中ボス
前回のあらすじ
怪しい人について行ってはいけない。
風穴あけるとか大口叩いたが、割と相手が悪い。
矢を放っても魔法で弾きやがる。
それに比べて俺は攻撃に対し回避しかできない。
が、男に二言はない。
なんとしてもあいつは俺が殺る。
矢を放って応戦するが、突破口が見つからない。
力でダメなら頭で勝つしかない。
つまりは策だ。
何か、あ!っと驚く策を練らなければならない。
幸い森なので、遮蔽物が多いため避けやすい。
しかし、何回も魔法による攻撃を避けていくうちに徐々に追い詰められる。
ついに一発食らって吹っ飛んでしまった。
「痛ぇなチクショー…どうせ三下のくせに…」
「あら?もう終わりかしら?口先だけの坊やは好きじゃないのだけれど?」
ジリジリと詰め寄ってくる。
「あんたなんてこっちから願い下げだけれどね。はは。」
「笑う余裕があるのかしら?」
「余裕はないけどね〜。あんたを見てると面白くてねぇ。」
「どういうこと?」
「人生かけてあんな化け物作ってさ。その努力が実るかも分からないのに必死こいてるあんたが馬鹿みたいでね。」
「この状況でよくもまあそこまで言えるわねえ。」
「前向きなのが取り柄でね。」
奴の魔法が目前に迫る。
しかし、その時だった。
「湊人!」
上空からの声に女は思わず空を見上げた。
そこには後を追ってきた由美華さんがいた。
そして、待っていた。この時を。
一瞬、奴の気が俺から逸れたこの一瞬が勝負だ。
俺は由美華さんに見向きもせずに“罠”を作動させる。
スキル罠作成
レベルに応じて動物を狩ったりする様々な罠を作ることができる。
実は逃げているように見せてこっそり仕掛けておいたのだ。
奴の足に縄が絡みつき、そのまま引き上げられる。
さらに無防備な腕に新開発の金属製の輪っかとロープが一体となり、持ち手を引けば間が狭まる原始的な手錠をかける。
西部劇さながらに。
あっという間に宙ぶらりんで手を拘束された三下中ボスの出来上がり。
すぐさま矢をつがえた弓を向ける。
「な?口先だけじゃなかっただろ?」
「貴様!…」
「おっと、魔法を使おうとはするなよ?そうだなぁ…俺の好きなアニメのセリフを一部借りるなら、『抜きな。どっちが速いか勝負だぜ。』ってやつだ。もっとも、お前が魔法を発動させるのと、俺が指を離すの、どっちが速いかは火を見るよりも明らかだがな。」
「くそっ!こんなガキ相手に!」
「そう怒るなって。ただでさえひどい顔が余計に台無しだ。無しにする台もないくらいにな。さて、俺がなんて言ったか覚えてるよな?男に二言はないんだぜ?」
女は察したのか、恐怖する。
「いや…いや…!」
「ダメだね。罪は償わないと…」
「あ、あなた…街の自警団でしょう?そんな人が、人を殺めていいのかしら?」
「そうだな…ならいまだけお休みだ。」
「え?」
そう言って俺は服に結びつけている札を取る。
「さあ、これで天狗屋の湊人からただの湊人に早変わりだ。これで大丈夫だな。うん。」
「そ、そんな…」
「んじゃ、行くぞ。っとここでまた好きなアニメの台詞を一つ。『お前は“やめてそれだけは。”と言う。』」
「や、やめて…それだけはやめて!そ、そうだ!体!私の体を好きに使っていいわ!これでも女の端くれ。体にも自信が…」
「はぁ…とことん屑だな…」
「へ?」
「生憎今の俺には命を作るより命を奪う方が性に合ってる。」
次の瞬間、悲鳴がでかかった。
出したくても、喉を矢が貫通しているため声は出せない。
よって、音にならない悲鳴が響き渡った。
そして、そこには、大きな血だまりができていた。
「さてと、片付いたし、空成の方に行くか。チラチラ見えてたけど、苦戦してるみたいだしな。」
俺は札を回収してせっせと空成の方へ行った。
すると途中で由美華さんに引き止められた。
「湊人…お前…」
「ん?なんです?」
「いや…その…なんでもない…」
「…」
由美華さんは一部始終を見ていた。
俺が的に向かってたくさんの矢を射る姿を。
「クビっすかね?」
「いや、お前のやっていることは決して間違ってはいないと思う。ただ、やり方に問題があるだけだ…」
「…止めなかったことには感謝しています。」
「え?」
「さ!早くしないと、空成バテちゃいますよ!先輩!」
俺は由美華さんと共にいまだボスのなんかよくわからん鳥に苦戦している空成の元へ向かった。
次回、落ちろ!!!!…堕ちたな(確信)…