講師 玉さん&カラちゃん
前回のあらすじ
狐と狸は仲が悪いとは限らない
気付くと玉さんの部屋(前は僕の部屋)にいた。
最近は稲美さん達の猛攻でここにこれる程余裕がなかった。
正に倒れるように寝ていたからだ。
「あ!ようやく来られましたね!」
「す、すいません…」
「いえ、仕方ないです。むしろ私としては有り難いですし。」
「え?」
夢の中なので実際に飲む訳ではないが、玉さんがお茶を用意しつつ話を進める。
「ずーっと一人だった稲美にようやく婿が来たと思うと…うぅ…(泣」
「具体的にどれくらい一人だったんです?」
「そうですねー。少なくとも五百年は一人かと。」
しまった。稲美さんの年齢の真実に一歩近づいてしまった。
「しかし、稲美だけでは飽き足らず龍や毛娼妓にも手を出すとは…お世継ぎには困りそうにないですね。」
「そ、それは置いといて!あの時のアレってなんなんですか?」
アレとは雑草処理の時の僕に耳やら尻尾が生えた時のことだ。
「ふふふ、ついに話す時が来ましたね。名付けて『半獣化』について!」
「名付けてって名前つい最近までついてなかったんですね。」
「細かいことを気にする殿方は女子に好かれませんよ?」
「これ以上は困ります。」
初対面に比べてすっかり打ち解けた僕らだが、たまに夢の中で色仕掛けしてくるのはやめてほしい。
なんでも玉さんは独り身で終わったからだそうだ。
だからと言って欲求の発散に僕を使うのはやめてほしい。
「では、改めて。説明しましょう!半獣化とは!」
玉さんの話の半獣化とは、
出来る人は限られており、出来る条件はいくつかある。
一つは魔力などを装甲として動物の一部を模して体に纏うやり方。
これはまあコスプレの様なもので、とくに恩恵がある訳でもない。
装甲に割く魔力がかなり多ければ、例えば犬の鼻を纏ったら嗅覚が鋭くなったりするが、その程度。
一つはもともと持つ守護霊のような存在の力を用いるやり方。
これはまた別の系統の魔術で死霊術とも言われる。
その上その守護霊などが動物霊でなければならなかったり、条件が厳しい。
などなど玉さん曰く多くある内でも僕や湊人のタイプはほぼ無いに等しいくらい稀なタイプ。
玉さんやカラちゃんなどの超高位の動物やモンスターと魂を繋ぎ合わせた人が出来るタイプ。
これはつなぎ合わせる前の動物などの能力をほぼ受け継ぐことができ、最終的にはその動物などそのものにもなれるらしい。
ただし、条件として、力を使いこなせて、合わせた魂の混ざり具合も関係してくる。
実はまだ完全に一体になった訳では無く、日々徐々に混ざって行くらしい。
このタイプは最終的に相手の動物を超える力を本体が持つこともあるという。
「じゃあいつかは僕が玉さんを超えて、玉さんは居なくなっちゃうの?」
「いいえ!ずっと一緒ですよ。あなたが忘れない限り。」
「忘れない限り?」
「私たちは魂で繋がっています。しかし、あくまで私の魂と空ちゃん(そらちゃん)の魂では優先度が空ちゃんの方が上なので、空ちゃんの魂が頭では覚えていても、本質的に忘れてしまっては私の存在がどんどん薄れていくんです。例えば、赤ん坊の時の体験は頭には残っているはずですが、思い出すことが出来ないみたいな感じですね。」
「なるほど…それより、空ちゃんってなんです?」
「いま思い付いた呼び方ですよぅ。せっかくですし私も何か愛称で呼びたいので。」
「はぁ…」
そして、半獣化についてはまだあった。
“半”というのだから先がある。
いわゆるスーパーサ〇〇人みたいなものだ。
完全になれば尻尾も九本になるだろうし、服にも影響が出るらしい。
湊人曰く僕の目がつり上がったとも言っていた。
体にも何かしらの変化がある。
その上先に進めばさらに力を扱えるようになる。
玉さんが例をあげたのは分身や幻術などなど様々だ。
「さて、これで半獣化については殆どお分かりいただけたかと。」
「うん。でも、なんであの時、発動したの?」
「それは空ちゃんが心の底から、魂で力を欲したからです。あの時、あの木の男を止めたいという思いに私の力が応えたのです。」
「僕の…思い…」
「まあ、体が耐えられなければ爆発四散しますけどね。」
「怖い!使いたく無くなるくらい怖い!」
ん?まてよ。つまりは湊人も出来るんだよね。半獣化。
湊人の中のカラちゃんはヤタガラスだから…
デーン!(足が三本の湊人)
いや、考えないでおこう。うん。ちょっと気持ち悪かったし。
次の日の夜。
「なあ!カラちゃん。半獣化について俺も教えて欲し」
ゴチーン!(カラちゃんズダイナミックヘッドバッド)
「…はい。しっかり分かりました。でもね、空成のとこの玉さんくらいしっかり声に出して教えてくれても良いんだよ?」
するとカラちゃんは少しもじもじしながら倒れた俺を見下ろして言った。
「は、恥ずかちいし…まだ言葉覚えきれてないち…」
…まずそれを先にヘッドバッドで伝えるべきでは?
あと結構可愛いとこあるな。この子…って痛い!痛い!痛い!踏まないで!
次回、改装箇所、追加。