緑じゃない狸&外伝 ロボルとベアード
胃腸炎で寝込んでましたすいません。
フォロワー一人増えました。
あざっす。
前回のあらすじ
記者は策士
湊人が由美華さんのところでお泊りしてからというもの、結構な頻度で羽宮さん姉妹がくる。
あれから一週間経ったけど、相変わらず来ている。
仕事はしっかりこなしてからくるあたり、湊人もなにも言えず、追い返せない。
ちなみに僕も相変わらず助け船を出さない。
なぜ?
未だに僕の方が苦労してるからね。
主に夜…
そんなある日、いつもは尋ねるのに向こうから来た雑貨屋さんの茶子さんが来た。
そして今、稲美さんたちと井戸端会議している。
と言っても居間でお茶飲みながらお話してるだけだけど。
縁側でルナを撫でながら話に耳を傾ける。
なんでも店の場所を移すらしい。
しかもよくよく聞けばこの神社のある山のふもと。
近くに置くらしい。
そしてさらに、茶子さんはここに住むらしい。
そういえば建築当初から、部屋が一個多いような気がしてたけど、このためだったのかな。
するとそんなところに湊人が羽宮姉妹を携えて来た。
「だから!式とか当分先だから!まだ十七歳だから!若いから!」
「いいじゃないですかー。それに、ここの法律上は年齢関係ないんですよ。」
「知るか!てか年齢関係なしとか問題あるだろ!改定しろ!」
「関係ないと言っても十歳以上という限度があるんだぞ?十分では?」
「男は十八!女は十六からだ!異論は認めん!」
「湊人、ここに向こうの基準を持ち込むのは無理があるよ?」
思わずツッコミを入れてしまった。
すると湊人も茶子さんに気づいたようで、「げっ…」という顔をした。
茶子さんも湊人に気づいた。
「あら、これはこれはご無沙汰してます。」
関西の方言のような訛りと聞いていたが、たしかに語尾が上がる。
「えっと、何用ですかね。」
すると織さんが答える。
「茶子は、今度からここに住むことになってまして、店もこの山の麓に移すので、その挨拶に。」
「よろしゅう。」
「げっ…マジか…」
「そう嫌がらんで欲しいわぁ。傷つくわぁ〜。」
そう言って湊人に擦り寄る。
すると文華さんがそれに反応する。
「む!人の男に手を出すのはご法度ですよ!」
「いや、お前ももとはそうだったじゃん。」
「ふぅ〜ん?すでに二人先客がおったんやねぇ。でも、湊人はんなら三人いても平気やない?それに、お二人さんにも色々特典がつくけど?」
「「特典?」」
「それはぁ、ゴニョゴニョ…」
茶子さんになにかを耳打ちされた二人はあっさり掌を返した。
「湊人さん!三人、宜しくおねがいしまーす!」
「ま、まぁ、私が一番なら…構わない…。」
「おいコラ、なに吹き込んだテメェ。大体会った時から感じてた嫌な感じはこれか。大して好きでもないくせにどういう魂胆だ、おい。」
「ちゃーんと好きやで?顔も好みやし、苦労してそうやし、色々隠してそうやし、お姉さん、そういうイジメがいがある子はだ〜い好きやで?(ニコッ」
狸って某カップ麺のアレもあって緑のイメージあるけど、茶子さんは黒だね。お腹のあたりが。
湊人も面白いひとに目をつけられたなぁ〜そう思いながらその風景を眺める。
「空成、タスケテ。」
「さ、妖術の練習しなきゃ。」
「ウラギリモノメ。」
「どっちが先に裏切ったのかな?」
「グフッ…」
ある日、リョウタロウ宅の庭にて。
「ワン!(もう少しシャキッと出来ませんか?)」
「クゥーン(だって…怖いし…)」
今日も私は己の特訓も兼ねて、ベアードさんの教育をしています。
というのも、ベアードさんは母親と比べ、臆病すぎるのです。
特性で物理、魔法、どちらにもかなりの耐性を持っており、生半可な攻撃では傷一つ付かないから大丈夫なのですが、当の本人が臆病すぎて、いつも攻撃を仕掛けられると、丸まって動かなくなってしまいます。
どうにかならないか主人とショウ様の頭を悩ませていました。
彼女がしっかりすれば、私や主人達が奥様方のそばを離れても奥様方の安全が確保されるので、彼女には少しは戦えるようになっていただきたいのですが、あまりにも臆病で、とても戦闘出来ません。
その上泣き虫ですぐにショウ様にすり寄っています。
このままでは単なる肉壁です。
「お疲れ様。少し休んでいいよ。」
主人からお休みの許可を頂き、少し休みます。
「やっぱ難しいかぁ。」
「ワン。(はい。性能は良いのですが、やはり臆病で…)」
「これだけやっても無理ならほんとに無理だな。」
「ワン。(しかし、なんとかしなければ。)」
「いや、本人(熊)に無理させるのも酷だ。教育っていうのは、伸ばすもので削るものであってはならないからね。」
「ワフ?(と、言いますと?)」
「ベアードの個性を型にはめるために削るんじゃなくてベアードの個性にはまるように型を変えるんだ。教育ってそういうものさ。」
「ワン。(よくわかっていらっしゃるのですね。)」
「まあ、俺も教育を受けた時代があったからさ。その時にね。自分を曲げるのは、ほんとに辛いから。」
そう言って、小さな氷を作って口へ放り込む主人。
ショウ様はベアードをあやしている。
「しっかし、どうする?、リョウ。これ以上は見込めないし。」
「そうだなぁ、いっそ前線じゃなくて後方向きにしてみるか。けが人の搬送とか。物資の運搬とか。」
「成る程。言わば牛車とかそういう?」
「そうだね。ま、本人が嫌といったらそこまでだけどさ。無理させるわけにゃいかんし。」
「姐さんが少しくらい無理させる方が良いって言ってる。」
「スパルタだなぁ。出来れば生前にその方向で子育てして欲しかったぜ。」
主人達は笑いながら話を続ける。
するとベアードさんが話しかけてきた。
「ガウ。(ねえねえ、なんでロボルはそんなに強いの?)」
「ワン。(私は母上から主人に付き添うよう幼いときに言われましたから。それに、主人はショウ様が来るまでかなり無理をされていますし。奥様方もおられるので、ある程度は大丈夫ですが、ああ見えて寂しがりですし。それに、私は主人が大好きですから。)」
「ガウ。(でも、怖くはないの?)」
「ワン。(怖い時もあります。ですが、それが主従というもの。それに、主人達は優しいので、戦闘において私たちに絶対に無理を強いません。その優しさに報いるため、そして大好きな主人を守る為にも、私たちが頑張らねばなりません。)」
「ガウゥ…(そっかぁ…)」
そんな話をしていると、主人に呼ばれた。
「ロボル、ベアードにルイシーナから習った巨大化の魔法教えてやって。なにかと便利だから、アレ。」
「呼んだか!?」
「いや、呼んでないし、くっつくな!離れろ!おい!」
「ワン!(分かりました!さ、では早速巨大化の魔法を覚えてもらいます。」
「ガウ?(巨大化?)」
「ワン。(はい。もとはドラゴンが人型とドラゴンの姿をする時のスイッチの応用で、魔力で自分の姿を数倍に大きくする魔法です。イメージは魔力で自分と同じ姿形の人形を作り、その中に入る感じです。)」
「ガウゥ。(出来るかなぁ。)」
「ワン。(素質はあるので大丈夫です。やってみましょう。出来たらきっとショウ様もいっぱい褒めてくださいますよ。)」
「ガウ。(わかった。やってみる!)」
次回、それぞれの成長。そして…?