていた。
残っていたのは、軽さ。
今まで両手で精一杯だった剣が軽く感じた。
両腕は熊のようになり、爪も伸びた。
足も大きくなり、靴がキツい。
歯が伸びたせいで口の中で刺さって痛い。
『乗り越えたな。さ、解けないうちに終わらせるぞ!』
「了解!」
ワームが口を大きく開け、もう一度突進してくる。
歯で噛み砕く気だろう。
剣を置き、素手で受け止める。
口に足をかけ、口をさらに開かせる。
限界を超え開かれた口は両側に裂け目が出来る。
すでに突進の勢いはない。
手を離すと、ワームは苦しみ悶え始める。
剣を手に取り、瓦礫を踏み台にして跳ぶ。
「一度勝った相手に負けるなんざ許されねえんだよ!!!」
剣に岩石を纏わせ、刃の部分を鋭くし、より大きな剣にし、振り下ろす。
ワームの頭が胴体から離れる。
胴体の方も頭の方も動かなくなる。
それに伴い、剣が急に重くなり、そのまま倒れてしまう。
「はぁ…」
ため息しか出なかった。
『お前を選んで大正解だったよ。あたしは。』
「はは、ありがとう。」
そのまま意識はどこかへ行った。
次回、虫アンド飼い主退治
ツイッター
@kisame_novelist
読者が増えてもツイッターのフォロワーは増えない。
一応ある程度増え次第、資料とか投稿しようと思ってます。
例)武器などのデザイン