任意同行
前回のあらすじ
俺の骨はレッツシェア出来るチョコのお菓子だった。
しんどい。
勝ったことはいい。
ただ今は折れた腕といい、極度の緊張からの解放のせいでしんどい。てか疲れた。
よっこらしょっと。転がってるナイフ回収しないとな。せっかくの商売道具を転生2日目でなくすとか恥ずかしいからな。
短剣と左に握ってたナイフを回収してアダンのいた跡に近づいたところで、厄介ごとが増えた。
「これは…ひどいな。」
振り返るとザ・騎士サマって感じのやつらが現れた。多分騒ぎを聞いて駆けつけたんだろう。
「フベルト!」
「!エヴじゃないか!大丈夫だったか?怪我は?」
あー彼女と知り合いなのね。通りで愛国心溢れてること。
「おい!貴様!両手を上げてそこを動くな!」
それで俺のとこには仕事に忠実そうな奴と。話が通じる相手じゃなさそうだな。あのフベルトってやつなら通じそうだけど。
「悪いが、右手だけで許してくれ。左はポッキリ折れてるんでね。」
そう言って右手を上げる。左は相変わらずだらしなく下がってる。見た感じ内出血してる。うん。痛い。これ上げろっ言われたら多分俺こいつのこと蹴る。
「っ!待ってくれ!フベルト、あいつはヨームを倒すのを手伝ってくれたやつだ。敵じゃない。」
「わかった。カスト!そいつは敵じゃない。武器を下ろせ。」
「はっ。」
そう言われてファミレスみたいな名前のやつは部下に剣を下ろすようにいう。その後にすぐアダンの跡を調べ始める。そこで俺のナイフが見つかり、ちょっと騒がれるがまたも彼女がフベルトに説明。ナイフはしっかり俺の元に戻ってきた。
これで証拠品とか言われて没収ートされたら泣いてたかも。短い付き合いだか、結構気に入ってるんでね。
カストとその部下が調べてるのを見てるとフベルトが声をかけてきた。
「はじめまして。私はフベルト ルミボール。この国の騎士団の騎士長の1人だ。急で悪いかも知れないが、事情を聞きたい。近くに我々の使ってる建物があるので、そこまできてくれるか?」
あー事情聴取ってやつね、しかも雰囲気からして俺は逃げられないと。そしてマニュアル通りなら鑑定されると。これは俺の交渉力が試されるぞー?
「俺は、イバラ リョウタロウ。事情を話すことに関しては同意するし、着いても行く。だが鑑定書だけは御免被る。いくら俺でもそうホイホイと自分の個人情報を人に見せる訳にもいかないのでね。」
フベルトは俺の言ったことに驚いた様子を見せたが、すぐに冷静な表情に戻り、少し考えた後、また俺に向き直る。
「いいだろう。用心深いんだな。」
「世の中怖いからねー。」
こいつ多分根はいいが食えない奴だな。そう思った俺だった。
「あと、鑑定スキル持ちの同伴も勿論なしだぜ?」
「ハハハ。これは一本取られたな。」
この反応からするに同伴させる気満々だったようだ。先手打って正解だったぜ。
「では。行こうか?」
俺は無言で頷き、フベルトについていった。
「ここで待っていてくれ。」
そう言われて、応接室に通された。そこはそこそこ狭い部屋にソファが2つ置いてある部屋だった。例えるなら、学校の相談室とかこんな感じ。まぁあんまりいい感じがしないということ。
ソファに座って待ってると、さっきの女の子とフベルトが入ってきた。
お前一緒にくんなし。トラブルの種だから。
そんな願い虚しく、彼女は俺の隣に座り、フベルトは俺の向かいに座った。
彼女はフベルトにアイコンタクトを取ってから、俺に話しかけてきた。
「腕を出せ。折れてるんだろ?いま魔法で治すから。」
あっ、先そっちなのね。ありがとう。俺の中で君の株が少し上がったぞ。
俺は左腕を出すと彼女は手をかざす。すると彼女の手が緑の光に包まれる。
「治療中ですまないが色々聞かせてもらうぞ。」
はいはい、わかってますよ。尋問ってやつでしょ。
「まずはあの怪物、ヨームを倒してくれたこと、感謝する。我々の到着の間野放しだったら被害はもっと広がっていただろう。礼をいう。」
そう言ってペコリと頭を下げる。
おっ中々いい奴じゃないか。素直に頭を下げられる人は大概いい奴だ。
「早速だが、君はあの怪物、ヨームのことを知っているか?」
「いや、今日が初対面だね。彼女の言ってた黒魔石ってものも今日知った。というか昨日初めてこの王都に来たのでね。最近のここらへんに付いても疎い。」
「なるほど。ということは旅をしている。ということだね?王都の外でも聞いたことはなかったと?」
「基本は街に立ち寄らないで来たからな。自分探しの旅に他人の干渉はあまり好ましくはないと思っているのでね。」
「では何故今回は王都に?」
「城門から少し離れたところでポール ファート アベラルトという人が魔物に襲われてるのを助けてね。そのお礼がしたいということで、彼の店まで行った。それからは たまには人の街で休むのもいいだろうということで子鹿亭に泊まった次第だ。彼女も泊まってた宿だ」
「わかった。あの怪物になる前の人とはどういう関係で?」
「どうやら彼女と一悶着あったらしいが、そのいざこざに巻き込まれただけだ。奴とは今日が初対面だったよ。」
「エヴ、一悶着。というと?」
「ああ、あいつらは当たり屋でな、私の指輪がとられたんだが、マントの男が彼らから盗み、私に返してくれたんだ。彼は、宿が一緒だっただけで、無関係なのは確かだ。」
「そうか、つまり君はただ巻き込まれただけだと?では何故ヨームと戦ったりしたんだ?」
「この愛国心溢れる女の子に手伝えと言われてしまってな。1人でやらせるのもアレだし、なんとなくだな。」
「む。ちゃんと名前で言ってくれ。」
そういうと治療が終わったのか、手を引く。
確かに俺の腕は元どおりだ。動かしても痛くない。内出血も綺麗に治ってる。
うん。魔法、便利。延刃より回復魔法のほうがよかったかな?
「そう言われても、まだ俺は名乗られてないんだが?」
「あっ、そういえばそうだな。悪かった。私はエヴリーヌ ビアトリス。最近冒険者になったものだ。」
「ほお。最近ねぇ。その割には王国の騎士長サマとお知り合いのようだが?」
「私とエヴは元々家が近かったのでな。幼馴染という奴だ。」
「そうか、てっきり恋人か何かだと思ったが。」
「ハハッ。俺には婚約者がいるのでな。」
「そうかい。ではこれであんたの疑問は粗方解決された筈だ。そろそろ俺の質問タイムといこうじゃないか。」
せっかくこういう機会を手に入れたんだ。色々聞きださせてもらおう。
ネタの繋ぎ方。
ですかねー。