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ゲー4(元)  作者: 鬼雨
目指すは再開、出会いは豪快
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妖術

前回のあらすじ

女性の年齢は気にしてはいけない




翌日、僕はまた稲美さんのところに行った。

ちなみに、昨晩の夢で何を学ぶかは玉さんからある程度聞いた


「妖術…ですか?」

「そうです。魔法とは似て非なるものです」

玉さん曰く妖術とは、魔力の代わりに精神力を使うらしい。

魔法と共通点はあるけど、色々と違うらしい。

「まず、魔術は魔力を使って様々なことをします。例えば、物を浮かせたりですね。ですが、妖術で物を浮かせるのには精神力で浮かせます。」

「あの、いまいち分からないです。」

「そうですねぇ…この世界を一枚の紙だと思ってください。魔術は魔力という墨で紙に様々なことを書く。つまり、色々するということです。ここまでは大丈夫ですか?」

「はい。」

「妖術は、精神力を使って、紙の一部を別の色の紙と置き換える。という感じですかね。」

「置き換える?」

「魔術は事象を追加するのに対し、妖術は今ある事象を改変するということです。」

「現実を曲げるってことですか?」

「はい。しかし、精神力を使うので、あまりに大きなことをすると、心に障害が生まれてしまうので要注意ですよ?」

と、昨晩の夢の中で軽く説明を受けた。

「まあ、詳しいことは稲美に聞いてくださいませ。」

ということで、朝食をとったあと、湊人と別れて神社に来た。

ちなみに狐の名前はまだ決まっていない。

(うーん。どうしようかな…でも、今日中には決めたいなあ。)

神社につき、早速特訓が始まった。

「なるほど、彼女から最低限の説明は受けたようなので、その続きから始めましょう。」

いまは居間の机で、稲美さんと向かい合っている。

「妖術は一種の現実改変能力です。魔術では難しいことでも、いとも簡単に出来ることもあります。しかし、魔力が切れたとき、回復の方法は色々ありますが、妖術に用いる精神力は当人の自然回復に頼るしかありません。一歩間違えば正気を失い、状況次第では死に直結します。」

その言葉にゴクリと唾を飲む。

それに気づいたのか、稲美さんが笑顔でまた話し始める。

「そうならない術を私が教えるので、そう緊張しなくてもよろしいですよ。」

「は、はい…」

稲美さんは湯飲みに入ったお茶を一口飲んで、続けた。

「妖術を行うためには『こうなる!』と強く思うことが大切です。自分の思い描く事象が現実になると、強くしっかり思うことができればある程度は大丈夫です。」

「それでは、ほかの人も強く思えばできるんですか?」

「それが魔術と妖術の違いです。魔術は殆どの人が出来ますが、妖術は一部の高位の魔族や私たちのように高位の妖怪など、できる人が限られています。あなたは彼女の魂を受け継いだので、行使出来ますが、あなたの周りの方々は無理です。」

いわゆる一部の人に与えられた特殊スキルのようなものということなのかな。

「では、実際にやってみましょう。そうですね…手の上に火の玉を出してみてください。」

「は、はい。」

僕は自分の手の上に火の玉が出るように強く念じる。

しかし、一向に出ない。

すると、稲美さんが僕の後ろにつき、後ろから僕の手を支える。

「『出す』よりも、『出る』と思うことです。あたかもそれが必然かのように。無理に念じる必要はありませんよ。」

僕は心を落ち着かせ、僕の手の上に火の玉が出る場面を思い浮かべる。

それが未来の出来事であるかのように。

すると、手の上に赤い鬼火。

ここでは狐火と言うのだろうそれが出た。

「よく出来ました。」

僕は狐火を消して、一息つく。

なんだかさっきより結構疲れた気がする。

「では、次です。妖術は現実改変能力と先ほど言いました。つまり常識も変えられます。」

そう言うと、稲美さんの手の上に狐火がでる。

「触れてみてください。」

「え?」

「この火に触れてみてください。」

「でも、火傷して…」

「大丈夫ですから。」

恐る恐る手を近づける。すると、あることに気づく。

熱くない。むしろ、冷たく感じる。

手で火に触れてみるが、熱くなく、むしろ冷蔵庫から出したばかりの水に手を近づけているかのような感覚だ、

「これは…どういう。」

「これは私が『熱くない火』を作っているからです。このように、人々に刷り込まれている常識をも妖術は変えることが出来ます。上達すれば、特定の人には冷たく、特定の人には熱く感じる火を出すこともできます。こんな風に。」

そう言って稲美さんは手の上の火を居間に落とす。

しかし、床は燃えず、火も自然と消えた。

「これが、妖術…」

「ふふふ。驚きましたか?」

「はい…」

「しかし、妖術はこのように便利ですが、魔術よりも危険な面があるのです。」

「危険な面?」

「そうです。『出来る』や、『起こる』と強く思えばそれが現実になる。それの危険性についてもしっかり理解していただきたいのです。」

稲美さんは改めて正座になり、僕に向き直る。

「では、ここで問題です。妖術によって出来る魔術では非常に難しいことを一つあげてください。そうですね…例えば、この神社の結界のようなものです。」

僕はしばらく考える。

魔法では難しいもの。

神社の結界は人を知らず知らずのうちに追い返す。

そこで僕は一つの結論に至った。

「精神干渉?」

「正解です。魔術では人の精神や無意識への介入は困難ですが、妖術ならば魔術に比べとても簡単に出来てしまうのです。この意味、分かりますね?」

その気になれば集団心理を捻じ曲げられる。

大々的にやれば選挙で絶対に負けない。

自身の正当化も簡単だ。

たしかに魔術に比べ数段危険だ。

「しかし、私はあなたがそんなことをする人ではないと信じています。ですから、彼女もあなたを選んだのでしょうしね。」

「はい。分かってます。」

「では、まずは火の玉を普通に出せるようになりましょうか。」


しばらく経って、僕はヘトヘトになっていた。

火の玉一つ出すのにもかなり疲れてしまっている。

先は長そうだ。

「では、ここでちょっと休憩しましょうか。」

すると稲美さんが足を崩す。

「妖術は精神力を使います。つまり、心にゆとりがあればあるほど良いということです。つまりは癒しです。」

すると、稲美さんが自分の膝をポンポンと叩いた。

そこで稲美さんが何をしようとしているのかなんとなくわかった。

「い、いえ!そんなこと…」

「私は構いませんから、さあ。これも練習ですよ?」

少し恥ずかしいが、僕は稲美さんの膝に横たわる。

すると、稲美さんの九本の尻尾がまるで掛け布団のように覆いかぶさってきた。

ずっと側で見ていた狐も僕と一緒に稲美さんの尻尾に潜る。

すっごい気持ちいい。そこらの高級布団なんかとは比にならない。

そのせいか、僕はスッと眠りについてしまった。

次回、世間話は将棋とともに。

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