No.6
ーーおれが思っていたよりも遠かった為、部屋数を増やしておいて正解だったと思う!舵を交代でとり、あとはリビングで寛いだりしているだけ。
思った以上に空の旅は暇な為、リベルタにも何か遊び心を取り入れたいと思うおれだった。これは今後の課題だな!
そんなこんなでクラウドを出て2日目の朝、おれ達はばつ印の付いた付近に到着する。
ここからはジェットエンジンを通常のプロペラ機に切り替え、4人で窓から何処かに島がないか探す。
窓から見えるのは……青い空と白い雲だけで、島一つ見当たらない。
「なんか見つかった?」
おれの質問に、沈黙で答える3人……お昼になっても島一つ見当たらない為、一旦昼食がてら休憩する事に!
おれ達はリビングに移動して、昼食を食べながら話をする。
「おいゴンザレス!本当に目撃者なんて居たのか?」
「その為の調査だろ?」
早速ゴンザレスに食って掛かるベティーに対し、冷静に答えるゴンザレスなんだけど……手に持つコップが小刻みに震えている。
ゴンザレスもなんだかんだ言ってベティーが恐いようで、おれはゴンザレスに親近感を抱いてしまう!
見た目はイカツいおっさんなんだけど、見た目美しいエルフのねーちゃんの中身を知ってしまうとねぇ・・・
昼食も終え、午後の探索を開始する!
・・・午後になっても窓から見えるのは、青い空と白い雲だけ。
段々と日も沈み、空が青からオレンジ色に染まる頃……
「あった!!島が見えるよ!!」
そろそろ今日の調査は打ち切ろうと思い始めた頃、キルルが声を上げる!おれ達は急いでキルルが覗き込んでいた窓へと向かい、その窓から辺りを探すと……大きな雲の上に、ポツンと浮かんでいる島が見えたのだ!
夕日に雲が照され、まるでオレンジ色の海に浮かんでいるような島だった!!
これからすぐに日も落ち夜になってしまう為、島への上陸は明日の朝から行う事にした。
おれ達は夕食を食べながら地図を広げ、キルルが見つけた島が地図には無い事を確認する!
やはり未発見の島らしく、地図にも記載されていない!
島に人等もいなければ、島の名は発見者が決められる!既に島には人が住んでおり、島の名前も決まっていればそのままそれが島の名として地図に記載される事になるのだが。
「誰もいなかったらキルルが島の名を決めていいの??」
そう言う事になるな!とゴンザレスからの答えを聞くなり、早速島の名を考え始めてしまうキルル……万が一人が既にいて島の名も決まってたら……なんて言おうと思ったのだが、キルルの嬉しそうな顔を見ていたら何も言えなくなってしまった。
ゴンザレスとベティーを見ると、どうらや2人もおれと同じ考えだったようだ!
おれ達は互いに見合って肩を竦める。そしてそれぞれの部屋へと戻り、眠りにつくのだが……今夜も楽しみ過ぎてなかなか眠れないので、睡眠魔法を自身にかけようかと思ったところで、コンコンと扉をノックする音が聞こえる。
静かに扉が開きーー
「ウィル・・・起きてる?」
どうらやキルルも興奮して眠れないようだ。
「キルルも眠れないのか??」
おれが起きていると分かると、すぐにおれの寝ているベットに潜り込んでくるキルル。話を聞くと、島の名を考えていたら眠れなくなったらしい!
それに明日からの探索が、楽しみで仕方ないようだ。
それから2人でこんな生物がいたら!とか、お宝があったりして!?等と話をしながら、眠りにつくのだった。
「ガキ共、朝だよ!いつまで寝てんだ?さっさと起きな!!」
そう言うなりベティーは、おれ達のシーツを剥ぎ取り無理やり起こす!
小学生を無理やり起こすお母さんか!!?あと5分……なんて言いたくなったのだが、ベティーの表情が目に入るなり飛び起きてしまった。
こんな恐いお母さん嫌だよ!見た目だけは最高なんだけどね……おれには萌えないギャップだよね。
おれ達が起きた事を確認するなり、今度はゴンザレスを叩き起こしに行くベティー。
おれとキルルはリビングに向かおうとしたところで、ギャーと言うゴンザレスの叫び声が……ベティーは一体、どんな方法でゴンザレスを起こしたのやら。
テキパキと朝食の準備をするベティーとキルル、そしておれの隣では……右微が脹れ上がり、真っ赤に染まっているゴンザレスが。
一目見てどんな起こされ方をしたのか分かる光景に、おれはゴンザレスに対し……無言で頷き、肩にそっと手を当て慰めるのだった。
「これから冒険だ!しっかり食べな!!」
朝からガッツリ系の料理に、見ただけで胃もたれしそうになる。しかしベティーの言うように、今日は待ちに待った冒険だ!
おれ達は朝からガッツリ朝食をとり、支度も終えて準備万端!
いざ!未開の島へ!!
リベルタを島へと着け、記念すべき第一歩をこの地につける!勿論最初の一歩はキルルなんだけどね!
辺りを見渡すと、後ろには海の様に広がる白い雲!足元は砂浜!正面はジャンルの様に、緑が生い茂る未開の地に相応しい場所となっていた。
空から見た限りだと殆どが正面の様なジャンルとなっており、島の大きさは20キロ位だろうか?今のところ辺りに生物の気配は無い。
早速おれ達は探索の為、緑の生い茂るジャンルへと足を踏み入れる!
ゴンザレス・おれ・キルル・ベティーの順番で一列となって、辺りに気を配りながら奥へ奥へと突き進む。
空からでは分からなかったのだがーー綺麗な小川も流れおり、自然豊かでとても綺麗な島だ!
流石ギルド長と言ったところだろうか?ゴンザレスは慣れた手つきで、この島の簡単な地図を制作しながら足を進めている。
危険等がなければきちんと測量等も行い、新たに地図へと記載するようだ。
ーーそれからおれ達は丸1日かけこの島の探索を行うーー
特に生物等も生息しておらず、ゴンザレスからも危険は無いとの判断が下される!
明日の朝からもう一度見落とし等が無いか調べる事にし、本日の探索は終了となる!
リベルタへと戻り……夕食を食べながら4人で話をする。
話題は島の名となり、キルルは難しい顔をする。
「まだ決まらない!明日もう一度島を見て決める。」
いくつか案はある様なのだが、まだこれだ!!と言う名が……との事だ!別に急いで決める必要もないし、明日じゃなくてもいいと思うんだけどね。
そんな感じで1日目の探索が終わる。
ーー翌日も朝から探索を行い、昨日と変わらず順調に進んでいく。
島の中央付近に差し掛かった所で、キルルが何かを見つけて走り出す。
おれ達もあとを追い、少し開けた場所に出ると……キルルがポツンとかがみこんで何かを見ていた。
おれ達もキルルの上から覗き込むと……70センチ位の丸い石がある。
「なんだこの石?これがどうかしたのか??」
するとゴンザレスがおれ達を押し退け、その石を食い入る様に見つめるーーいろんな角度からその石を調べ始めた!そして一通りその石を見終わると……
「キルル!これは大発見かもしれないぞ!!これは何かの卵の化石だ!!」
興奮した様子で、キルルに語りかけるゴンザレス!おれにはただの石にしか見えなかったんだけど、どうやら化石化した卵だったようだ。
何の卵か聞くのだが、流石にそこまではゴンザレスにも分からないとの事。
「ウィルのスキルで化石になる前に戻せない?」
キルルの大胆発言により、雷にでも撃たれたかの様に固まるゴンザレス。
そんなゴンザレスを放置し、ベティーも何の卵か気になるようで……おれにやってみろ!と促すので、物は試しとばかりにやってみる!!
化石はキラキラと輝き、どんどん本来の姿に戻っていく!輝きが収まると、黒に白い斑点模様の卵になった!
キルルは嬉しそうに卵を抱き抱え、この卵を育てて自分のペットにすると言い出した。
まだ何の卵かすら分からないのに・・・気持ち悪い生物だったら、即この島に返すと約束をして育てる事を了承する。
作業も話も終わった頃になって……
「そんな事をしてはいかん!!万が一危険生物だったらどうするつもりだ!?」
どうらや1人時が止まったままの人物がいたようだ!今更そんな事言ってもねぇ……おれは無言で、嬉しそうに卵を抱き抱えるキルルを指差す!
ここで初めてゴンザレスは、化石から元の卵姿に戻っている事に気付き・・・何してくれちゃってんだぁ!!!なんて言い出すのだが、やっちゃったもんは仕方ない。
それにあんなに嬉しそうにしているキルルに対し、元に戻せ!なんて言えるんならどうぞ?!と言いながらゴンザレスを押し出すと、黙り込んでしまった。
「まぁやっちゃったもんは仕方ないか!」
このおっさんはキルルにも弱いようだ。おれもベティーもジト目でゴンザレスを見ると……俺には言えない……と残念な一言だった。
それから調査を再開し、その後は特に何事もなく終了する!
更に翌日から測量等も行い、1週間程度で調査を終える。
おれ達はクラウドへゲートを使って戻り、家で寛ぎながら調査報告を纏める為の会議を行う。
まずは島の名を決めなくてはならない!卵に夢中のキルルに、島の名が決まったのか確認すると……
「エッグ島!!」
いやいやいや!それでいいのか!?何の迷いもなく、即答のキルル。
まぁ島の名を決める決定権はキルルにある為、誰も文句を言えないのだが……島の名を聞き、報告書を纏めていくゴンザレス。
この報告書には卵の存在を、伏せておく事にするそうだ。そもそも化石を元の姿に戻す事事態あり得ない話なので、書く必要も無いと豪語する。
ゴンザレスは報告書が出来上がるや否や、すぐにギルドへと向かって行くのだった。
残ったおれ達3人は、キルルの抱き抱える卵を見つめ……何の卵なのかの話となる。
「キルルは可愛い動物がいいなぁ!」
卵から可愛い動物が産まれてくるのだろうか?そんな事を思っていると、ベティーは番犬的な何かがいい等と言い出す。
それも卵から産まれてこないだろ?そして何故かおれの理想も答えなければならない状況となるのだが、おれはそもそも飼える動物だったら何でもいいんですけど……気持ち悪い生物以外って事で!
なんて話をしている内に、またしてもゴンザレスが慌てて家に駆け込んできた!
今度は何事かと思ったらーーおれ達は今、各国のギルドで話題となっているらしい!この間の空賊を簡単に倒してしまった為、おれ達の懸賞金も上がっているとの事だ!
あの黒ブタの事だろうか?あんなの誰でも簡単に倒せるだろ?なんて思っていたら、彼も一応は賞金首だったようだ。
まずゴンザレスは黒ブタの懸賞金が書かれた、写真付きの紙をおれ達に見せてくれた。
なになに……黒熊空賊団船長・大剣の黒熊……懸賞金3000万ベル……あれで3000万?!懸賞金の基準ってなんなの??あんなので3000万とか笑っちゃうけど??
黒熊空賊団は小規模な国の一般人を狙う事が多く、やり方が汚かった為に3000万の値が付いたらしい。
「これが新たに発行されたお前達の手配書だ。」
ベティーも一緒になって机に置かれた手配書を覗き込むと・・・
ウィル・マイスター 懸賞金 6000万ベル
キルル・マイスター 懸賞金 4500万ベル
空賊船には右目に傷があり、傷のある方だけ白目の空賊旗が確認されている。
まだ白銀の空賊団って名までは知られていないようだ。
ちょっとだけ上がったなぁ!!正直自分の懸賞金なんてどうでもいいんだけどね!今更いくら上がろうが、結局はお尋ね者に変わりないし。
「キルルはこの写真が嫌!もっと可愛く写ってるのにしてほしい!」
キルルの問題は写真だけのようだ。そんなキルルの発言に対し、ベティーもキルルはもっと可愛いから大丈夫だよ!なんて言い出す始末。
賞金首なのに全く気にも止めていないおれ達に、ゴンザレスは呆れ返る。
お前達は今注目の空賊団となりつつある事だけは頭に入れとけよ!と言われ、アッサリと話を終わりにするゴンザレス。
おれ達に何を言っても無駄だろうと、諦めたようだ。
そして何故か1人、未だにおれ達の手配書を見つめるベティー……どうしたのか訪ねるとーー
「アタイも手配書に載りたい!」
・・・は?
この人は何血迷った事を言い出したんだ?何が良くて、自分から手配書に載りたいだなんて。
アタイも白銀の空賊団の一員になった訳だから、手配されたいとの事。
やっぱり少し頭がおかしいんだろうなと、おれは改めてベティーがぶっ飛んだ人だと思いしる。
名が広まればいつかは、龍の髭空賊団も食い付いてくれるかもしれない!そうなってくれれば一番いいのだが……こればっかりは何とも言えないので、地道に情報を探っていくしかないだろうと思う。
そう言えばゴンザレスはエッグ島の調査報告をしに戻ったんじゃと聞くと、もう報告は終えて今日は帰ってきたらしい。
随分適当なギルド長だよなぁ。今のところ新たなクエストも無いようで、クラウドで大人しくしているしかないようだ。
それから1週間の時が過ぎーーいつも通り、おれ達は3人で修行を行っている。
キルルのスパルタ修行にも、平気な顔でついてくるベティーには流石の一言。いつぞや話をしていた、最新測定器はいつゴンザレスが持ってきてくれることやら。
今自分がどの程度なのか?魔力はどのくらいあるのか?等色々と知っておきたいのだが……今日ゴンザレスが帰ってきたら催促してみようと思う!
そんな感じで平和な日常を過ごすおれ達……今日の修行も終え、家に戻るとーーキルルが大事に暖めていた卵に、ヒビが入っているではありませんか!!
もうすぐ産まれてくるのだろうか?おれ達は卵を中心にそっと見守る。そうこうしている内にゴンザレスも帰宅し、夕食を食べる事も忘れて卵を見守り続けると……少しずつヒビ割れも大きくなっていき、モゾモゾと卵も動き出す。
「もう少しだよ!頑張って!!」
と声を出して応援するキルル!本当にあと少しで姿が見えそうなんだけど、見えないこのもどかしさ!
日付を回る頃……遂にパカッ!と言う音と共に、卵の中身が姿を現す!!
おれ達はその姿を見た瞬間……驚愕の声を揃って上げる事になるのだった。