一件落着?
前回のあらすじ
引っこ抜けない雑草は焼却だ!
目がさめると屋内ではなかった。
お辰さんが回復してくれたらしく未だに外である。
「湊人、大丈夫?」
「頭がガンガンする。キツめのジェットコースターを何回も乗った気分。」
「僕も同じ感じ。フラフラする…」
(俺よりも空成の方が重症だな…)
目の焦点が合っていない。
とりあえず、稲美さんへの報告のため村に戻ることにする。
空成に肩を貸し、お辰さんと一緒に小屋までもどる。
お辰さんを小屋に残し、俺たちは村へ戻った。
稲美さんに治療してもらった。空成も持ち直した。
村の人へある程度の事情を説明した。
ほぼ全員が驚いていた様子だった。
今後は小屋も立て直し、お辰さんへの態度も改めるみたいだ。
これで元どおり。とはいかないかもしれないが、村人とお辰さんとのわだかまりは無くなっていくだろう。
幸い、生贄を出す前だったので戻るときに子供を探さなくていい。
俺たちは神社へ戻った。
ちなみに、村にいる間の稲美さんは尻尾と耳を隠していたらしいが、久しぶりの外出にやたらとウキウキしていた。
そして今、夕方になり、神社で由美華への報告前に俺、空成、稲美さん、お辰さんの四人でお茶を…
ん?
「ちょっとまって!なんでお辰さんが!?」
「なんじゃ、いたら悪いのか?」
「だって…小屋…」
「そそ、そうですよ!村の人たちもこれからお辰さんへいろいろとしなきゃって意気込んでたのに!」
すると、お辰さんは湯呑みを置き、姿勢を正した。
「空成…と言ったな?」
「は、はい…」
するとビシィ!っと音が出そうなくらいに指を指し、一言。
「お主を妾の夫にする!」
「ウェ!?」
「ちょ、お辰さん!空成は稲美さんと言う新妻が居てですね!」
「に、新妻って表現やめて!なんか恥ずかしい!」
しかし、お辰さんは止まらない。
「ふむ、二番目でも良かろう?あれだけの力と度胸があるのだ。妻が二人くらいいないと世間への示しがつかん。」
「示さなくて結構です!」
なんだろう、これどうあがいても無理な気がして来た。
と、お辰さんが稲美さんへ話をふる。
「お主も構わないだろう?」
「まあ、賑やかなのは良いことですし。それに、新妻…一番…エヘヘ…」
「稲美さん!?」
「まさかの賛成派だとは…」
すると、お辰さんが唐突に空成に擦り寄る。
「傷ついてもなお立ち上がるあの姿…逞しかったぞ。あれこそ男というものよ。妾も満足できる。」
「お辰さんが満足するのと僕が満足するのとでは訳が違いますぅ!」
「ところで、小屋の方はどうするんですか?」
俺は完全に諦め、お辰さんがここに来た後の話をする。
「まあ、御神体でも置いて適当に祀るじゃろう。いなくてもなんともない。あそこの水も、別にわしの力で綺麗にしていたわけではないからな。」
「うぅ…湊人も諦めちゃったよぅ…」
「頑張れ。お前なら出来る。…多分…」
神社がまた少し賑やかになった。
「では、ここも増築しなければなりませんね。」
と、稲美さんが話題を変えて来た。
「でも、街の大工さんは呼べないですよね?」
「こういう時の妖術です。」
と、自信ありげに大きな胸を張って万能能力の妖術を引き合いに出した。
俺は本部へ戻り、報告を済ませた。
「なので、今後は子供が流れ着くこともないだろうさ。」
「それは良かったが、大丈夫だったか?なかなかの怪我をしたのだろう?」
由美華が心配そうに見つめてくる。
服や体は妖術で直してもらったが、実際めっちゃ痛かった。
「平気平気。もう治してもらったし。」
「しかしだな…」
「俺の彼女やるなら、これくらいで気に病んでたら、体が持たないぞー。」
「そういっても、心配だし…なにより、好きな男が辛い目に合うのは…誰でも心が痛むものだろう…」
「まあ、次からは気をつけるよ。」
「そうしてくれ…」
その日はもう夜になっていたので、雀庵に帰った。
一方その頃神社にて。
「なあ、時に空成よ。これから風呂に入るのだろう?」
「え?はい。そうですね。」
「妾が其方の背中を流してやろう。ささ、早う脱げい。」
そういってお辰さんは僕の服を脱がしにかかる。
「ちょ!待ってくださいよ!一人で入ります!入らせてください!」
「そう恥ずかしがらんでも良い。同じ布団で寝る仲ではないか。」
「まだ寝てません!稲美さん!助けてください!」
「私もご一緒に…」
「助けて!湊人!翔!涼太郎!」
「ハックション!」
急にくしゃみが出て自分でも驚いた。
「風邪ですか?」
蓮子さんが食器を下げながら心配そうに聞いてくる。
「そんなことはないと思うんですけどね。」
きっと空成が助けを求めてるに違いない。
まあ、頑張れー。
「「ハックション!!」」
「珍しいですね。リョウタロウさんとショウさんがくしゃみなんて。」
それもそうだ。ウベルがいるから寒いのには耐性があるはずだ。
「きっと寒いんですね。今晩はいっぱいギュッとしてあげますからね!」
今晩一緒に寝るディアナに言われて背筋が凍る。
これは俺の能力ではないあたり恐ろしい。
「あはは。頑張れー。」
ショウがニヤけた面で手を振っている。
するとその手をしっかりとキーラさんが握る。
「大事な旦那様に風邪を引かれては困りますからね。私たちもしっかり温め合いましょう。」
「あはは。頑張るー。(棒)」
その顔は笑っていなかった。
次回、久々の、二人揃っての、パトロール。