人
前回のあらすじ
牢屋のけが人回収
さて、広間の衛兵は片付けた。
なんなら最後の一人をテーブルにぶっ飛ばしてテーブルへし折ったわ。
「さぁてぇ?次はぁ?お待ちかねのぉ?お前の番だなぁ?」
そう言って結構ふざけて体捻らせてマルコの方を向く。
奥の方で奥さんと子供はビクついてる
前の王子は唖然としてる。
大臣は逃げ出したいが、ショウの瓦礫で逃げれないからあたふた。
「涼太郎、ふざけすぎだよ。」
すっかり治療を終えたクウさんは座ってゆっくりしてる。
「いや、やってみたかったんだって。」
「チッ、どいつもこいつも…」
話に聞いたが、若い時は割と剣振ってたらしい。
今は太ってるが、衛兵から剣を取り、構えた。
「さっきの見てもまだ歯向かう?」
「貴様らごときに国を取られてたまるか!」
「その心構えは正しいけど…生き方間違えたな。」
かなり手加減して斬り合う。
と言ってもマルコは防ぐので精一杯だが。
「はぁ、いい加減諦めたら?勝ち目ないって。外じゃ仲間が衛兵片っ端から片付けてるし。今謝ったらまだ許してやらないこともないよ?」
正直今滅茶滅茶腹立ってる。
ただ、最後の情けだ。
エヴも見てるし、あんまりあいつの前で酷いもの見せるのもアレだからまだ耐えてる段階だ。
人の目がなかったらこいつの体の水分をゆっくり凍らせて殺してる。
「大人でしょ?毒盛ってすいませんでした。前の王様も殺してすいませんでしたって頭下げて謝ろうよ。実際、あそこの子供二人はひっそりと孤児院とかにお金寄付してたらしいし?」
これも昨晩の情報。
親がアレだから子供もダメかと思ったらそうでもなかった。
「うるさい!私は地の底から這い上がってここまで来たんだ!今更この地位を捨てられるか!前の王もそうだ!誰のおかげでまともに政治が出来たと思ってる!大体貴族と平民の差を少なくしようだぁ?ふざけるのも大概にしろ!民は我々に安全を保障して貰ってる側だ!その対価をもらって何が悪い!いくら貧しかろうとバケモノのいる森の中に住むよりマシだろう!」
はぁ…
ほんとどこの世界にもいるもんだな。
救いようのないバカってのは。
「そうかい。正直エヴ達の前であんまり酷いもの見せるのもどうかと思って抑えてたが、反省しないなら、しょうがないな。」
長刀から短刀の方に持ち帰る。
なぜ?
そんなの決まってる。
「楽に死ねると思うなよ?」
少しずつだ。
少しずつ体を傷つけていく。
塵も積もれば何とやら。
みるみるうちに野郎の体が血に染まる。
ある程度のところでひと蹴りして吹っ飛ばす。
「いいか?俺にそんな権利ないが、今からテメェの罪を裁く。全部で三つだ。」
そう言って半獣化する。
「一つ。王の立場にありながら民を贄にしたこと。」
特大のツララを左足に突き刺す。
左足に風穴が開く。
「一つ。反省の機会を投げ、王というものを愚弄したこと。」
右足の水分を凍らせ、弾けさせる。
右足が半分になる。
「最後に、俺の女に毒盛ろうとした罪だ!」
と、頭に氷塊を落とそうとした時だ。
「待っ、待ってくれ!」
「涼太郎あんなこと言うんだ…」
後ろで驚いてるクウさんは置いといて、やっと反省したらしい。
「頼む…命だけは…命だけは…助けてくれ…なんでもやる。なんでもやる。だから…助けてくれ…」
すると、後ろでクウさんが「あーあ、禁句なのに…」
と言った。
どうやらクウさんもこいつの致命的なミスに気づいたらしい。
「なんでも?なんでもと言ったな?」
一応聞き返す。
マルコの顔にやや安堵の表情が浮かぶ
「そ、そうだ…“なんでも”やる…だから…」
「だったら、テメェの命だ。」
「へ?」
「なんでもくれるんだろ?ならテメェの命をよこせ。」
「そ、それは…」
またしても顔に恐怖が浮かぶ。
「自分から言ったんだ…文句、ねえよなぁ?」
そして改めて頭を潰そうとした時。
「リョウタロウ!」
後ろからエヴに呼ばれた。
とりあえず手を止める。
「なんだ?今取り込み中なんだが?」
「いくらなんでもやり過ぎだ。もういいだろう。」
「はぁ…甘いな。お前はそれだから王女としてちと足りない。」
「え?」
「いいか?世の中にはな、どうやって更生させようとしてもどうにもならない奴がいるんだ。」
「だが、もうこんなにやったんだ。流石に…」
仕方なく半獣化を解く。
「はあ、お前は優しい奴だよ。だからアリスターの民からも慕われるし、友人も多い。だがな、世の中お前みたいな奴ばっかじゃないんだよ。俺はな、世の中で一番美しい生き物は人だと思ってる。だがな、それは同時に、世の中で一番汚れた生き物も人ってことなんだよ。」
「それは…どう言う…」
「光があるってことはどこかに必ず影がある。人には美しく、綺麗な面もある。だが、それと同じだけ汚れた面もあるってことだ。コイン一つとったってそうだ。表があれば裏がある。世の中みんな仲良くなんてできないんだよ。クウさん達のとこがイレギュラーなだけだ。アリスターだってそうさ。スラム街、犯罪、いくら消そうとしても無理だろ?フベルト達がいくら頑張っても無くならない。」
「だが、いつかは全員が幸せに暮らせる国に…」
「だから無理なんだよ。そんな世界は一生来ない。この先永遠にな。あったとしてもそれは続かない。この際だから教えておくけど、俺やショウ、ミナトやクウさんの故郷はなここよりもっと汚れてた。戦争、内戦、紛争、麻薬、人身売買、人種差別、虐殺、テロ、あげてったらきりがない。ここの方がまだマシさ。だからおやっさんはよくやってると思うよ。たった一人で何万もの命背負って国統治してんだから。誰しも夢見るさ。誰も苦しまない理想郷ってやつをさ。それを目指すのも、それを夢見るのもとってもステキなことだ。だがな、世の中そう上手くいかないようになってるんだよ。少なくとも俺たちのところは数千年かけて目指しても無理だった。どこかで楽をすれば、どこかで苦が生まれる。それが調和ってやつさ。」
そうやってエヴの肩を掴み、話している最中に、俺は後ろに向かって氷の槍を出す。
「こう言う風にな。」
その槍には剣を構えたマルコが刺さっていた。
エヴは驚いて尻餅をつく。
「どうあがいてもこう言う奴が出てくる。」
マルコはそのまま絶命した。
「罪は罪だ。俺もいつか裁かれる日が来る。その覚悟を持って人を殺してるんだ。」
膝をつき、エヴの手を取る。
「ただ、その時にさ、ちょっと応援してくれよな?俺だってキツイもんはキツイしさ。」
そう言って立ち上がり、短刀を収める。
「さて、じゃあ王子くん?これからは君が王様だ。これからどうするか、君次第だ。んじゃ、気をとりなおして話し合い、しようか。」
次回、お土産は、宝ではなく?