表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/28

No.7

 ーー遂に卵の殻を破って出てきた生物とはーー


 なんと!どう見ても、人間の赤ちゃんではありませんか!!?

 しかし人間が卵から産まれるなんて、この世界でもあり得ない話なので……それぞれ困った表情で、おれ達は顔を見合わせる。


 「どーみても人間の赤ちゃんだよね……?」

 

 みんな無言で頷き、どうしたらいいか困っていると……完全に卵の殻を割り、姿を現す赤ちゃん。

 どうやら女の子のようなのだが、産まれてすぐに泣き出してしまった!この場にいる人に、子育ての経験者はおらず……するとキルルが赤ちゃんを抱き上げ、あやし始める。


 「ウィルはオムツを創って!ベティーさんはミルクを作ってください!ゴンザレスさんは街で必要な物を買い揃えてきてください!」


 キルルのテキパキとした指示により、慌てて行動を始めるおれ達3人!

 なんでまだ11歳のキルルが、こんな的確な指示を出せるのかは謎なのだが……とりあえずおれは、オムツと服と哺乳瓶の準備を!

 ベティーはすぐにミルクを用意し、キルルに手渡す。キルルは赤ちゃんの口に、ミルクの入った哺乳瓶を当てると……さっきまで大泣きしていたのが嘘かのように泣き止み、イッキにミルクを飲みほす。


 「・・・ん?イッキ過ぎない?!一瞬でなくなりましたけど!?」


 ミルクを飲み終わるなり、人間の赤ちゃんとは思えぬげっぷをする。

 この赤ちゃんは本当に、人間の赤ちゃんなのか?そんな疑問を抱きながらも、おれ達はこの子を育てていかなければならない。

 おれ達が化石を元に戻し、産まれてきたのだ……育てていく責任がある!!

 そうこうしているうちに、ゴンザレスが大量の赤ちゃんグッズを購入し戻ってきた。何が必要か分からなかった為に、手当たり次第買ってきたようだ。

 ミルクを飲んで落ち着いたのか、赤ちゃんはスヤスヤと眠りについた。


 「キルルはちゃんと責任を持って育てるんだよな?」


 「当たり前!この子の名前を考えなきゃ!!」


 おれとキルルが会話している間、ゴンザレスとベティーはこの子が本当に人間の赤ちゃんなのかを議論していた。

 それは今現段階で議論しても結論はでないのでは?そうおれが2人に言ってあげると、2人もその事については話し合うのをやめてしまった。

 話し合いをやめた2人だったのだが、今度はこの子の名前でもめだしてしまった。

 そんな2人を気にする事もなく、キルルはキルルで1人考え込んでいる。この人達に、一緒に考えようって気は無いのだろうか??みんななかなかいい名前が浮かばず、時間だけが過ぎていく・・・


 「明日までに1人1つ名前を考えとこうか?」


 いつの間にか日付も回っていた為、ゴンザレスの提案により明日みんなが考えた名前を多数決によって決定する事になった!

 キルルの部屋に赤ちゃん用のベットも創りーーこの日はみんな気疲れからか、すぐに寝てしまう。


 ーー翌朝ーー


 「えええーーー!!!」


 おれはキルルの叫び声によって飛び起き、慌ててキルルの部屋へと駆けつける!


 「どうした!?」


 部屋へ入りキルルに問いかけると、キルルは無言のままベビーベットを見ていた。

 まさか産まれてまもない赤ちゃんに何かあったのではと、おれもベビーベットを覗き込むと・・・


 おれも言葉を失ってしまい、無言のまま赤ちゃんを見つめる事となる。

 直後ゴンザレスとベティーもキルルの部屋に到着し、2人して無言のままベビーベットを見つめている事ではっとなり慌てて駆け寄る!

 

 そして・・・4人は無言のまま赤ちゃんに背を向け、輪になって話し合いを始める。まず始めにベティーが一言……


 「あのガキは誰だい?昨日卵から産まれた赤ちゃんはどこだ?」


 なんと!!昨日赤ちゃんを寝かしていた筈のベビーベットには、2歳位の女の子が寝ていたのだ!!!

 キルルも朝目が覚めて赤ちゃんを見たら既に、今ベビーベットで寝ている女の子になっていたそうだ。

 それで叫び声を上げたらしい。

 誰かにすり替えられたなんてあり得ないし……そうなると昨日の赤ちゃんが、一晩で2歳児まで成長した事になるのだが?


 「やっぱり人間じゃないって事か?」


 おれの質問に対し、ゴンザレスは難しい表情で考え込む。そもそも卵から人間が産まれてくるなんてやっぱりあり得ないだろ!!?

 おれの考えには3人も同意を示し、この子が何者なのか知るすべが無いかを考えていると……ゴンザレスが測定器の話を始めたのだ!

 なんでも最新の測定器は種族も普通に表示されるらしく、それを使えば分かるかもしれないと!

 ただ元は化石だったので、万が一新種だった場合は表示エラーになるであろうと話すゴンザレス。

 

 「おい!ゴンザレス!そんなもんがあんなら早く持ってこいよ!?」


 うん!こればっかりはベティーの言う通り!と思いきや……まだ話には続きがあったようだ。

 その最新測定器はまだギルドにも出回っていないらしく、いくらギルド長のゴンザレスと言えど手に入らないみたいだ。

 更につい最近ーーまだ1つしかないその最新の測定器が、とある空賊によって盗まれたらしいのだ。

 何に悪用する気なのかまでは分かっていないが、今もまだその空賊は捕まっていないらしい。

 今無いんじゃ仕方ないし、他に調べる方法がないもんか……この子が何なのかも分からないまま、育てるのも難しいだろうし。


 「ウィル!キルル達は何?」


 突然キルルが、訳の分からない事を言ってきた。

 何って何??おれは意味が分からず1人困っていると、急にベティーが悪い笑みを浮かべ始めた。

 益々分からなくなるおれは、素直にどう言う事か訊いてみると……


 「お前はバカか?お前は今空賊だろ!?空賊なら奪っちまえばいいだろ?」


 そう言う事!?おれは別に空賊になりたくてなった訳じゃないし……ってそもそも、何故キルルがそんな事を思い付くんだよ!?

 などと思いながらも、まぁ相手が空賊なら別にいいのかな??おれはゴンザレスの顔を見ると……

 

 「俺は聞かなかった事にする。まぁ相手も空賊だしな!」


 いやいやいや!聞かなかった事にするなら、相手も空賊だしとか言っちゃダメでしょ?!

 でもとりあえずは、ゴンザレスの許しも出たしやるしかないか!早速おれ達は、その空賊の事を調べ始める。

 ゴンザレスはギルドに行き、すぐに資料をかき集めてきてくれた!

 そうこうしている内に、子供も起きてしまう!流石に言葉等は分からないようなのだが、とりあえず食べられそうなものをあたえてみると……またしても一瞬のうちにたいらげてしまった!

 それからその子はキルルに任せ、おれ達3人で測定器を盗んだ空賊団を調べていくと……いくつか分かった事がある!

 

 獣王空賊団と言う空賊で、船員はみんな獣人みたいだ。まぁまぁの空賊団らしく、船長はライオンの獣人で賞金首!額は4000万ベル!

 この空賊団には他にも、何人かの賞金首がいるようだ。

 幸いにもコイツらのアジトは、ここクラウドから程近くリベルタなら半日で着く場所だ!1つの島を丸ごとアジトにしているらしく、まるで要塞のような島となっているようだ。

 その為空軍等も、なかなか手が出せないらしい。

 

 「これだけ分かれば十分だよな?さっさと潰しに行こうか!アタイのバラの餌食にしてやらなきゃな!」


 早くも1人、ヤル気満々なベティーなんだけど……目的が変わっちゃってるんですが?おれ達は獣王空賊団を、潰しに行く訳じゃないからね?!最新の測定器を頂きに行くんだよ!?おれが確認の為にベティーそう告げると、分かってるって!とは言ったのだが……全く当てにならない!!この人は何を仕出かすか分かったもんじゃない。

 寧ろベティーなら1人でも獣王空賊団を潰しかねないので、おれはベティーの暴走を止める役になりそうな気がする。

 まだお昼前なので、今から行っても夕方には帰ってこれるだろう!

 キルルを呼び、今回はおれ達3人で獣王空賊団のアジトへと乗り込む事に!その間ゴンザレスには、子供の面倒を見てもらう事になった。


 早速支度を済ませーー最新測定器を頂くべく、リベルタに乗り込むおれ達!ゴンザレスと子供に暫の別れを告げ、いざ!出航!!

 クラウドを飛び立ってまもなくベティーからそう言えばと、質問を投げ掛けられる。


 「この船の航空士は誰なんだ?この間のエッグ島に行った時も不思議に思ってたんだよ!」


 まぁそうなるよね!ちなみに航空士とは、簡単に言っちゃうとーーコンパスや磁石等を使っての作図や計算をし、目的地まで導く人の事。

 おれやキルルにそんなスキルは無い!そしておれは元異世界人なので、便利なナビと言う存在を知ってしまっている!

 衛星を創り、リベルタにはナビまでも搭載しているのだ!だから迷う心配もないのだが、この世界には未発見の島も多いので流石に細かな場所まで案内してくれるような物は創れなかった。

 なので近くまでは行き、あとは自分の目で確認するしかないのだ。

 キルルにもナビやGPSの説明をした事があったのだが、理解出来なかったんだよなぁ……それはベティーにも言える事だったので、ナビの使い方だけはきちんと理解してもらった。

 

 「本当にお前のスキルは何でもアリだな……」


 呆れてものを言うベティーだったが、これは楽だと絶賛していた。

 それもその筈!この世界ではまだ、航空士がいなければ空を飛ぶ事など出来ないのだから。

 新たに発見した島等は、今後バージョンアップすればナビにも出るようにしてある。最近は何でもアリなこのスキルに、自分でも少し呆れる事もある。でもおれは宝の持ち腐れにする気など無く、今後も大いに活用させてもらう!

 その為にも前世の記憶は、今後も活かしていかなきゃな!


 そうこうしている内に、獣王空賊団のアジト近くまで到着した。一旦船を止め、3人で作戦会議を始めると……ベティーがうずうずしている。

 獣王空賊団のアジトは要塞のような建物があるだけの島で、大した広さもない小さな島だ!まずはあの要塞を、どう突破するかなのだが……


 「手当たり次第暴れればいいだろ?!」


 ベティーは完全に目的を忘れているんだけど、逆に丁度いいのかも?ベティーに暴れてもらっている間に、おれとキルルで要塞の中へと侵入して最新測定器を探せば……

 

 「じゃあキルルもベティーさんとレベル上げするから、ウィルは測定器を探しといて!」


 ・・・え?

 

 なんでキルルまで!?キルルは最近、ベティーに毒されている気がする。しかも空賊団相手に、レベル上げしたいからって……

 おれはそれを許していいものなのか迷うのだが、可愛い妹の頼みなので断れなかった。つくづくおれは、キルルに甘いようだ。

 そんなわけでこれが作戦と言えるのかは不明だが、一応各自やる事は決まった!あとはアジトに乗り込み、測定器を素早く頂くのみ!

 ベティーが一緒にいるとは言え、空賊達に囲まれたキルルを想像するだけで心配になる。なのでおれがいち早く、測定器を見つけ出さなければならない。

 1人でそんな事を考えつつーーキルルもベティーも待ちきれない様子なので、このままアジトへと突っ込んで行く!!

 どうせ暴れるし敵を引き付けるのならば、最初から目立った方が良いだろうと思い正面から乗り込んだのだ!

 

 早速警報が鳴り響く。おれ達は正面の飛行船置き場に堂々と船を停め、始めにキルルとベティーが船を降りる。

 船を降りる際、ベティーがおれに一言……アタイ達の名を知らしめてやると。 

 どうらや白銀の空賊団と言う名を、空賊業界に知らしめようとしていらっしゃるご様子。

 わざわざおれ達からそんな事しなくても……おれが口に出すよりも早く、2人は船を降りて行ってしまう。

 おれは諦めて窓から様子を伺うと、既に10名程の獣人達に取り囲まれていた。

 

 「アタイ達は白銀の空賊団!テメーらを潰しに来てやった!!感謝しろ!」


 そう高らかに宣言するベティーに対し、ゲラゲラと笑いだす獣人達……あ!これはヤバいやつだと、おれが思った瞬間!突然地面からバラのつるが生え、この場にいた獣人達が縛り上げられる!!棘のあるつるが体に食い込み、皆さん血まみれに……ベティーの事を笑ったらダメだよね!

 すると要塞の中からどんどん獣人達が出てきたので、これに便乗しおれは透明になって要塞の中へと侵入するのだった。

 流石要塞と言うだけあって、分厚い鉄で覆われている……中に入る為の門は、大砲を撃ち込んでも壊れないであろう物となっていた。

 

 要塞の中は迷路のように要り組んでおり、絶対迷子になると確信する。手っ取り早く誰か捕まえて聞き出す事にしようと思い、辺りに誰かいないか探すのだが……こんな時に限って誰もいない。

 おれは透明化を解き迷路のようなアジトを、勘頼りに進んで行くと大きな扉が目に入る!

 ここは絶対怪しい……そう思い勢いよく扉を開けると、中には1人だけ獣人の男がいたのだ!

 やっと案内役が見つかったと、心の中で喜びつつーー俺はベティーを真似て地面からつるを生やし、そいつを縛り上げた!

 縛り上げたつるからは無数のナイフが生え、獣人に突きつけられている。ベティーと全く同じでは面白くないので、棘の代わりをナイフにしておいた。

 獣人が変な気を起こさない限り、血を見なくて済む。


 縛り上げられた獣人は何が起こったのかすら分かっておらず、突きつけられている無数のナイフに顔が青ざめていた。

 少し怯えすら見える獣人の男が、震えた声で話しかけてきた。


 「お、お前は何者だ!?目的はなんだ!!?」


 この状況でもお前呼ばわりか……まぁいい!おれは早く目的の測定器を頂戴できれば文句もないし。


 「おたくらの空賊団が最新の測定器を持ってる筈なんだけど!?それを貰いに来た!!それさえ手に入ればさっさと帰るから測定器のある場所まで案内してほしいんだけど!?」


 おれの目的を伝えると……微妙な顔をしていたので、全てナイフを刺さるか刺さらないか位まで近づける。

 すると獣人の男は、すぐに案内します!!と言ってくれたので、下半身だけ自由にして案内させようとするとーー


 「実はここに置いてあります!」


 そう言ってすぐに測定器を口に咥えて持ってきてくれたのだ!おれにはこれが本物なのか分からないので、そいつも連れてキルルやベティーの所まで戻ることにする。決して戻る道が分からないからではないよ!?ただ万が一偽物だった時の為にね!

 とりあえず獣人には入口まで前を歩けと言って、縛りナイフを突きつけたままの状態で2人の元へ戻ると……入口では悲惨な状況となっていたのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ