神社
前回のあらすじ
初仕事、完了!
初仕事から数日が経って、僕らもよく知られるようになった。
烏天狗じゃない天狗屋ということで、地域の人たちにもすぐに覚えられた。
お陰で仕事中によく声をかけられるようになった。
そして今、僕らは出現した[祟り]と戦闘中。
避難は出来ているので、湊人たちがどうにかするまで、僕は後方でけが人の手当てだ。
数分後、片付いたみたいで、現場に呼ばれた。
「どうだった?」
「まあな。弱点は分かってるし。あとは相手の射程距離外からチマチマとやれば大したことない。」
「最近になって出てきたみたいだし、原因があるはずだよね。」
「あぁ、でも、死体がほぼ残らないからな。なんとも言えない。」
結局、何も分からず終いだった。
その日の夕方、会議に出た。
議題はもちろん[祟り]のこと。
会議はさして進まない。
情報が足りないのだ。
そこで、僕がずっと思ってたことを聞く。
「ところで、祟りって呼ばれるくらいなら、何か悪いことでもしたんですか?」
すると、羽宮さんが答えてくれた。
「特にそう言ったものはないはずなんだが、怪物やら化け物とも違う感じがしてな。まあ、あの神社が関係しているかはわからないがな。」
「神社?そんなのあったっけ。」
湊人が聞く。
僕の記憶にも、ここら辺に神社はないはずだ。
「二人はまだ知らなかったな。北のほうに少し高い山があるだろう?その上にあるんだ。遠くからでも木の間からみえる。のだがな…」
「?どうかしたんですか?」
「辿り着けないんだ。近づくと、知らぬ間に麓に降ろされる。空からもダメだったんだ。街の人も行った人はいないんだ。」
「そこが怪しいと?」
「明日、私の部隊で行こうと思っている。この際だ。二人も来るといい。」
ということで、その山の麓にいる。
高さはそれほどない。
目を凝らせば頂上が見えなくもない。
しかし、木が多く、石の階段がなければ苦労するだろう。
例えると、ト〇〇のいる山を小さくした感じ。
そして、石の階段が頂上まで続いているのだ。
昔は人が行き来していたのだろうか。
そうこうしている間にみんなで登り始める。
約10分ほど登ったところで、何か壁のようなものが見えた。
こう、その先が歪んでいるようにみえる。
その壁に近づき、通った瞬間
頭が少しぼーっとした。
こう、眠る寸前のような感じ。
おそらく、人避けの魔法か何かだろう。
一瞬眠りに落ちかけたが、なんとか振り切った。
後ろではみんながゆっくり下山を始めている。
声をかけても、体を揺すっても反応がなく、降り続ける。
催眠術のようなものだったのかもしれない。
見えた壁はきっとそうだろう。
戻るか考えたが、現状壁を通って動けるのが僕だけで、次があるかはわからない。
仕方なく、僕は登ることにした。
何かあったら即撤退しよう。
いまは少しでも情報を持ち帰らないと。
しばらく登ると、神社に着いた。
下からも見えたが、そこそこの大きさの鳥居がある。
神社は寂れているかと思ったが、生活感がある。
観察していると、左前方から人が来た。
女性だが、人間じゃない。
きつね色の髪に、頭の上から生えた尖った耳、そして背後にみえる数本の大きな狐の尻尾。
向こうもこちらに気づいたようで、近づいてくる。
敵か、味方かわからない。
印象としては味方だが、何か強いオーラを感じる。
「あなたはどちら様?どうやってここへ?」
「えっと…階段を登って…来ました。」
「そう…あなたが…わかったわ。疲れたでしょう?こっちへ。」
まだ味方とは断定出来ないけど、とりあえず着いて行ってみよう。
神社の奥へ行くと、そこは住居のようになっていた。
縁側があり、居間には丸いテーブル。
ごく普通の家だ。
女性はキッチンへ行き、お茶を出してくれた。
一応飲まないでおく。
「それで、何用かしら。こんなところまで。」
「あの、いま街に出てるたた…怪物について、ここが怪しいのではと思ってきました。」
転移魔法で逃げる用意をしておき、すぐに後退出来るようにする。
「あぁ…あれね。あれに私は関係していないわ。」
「証拠はありますか?」
「うーん。いまは見せられないわ。」
「…あなたは一体…」
「私は稲美。玉上 稲美よ。ここで巫女というよりは神さまをしているわ。」
「か、神さま?」
「私は稲荷という種族でね。妖狐の最上位なの。ほら、尻尾が九本あるでしょう?」
たしかに九本ある。
ふっさふさのが。
「私もその怪物はなんとかしたいのだけれど、私はここから出られないの。」
「どうして…」
「契約。だからかしらね。」
「契約?」
「これはあなたにも関係しているわ。」
契約?僕はこの世界に来てまだ二週間経っていないのに?
「あなた、何か他の人とは違うのよね?」
もしかして転生者だから?ならなぜ壁で湊人は弾かれたのだろうか。
「唐突で申し訳ないのだけれど、彼女との約束なの。あなたにはしばらくの間、ここに通ってもらうわ。」
「何のために?」
「あなたには後を継いでもらわなければならないの。」
「何の後ですか?」
彼女は少し笑みを浮かべ、しかしながらやや申し訳なさそうに言った。
「神さま。かしらね。」
次回、神社の秘密