湊人、お前もか。
前回のあらすじ
脱ボッチ
とりあえず試し撃ちのために森に来たのは良いが、こういう時に限ってモンスターに出くわさない。
全く、チキってんじゃねえよ!
やむなく本部へ戻り、練習場へ。
ヤタは雀庵に置いてきた。
そういえばあれ以来神社行ってないな。
と、いうことで神社に来てみると、相変わらず練習している空成の姿。
「ちーっす。」
「あ、湊人、来たんだ。」
「悪いか?」
「全然。お茶入れるね。」
なんだか、前と少し違う気がする。
少し観察していると、稲美さんとの距離が近いことに気がついた。
「なあ、空成さんよ。」
「ん?」
俺は空成の肩に手を乗せる。
「成長したな。」
「!…もうわかったの?」
「逆に聞くが、俺の目を誤魔化せると?」
「えっと…」
「ま、予想はしてたけどねー。」
「え!?」
空成と稲美さんの仲が発展するのは状況的にすぐわかる。
稲美さんの目が獲物を見る目だったしね。
「そんなに変わってましたか?」
恥ずかしそうに稲美さんが聞いてくる。
「えぇ。目線がほぼほぼ空成の方をですね…」
「あ、あはは…(そうだったんだ…」
それからは稲美さんに空成の昔話を聞かせて空成に少し恥をかかせて本部へ戻った。
「はぁー結局試し撃ち出来てないなぁ〜。」
仕方なく練習場で撃つ。
あまり人の目のあるところでは撃ちたくはなかったが、コラテラルダメージということにしておこう。
弦が魔力なので切れる心配がないのは良い。
張りなおしがすぐに出来るのも良い。
何発か撃って満足する。
少し癖のある感じだが、すぐに慣れるだろう。
帰ろうとすると、由美華さんに呼び止められ、由美華さんの部屋に連れてこられた。
「なんか悪いことでもしましたかねぇ?」
「いや…そういうわけではないんだがな…」
「早く帰りたいんですから、ちゃっちゃと済まして下さいよ?」
「つくづく上司への態度がおかしいな…」
「で?なんです?」
「その…だな…言いづらいんだが…その…お、お前のことがだな…えっと…その…」
俺は昔、心理学に興味があり、それ関係の本をいくつか読んだことがある。あの時は涼さんも一緒だったなぁ〜…じゃなくて、態度、目線、その他諸々を考慮した結果、由美華さんは俺に好意を抱いていると思われる。
いや、何、心理学の本だけじゃなく古畑〇〇郎も全話しっかり見たからちょいと他の人より洞察力があるのさ。
だが、そうとわかったらやることは一つ…
イジってやろうじゃないか!
「あ!まさか俺が好きとか言わないでしょうね!」
「!」
「いや〜、由美華さんに限ってそれはないでしょうね〜。俺としても敷居が高くて高くて、とてもじゃないけど無理ですよぉ〜。だいたい、収入も由美華さんの方が上ですしね! それで? 要件はなんです?」
我ながら性格が悪いと思った瞬間だった。
由美華さんも少し泣きそうだ。
「はぁー冗談ですよ。態度でバレバレです。」
「え?」
「俺みたいな男を選ぶなんて物好きっすねー」
「だって…初めてだったから…」
「はい?」
「私より弓の腕が良い人、初めてだったし…戦ってる時も…その…カッコよかったし…」
「弓の腕で決めたんですか?」
「ち、違う!それは断じて違う!」
「はいはいわかってますよ。良いですよ。お付き合いしても。」
「ほ、本当か!?」
「ただし!条件が一つ。」
「ゴクリッ…」
「ちゃーんと養って下さいね?先輩?」
「…ムードというものをもう少しだなぁ…こっちは心臓がおかしくなりそうだというのに…」
「じゃあ養うんで給料あげて下さい。」
「ふふ…そうだった。お前はそういう奴だったな。そして、そこに惚れてしまったんだな。」
「え?なんですか?急に、ちょっと怖いんですけど。」
「これから湊人は私の婿なんだからな!浮気は…相手によるが、無いようにしろよ!」
「相手次第って…」
これに伴い、由美華さんのことを呼び捨てにするように言われ、今後は由美華で通すことになった。
しかし、驚いたのは俺を家に連れ帰ろうとしたところだ。
流石にまだ早いと制止したが、危うく両親に紹介されるところだった。
どうやらこの世界の婚約とかの順序はどこかぶっ飛んでるらしい。
この調子なら涼さんや翔もすぐに女を侍らせていることだろう。
再会したら冷やかしてやる。
次回、つむじ風?いえ、台風です。