宿と試験と調味料
前回のあらすじ
うどんって漢字だと饂飩って書くんだけど、むずくね?
うどんを食べたあと、僕たちは雀庵に来た。
女将さんは間宮 忍さんという六十代くらいのおばあさんで、優しい人だった。仲居さんは犬の獣人で、耳と尻尾がある女性で、間宮 蓮子さんという人。女将の忍さんとは義理の親子だが、蓮子さんはまだ二十代前半。なんでも、蓮子さんは親を亡くしており、その親と中の良かった忍さんに引き取ってもらったらしい。そのうち、お互いで話し合い、娘になったそう。
部屋は典型的な和室で、修学旅行で、こういう感じの部屋に泊まったことのある人も多いだろう。
神さまからもらった路銀は結構ある上に、明日の試験に受かれば職も手に入る。
安定した生活が出来ると思う。
蓮子さんに聞いたところ、雀庵という名前は昔、忍さんが、山で遭難した時に、鷹に襲われている雀を助けたら、「雀のお宿」に案内されたことがあり、その時のことから、そう名付けたそう。
この「雀のお宿」、日本で言うところの舌切り雀の話によく似ている。一説ではこれを迷い家とする説もあるらしいけど、あるなら一度見てみたいなあ。
その日の晩御飯の時だ。
「なあなあ、涼太郎たちはいわば西洋側なんだよな。」
和食の夕飯を食べながら、湊人が話す、
「たしかね。」
「ならよ、あいつらは醤油や味噌がないんだよな?」
「そうなんじゃないかな?」
「あははは!涼太郎のお得意の料理も、大して幅がないわけだ!なあ、今のうちに満喫しとこうぜ?この和の調味料の良さをさ。」
たしかに、涼太郎の料理は醤油や味噌を使うものが多いし、元が日本人なだけに、恋しいはずだ。
「でもさ、それでいったら、僕らもチーズとか、ソースやマヨネーズがないよ?」
その言葉に湊人が固まる。
あ、これ触れちゃいけないやつだったかな…
「…しばらくは健康でいれそうだな…」
「そ、そうだね…」
昨晩の洋食への恋しさを振り切り、俺たちは天狗屋に赴いた。
もちろん入社試験のためだ。
昨日はほぼ連行されたため、あまり建物をみるひまがなかったが、改めて見ると、面白い。
一見市役所にも似ているが、上の方は大きなベランダになっていて、あそこから烏天狗たちが出動するのだろう。
控えめな戦隊モノの基地みたいな感じかな?
と、建物を観察していると、昨日の羽宮さんが来た。
なんでも、中庭が、練習場になっているらしく、そこで試験をするらしい。
まずは空成からで、内容は魔法の確認程度のもの。
空成は現在、火球を放つ魔法、中級の治癒魔法、魔力によるシールドを貼る魔法、そして転移魔法の4つだ。
空成曰く、スキルの効果で、魔法の威力、効果が使う魔力量に比例するらしい。
つまり、全魔力を使えば、中級の治癒魔法も、化けるということだ。
昨日の怪我人の手当ての実績もあり、すんなり通過。
次は俺の番だが、弓で的を射るだけ。
うん。朝飯前。
まあ、食べてきちゃったけど。
ということで、二人揃って烏天狗の仲間入り。
証の木札をもらい、制服扱いの和服ももらった。
デザインはシンプルで、普段着としても使えそう。
当分は羽宮さんの部下という扱いらしい。
ほかの烏天狗の人たちが、どういう態度を示すか心配だったが、「すごい」とか、「色々教えてくれ」とかみんないいやつそうだ。
それで、色々面白いことがあった。
まず、増援の呼び方は、草笛。
そこらに生えてるもので、吹けとのこと。
シンプルだが、悪くない。
本部にいる時に練習しておこう。
給料は一日大銀貨一枚。
通貨は四種類で、銅貨、銀貨、金貨、白金貨で、白金貨以外はそれぞれ大中小と分かれており、十倍で、サイズが変わる。
つまり、中銅貨十枚で大銅貨一枚、大銅貨十枚で小銀貨という感じだ。
神さまから教えてもらったが、呼び名が違うだけで西洋側も一緒らしい。
まあ、大金貨はどちらでもあまり見かけないが。
宿代は二人で一泊中銀貨七枚
西洋側で言えば70シルバーといったところか。
まあまあ余裕がある。
仕事は明日からでいいとのことなので、今日は本部の見学と、草笛の練習だ。
あと、早速弓の練習に付き合わされるらしい。
フッフッフッ。俺の弓さばきについてこれるかなぁ〜?
次回、初仕事は、忙しい。
通貨制度をしっかりさせました。
第8話の後書きもそれに伴い変えました。