ボス
前回あらすじ
奇妙じゃない冒険
「どうなった?」
俺は空成に向かって問いかける。
しかし、返答を聞くまでもなくうまくいってないのはわかる。
「ダメだ。大烏が応戦してるけど勝負がつかない。援護しようにも大烏に当たりそうでとても火球を打ち込める状況じゃない。」
三人揃って上を見上げる上空では未だ大烏とボス鳥の戦闘が続いている。
足で引っ掻いたりくちばしでつついたりしてるかと思ったら魔法での威力勝負だったりと止まることを知らない。
するとほかの天狗屋のみんなも合流した。
中には舘先輩もいた。
「一体あれはなんだ!?」
「倒すべき敵。大烏が味方なのはわかるでしょ?」
「ああ…」
ざっと十五人程度か…全員フル装備ね…
「湊人、何か思いついたんだね?」
「あ、バレた?」
「にやけてたもん。」
「はぁ…ダメだな。この癖治そうとしてるんだけどなぁ〜」
「おい、何を思いついたんだ?」
舘先輩たちの視線が俺に集中する。
「はいはい、わかったから。いいかい?みんながやることはただ矢を射るだけだ。いいね?」
それから思いついた作戦を伝えた。
「わかった。任せたぞ。」
由美華さんから激励の言葉をもらう。
「任してください。相手をイラつかせることには定評があるんで。」
それからみんなが配置に着く。
ということで、作戦開始だ。
「おーい!烏!お前ちょっと来いや!」
俺は大烏をとりあえず呼ぶ。
すると大烏が思いのほかすぐ降りてきた。
予想だと渋るとおもっていたんだけどな。
「いいか?カクカクシカジカコレコレウマウマ…了解?」
「カァー!」
「よし、んじゃ失礼して。」
俺はざっくり作戦を伝えて大烏に乗る。軽く体を大烏の体に固定し、ボス鳥…以後「カモ」と呼ぶことにしよう。カモの元へ飛んだ。
「おい!出来損ない!こんな唐揚げ相手にムキになりすぎじゃあないの?」
カモを煽ったつもりだったがどうやら大烏の癪に触ったらしい。
カモはあまり俺に興味は示していないらしい。
「無視かい?つまりは俺と殺りあうのが怖いってことでいいのかい?だらしないねぇ〜そんなでかい図体して肝の小さいやつだ!お前のフォアグラは随分安値だろうよ!ま、所詮は鳥頭ってことだなぁ?」
流石にキレたらしく襲ってくる。
俺は必死に大烏にしがみつき機を狙う。
しかし並みのジェットコースターより凄まじい乗り心地だ。
俺は口に空成特性の矢を口に咥え、自分で作った矢でちょくちょくちょっかいをだす。
いくつかの矢が刺さる。
そろそろ頃合いだろう。
俺は必死の演技で大烏から振り落とされたように落ちる。
それを真上からカモが追ってくる。
「はーい!じゃあ大きくお口開けてー!」
カモは俺を喰い千切る為に口を大きく開ける。
そこで俺は空成の矢をつがえる。
そのタイミングで潜伏していた天狗屋が全員飛び出し矢を放つ。
天狗屋のみんなの矢には空成の妖術が施され、刺さるとめっちゃ痛くなるようにしてある。
「よく出来ました。じゃあ投薬治療の時間だ!」
空成の矢を大きく開かれた口に放つ。
俺の矢はカモの体を奥深くまで貫く。
その後落ちながらカモに向かってブーイングしながら一言。
「こんがり焼けちまいな。」
するとカモの体が内側から爆発四散する。
俺の放った矢は爆弾仕様で下で空成が起爆したのだ。
カモの石の位置は把握していた空成が最高のタイミングで爆破したので石もろともカモはバラバラになった。
俺は由美華さんにキャッチしてもらった。
残念なことにお姫様抱っこ状態なので恥ずかしい。
「よくやったな。」
「褒め言葉より今は一刻も早く降ろしてくれませんかね?」
その後地上に降りて集合する。
「ナイス爆破。」
「ナイス狙撃。」
空成とお互いを褒めあう。
「ほんとうによくやったな。これで祟りの被害も治るだろう。」
「ああ、ただ、悪い知らせが一つ。」
「なんだ?」
「…吐きそう…うっぷ…」
「あんな無茶するからだよ!ほら、あそこの岩陰まで頑張って!」
「ちょ…無理…おr…」
「あー!ちょっと!我慢してー!」
「はぁ…人騒がせな奴め。」
俺と空成は一緒に岩陰に行き、しはらく休んだ。
「あー。二度とごめんだねあんなジェットコースター。」
「あはは…おつかれ。」
さて、戻ろうかというところで大烏がきた。
「あ!そうだ!テメェを唐揚げにだなぁ!」
と、連れてこられたときの文句を言ってやろうとしたとき、足で頭を掴まれ、一瞬驚いたら次の瞬間、大烏の体が灰になって、二枚の羽が残った。
「まさかの唐揚げ粉の方だと!?」
「そんなこと有り得ないでしょ!?それより、この感じ…どこかで…」
と、俺たちが戸惑っていると由美華さんたちが様子を見にきた。
「おーい!大丈夫か?ってなんだ?この灰の山は。」
「大烏が急に灰になっちまってさ。あ!俺は何もしてないぞ!」
「そうか…子供を見たときにもしやと思ったが、代替わりの時期、ということだな。」
「では、湊人と一緒にいたあの子を探さないと。まだ子供で十分に飛べないのに。」
「探す必要はないそうだぞ。」
話をしていると、向こうからチビ助がテトテト歩いてきた。
俺たちは羽とチビ助を回収して、街に戻った。
これにて一件落着というやつだ。
次回、八咫烏はロリで無口で表情豊か。