新しい武器、新しい暮らし
前回のあらすじ
ロリっ子は年寄り。
本部には天狗屋専属の鍛治師がいる。
それが金谷さんという方で、何代も続いている生粋の鍛治師。
天狗屋の武器は全て彼が制作、調整を行なっている。
「こんちわー。」
「お、来たか、坊主。」
印象としては、気前のいいおやっさんって感じ。
「さっそくだけど、これが素材ね。」
そう言って羽を渡す。
肩に乗っているヤタがそれを見てちょっと騒ぐ。
「これが噂のね〜。いやはや鍛治師冥利につきるなぁ!それで?どんなのにする?武器か?防具か?」
「んー…弓に出来る?こういう感じのデザインで。」
そう言って近くにあった紙に何となくのデザインを書く。
二枚の羽をお互いに付け根の方でくっつけるような感じだ。
「なるほどな。悪くない考えだ。それに、これほど上級の素材なら色々特典が付くだろうしな。」
「特典?」
「そうだなぁ〜まず、弦はいらないな。」
「何で?」
「弓の両端から魔力だったかで弦を張るんだ。切れたり歪む心配がないし、切れたとしてもすぐに貼り直せる。」
「へー。てか、魔力のこと知ってるんだね。」
この街育ちなら魔力を知る人はそう多くないはずだ。
「修行の時にな。それに、あの大烏様の羽だろう?他にも色々出来るだろうさ。それでだな、ここからは提案なんだが。」
「ん?」
「この外側の部分を研いで近接用にもするのはどうだ?」
「凄いいいと思うけど、ちょっと剣としては振り辛いかな。」
「そこは心配いらない。こいつを使えばな。」
そう言って金谷さんは箱から何やらジョイントのようなものを二つ出した。
「この二つの金具はな、魔力で切り替えができるんだ。」
「というと?」
「今は分裂しているが、くっつけた状態で魔力を流すと…」
すると二つの接合部はピッタリくっついた。
「このようにがっちりくっついてそう簡単には取れなくなる。そしてもう一回魔力で操作すると、取れる。」
「つまりこれを羽の接合部に使うと?」
「その通りだ。」
「なるほどね…じゃあそれを頼むよ。」
「あいよ!二、三日かかるから、それまで待ってくれよな!」
と、言うことで取り敢えず外に出る。
相変わらずヤタは肩の上から動かない。
取り敢えず、神社に行って空成の様子でも見よう。
神社では空成が特訓していた。
そして、ひと段落ついたところで、空成の移住の話を持ちかける。
「ここに…ですか?」
「はい。祟りの件も解決したので、力の特訓に集中するためにも、こいつをここに住まわせる方がいいと思って。無理にとは言いませんが…」
「ええ…構いませんよ…」
だよな。断るわけないよな。狙ってる獲物が自ら近づいてくるんだから。
案の定稲美さんは少しニヤケている。
普段とは違ってまさしく狐って感じ。
さて、あとは空成の荷造りだけだが、ほとんど荷物もないし、すぐ終わるだろう。
すると、空成が聞いてくる。
「そういえば、湊人の力の特訓はどうするの?」
「仕方ないから、森でひっそりとノリでやるさ。ま、夢のなかで色々と引っ張り出すさ。」
「わかった。何か助けになれることがあったら、相談して。」
「あいよ。」
その前に女関係でお前が相談してくるだろうがな。
クククッ、これは面白くなりそうだぞ。
さて、神社を出て、本格的に暇になった。
仕方なく、森に出て軽くモンスターを狩る。
そのまま森でヤタと一緒に休憩をとる。
「しかし、どんな力なのかねぇ。ヤタ、なんかないの?」
「カー。(と、言われてもですね…」
「カラちゃんに聞くしかないか〜答えねえし、また頭突きされそうだけど。」
その日はそのまま雀庵に帰った。
翌日、空成が雀庵を出て、神社に移った。
そして昨晩、カラちゃんからまた頭突きをくらい、情報を得た。
まず、力は風に関連しており、成長すれば旋風とか起こせるらしい。
弓じゃなくて扇子にした方が良かったか?
それはさておき、早速森で試す。
たしかに風をちょっと操れる。
まあ、まだ初期の段階なので限度がある。
まずは葉っぱ一枚落とさないようにするとかで練習しよう。
俺はその後も練習を続け、遂に弓の受け取りの日が来た。
「ちーす。」
「お、来たか。できてるぞ。俺の中での最高傑作だぜ。」
俺は弓を受け取る。
すると、なんだか安心する。
こう、抜けてたものが戻ってきたみたいな?
ま、羽だから抜けてるんだけどね。
だが、ホッとしたのはたしかだ。
これが新しい俺の弓…
早く撃ちたい。
的は…やっぱり人が一番いいな。
あー!だれかなんか事件起こしてくれないかな!
次回、久しぶりに出番ですよ!