初仕事
前回のあらすじ
職場環境は良さそう
天狗屋の仕事は基本はパトロール。
まあ、パトロールと言う名の休暇だ。
理由は、パトロール中は何か起きない限りは自由だからだ。
これも烏天狗の機動力のなせる技ってわけ。
それと、治安の良さ。
割と頻繁に何も起きない日があるらしい。
あっても酔っ払いの喧嘩とか。
強盗なんて滅多に起きない。
だが、俺はその滅多に起きないものが初仕事らしい。
現在強盗犯を屋根の上を走りながら追跡中。
気分はさながら忍者は〇〇り君。
山も跳ばないし、谷も越えないけど…
奴が橋を渡る時がきた。
この時を待っていたのだよ。
橋の反対側に矢を数本放つ。
もちろん通行人に当てるほど俺は下手じゃない。
犯人はもちろん一時停止。
俺は矢と反対側に降りる。
「観念したらどうだ?無理あるぞ?」
「たかが一人で!」
「と、思うじゃん?」
それと同時に上から烏天狗が数人降りてきて、包囲する。
「あ、館先輩ちーす。」
俺は今降りてきた中の顔見知りの先輩に挨拶する。
「お前なぁ、それが先輩への挨拶か?」
「えぇ?じゃあ仕切り直して…本日は、お日柄も良く…」
「長い長い!まったく、期待の新人と羽宮に聞いていたが、態度がこれではなぁ…」
「腕は確かですぜい?」
「くっ…はあ、とりあえずご苦労。あとは俺たちがやる。」
「ありがとうございます。」
しかし、今回は本当に稀なケース。
滅多に起きないからな。
それで何もなくてもちゃんと給料出るんだからたまげたなぁ。
さて、一仕事終えたし、軽く観光するか。
湊人と別れて別々に行動して、二、三時間が経った。
僕の方は今のところ何もない。
それだけ治安がいいと言うことだろう。
また生活に困っていない人もあまりいないのもいいことだ。
(現世もこれだけ平和なら良かったのになぁ。)
と、つい思ってしまう。
だが、向こうには向こうの良さがある。
ここも平和だが、外界との交流があまり多くないのが強いてあげられる欠点だろうか。
いわば侵略前の民族ともいえる。
強力な国家が攻めてきたら、太刀打ちできないだろう。
独立しているが故の欠点だと思う。
もし、そうなれば、涼太郎たちとの合流も考えなきゃいけない。
そんなことを考えていると、近くで何やら騒いでいる。
どうやら喧嘩のようだ。
内容を聞くに、男二人がぶつかったことで揉めてるらしい。
初仕事にしては地味かもしれないが、僕にはあっているかもしれない。
「あの、お二人とも落ち着いて。」
仲裁に入るが、聞く耳を持たない。
とうとうお互いに胸ぐらを掴んだ。
少々手間だけど、やるしかない。
僕は転移魔法を使う。
これは二つの楕円形のゲートで二地点を結ぶものだ。
僕は二人の真上に一つ、真下に一つ作る。
すると、永久に落ち続ける穴の出来上がり。
二人は驚きと恐怖でお互いに叫んでる。
さて、説得を始めないと。
「いいですか?まず、ぶつかってお互いに喧嘩になることがおかしいんです。まず相手にぶつかったら謝罪を…」
五分後
「そもそも向こうから人が来ているのに避けようともせず…」
さらに五分後
「分かりましたか?」
「「はい!すいませんでした!」」
二人が観念したようなのでゲートを閉じる。
着地の傷を治し、解決。
周りからは拍手をもらった。
後から来た烏天狗の人も笑っていた。
力ずくでやるより、この方がよっぽど楽だ。
すると、湊人に肩を叩かれた。
「ずいぶん長い説教だったな。」
「来てたの?」
「さっきな。昼飯にでもと思って。」
「そうだね。今日は何食べようか。」
「すでに目星は付けてる。定食屋でな。館先輩の保証付き。」
「それなら安心だね。」
僕らはご飯を食べたあともパトロールを続けたが、その日はほかに何も起きなかった。
本部に戻り、報告を済ませて給料をもらう。
その後、湊人は弓の練習をするらしいので、僕は本部の図書をあさる。
知識はいくらあっても損はない。
中には新しい魔法についてもあったので、後日試してみよう。
あと呉服屋に行った。
店主は毛娼妓という種族の女性で、糸井さんと言う方。
彼女は髪の毛が発達していて、足元に着くくらい長い。
おっとりした人で、髪のせいで表情が伺いづらいけど、いい人だ。
彼女には僕らの私服を頼む予定でいる。
お金は収入も安定しているので心配はない。
その後、宿に戻り、お風呂に入り、就寝した。
たまに街の外に出て、強くもならないと、また祟りとかが出た時に何も出来なくなってしまう。
平和ボケには気をつけたい。
次回、突撃!隣の山の神社。