その頃 1
この前のあらすじ
ショウ、クマになる。
家に帰ってきて数日が経った。
ベアードとの距離もすぐに縮まり、すぐに馴染んだ。
特にオレールは遊び相手が増えて嬉しそうだ。
だが、意外なことがあり、ベアードは熊の割にとても臆病で、なんだかんだで俺にくっついている。
最近はロボルと色々と話していて、ロボルはベアードの実践投入を目指しているらしく、暇な時は教官になってベアードを鍛えようとしている。
無理はさせるなと言ったが、リョウ経由で曰く、素質がいいため、せめて家の番くらいは出来るようにしたいとのこと。
だが、だいたい俺に泣きついてくる。
抱っこしてやるのだが、いかんせん重い。
これからもっと育つと考えたら少し怖い。
そのうち俺が抱っこされるようになるかも…
そんなことを考えながら朝ごはんを食べていると、リョウが部屋から降りてきた。
昨日は確かカミラに絞られたはず…
普段はおとなしいが、夜は凄いらしい。
まだキーラだけでホッとしている。
「大丈夫か?」
「…夜逃げでもしようかな。」
そう言った瞬間、目にも留まらぬ速さでエヴ達がリョウの各所にしがみつく。
「動けないんだけど?」
「じゃないと逃げちゃうじゃないですか。」
と、カミラが右足にしがみつきながら言う。
コリンナに至っては肩車状態で頭にしがみついている。
「というか、リョウタロウさんの態度、最近ちょっと冷たいです。」
「冷たいだけまだマシだぞ?」
「と、言うと?」
するとリョウに狼の耳と尻尾が生える。
さらにとなりに座っているからわかるが、周囲の温度が下がり始めた。
リョウタロウのスープが徐々に凍りついてきた。
しがみついているみんなもガタガタ震えだした。
「これからは冷たい通り越して凍えるからな。」
しばらくみんな粘ったようだが、限界がきたらしく、みんな離れて固まって温めあっている。
リョウも半獣化形態を解く。
「はぁ…コルネリア、鍋で溶かしてくれる?」
「あはは。わかりましたよ。」
リョウは凍ったスープを一度片付けてもらい、パンをかじる。
「実家のある奴は帰ってほしいんだけどなぁ。」
「そう言うなって。向こうじゃ女に縁がなかったんだから、幸せな方だろ?」
「縁があっても運がなけりゃ意味がねぇ。」
「納得。あ、今日も森で修行?」
「うん。そこそこ慣れてはきたけど、まだまだだからな。お前と違って燃費も悪いし。」
リョウの半獣化形態の制限時間は俺の約半分程だ。
俺もそんなに持つわけではないので、俺たちはまだまだ未熟者というわけだ。
その上リョウの方は俺よりもリスクが高い。
理由としては、リョウの半獣化形態は魔力を大きく減らす。
つまり、魔力が切れてしまうと、しばらくリョウ自身がまともに戦闘出来なくなる。
よってリョウに関しては本当の本当に切り札というわけだ。
俺の方は姐さんの助言もあり、そこそこ実戦での使用も出来るようにはなってきた。
リョウの方はまだストップがかかっているらしい。
「ところで、ウベルから聞いたが、他にも神獣は何体かいるらしいな。」
「あー、えっと狼、熊は俺たちで、あとは烏と狐、鹿と亀と…なんだっけ?」
「龍と蛇。合計八体だな。蛇って獣に入れていいのか?」
「昔の日本でも蛇は神さまの使いになってたりしなかったか?八岐大蛇も神話に出てきた奴じゃない?」
「爬虫類だろ?あ、それで言ったら亀も哺乳類じゃねえな。」
「龍に至っては卵生か胎生かわからないしね。」
「共通点とかあるのかね。」
「さあ?姐さん曰く種族の中で特に強い力を持つものが神獣化するらしいし、下手したらこれから増えるんじゃない?」
「なるほどね。」
補足だが、神獣とは俺たちが勝手につけた呼び名で、特異種とかだと語呂が悪いのでこうなった。
姐さん達も嬉しそうだったのでこう呼ぶことにした。
「なあ、ミナト達、どうしてると思う?」
リョウが急にミナト達の話題を出してきて少し驚いた。
「うーん…遺品整理とかで忙しくしてるんじゃない?本人達には悪いけど…」
「案外もうこっちに来てたり?」
「そうかな…来れるかどうかわからないじゃん。」
「ショウが来た理由は俺がお願いごとしたからだろ?その内容は『もう一度ショウ達と会いたい』だからミナト達も含まれるんじゃない?」
「そこに関してはなんとも…」
「ま、俺はもし俺をこっちに寄越した神さまに会ったら殺すね。ドラゴンの腹の中での宣言通り。」
「あー『神さまだって殺してやる!』ってやつ?神さま相手に喧嘩売るってどうなの?」
「あいつは許さねえ。コーラ一つで人の命を奪った奴はな…でも、そう考えたらもう死んでるのか?」
「いや、俺の担当の神さま曰く、まだ死んでないらしい。」
「上層部クソだな! 普通死刑だろう。」
「死なずに済んだってことは、罰だけで済んだってことだよね。」
「…もしかして上層部も昔同じミスを?」
「…ありそう…」
「なんだろう。毎年初詣を真面目にやってきた自分がアホらしい。」
「…神社に対する印象ガタ落ちだね。」
「ガウ(主達は何を話してるんですか?」
「ワンワン(あれは単なる昔話です。時が来ればベアードにも色々教えてあげます。さ、ご飯を食べたら特訓です!せめてこの家を守れるようにはなってもらいますよ!」
「ガウゥ…(やだよぉ〜怖いよぉ〜」
「ワン!(熊がそんなに臆病で、どうしますか!親が見たら泣きますよ!」
何やらロボル達が楽しそうに会話している。
[いや、しかしまさか我が娘があんなに臆病だとは…たしかに涙が…というか、甘やかしすぎたか?]
姐さん、親バカだったのか…
そんなこんなで俺たちの平穏な日々は今日も続く。
次回、大人の階段のーぼる〜♪