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No.5

 ーー自宅にてベティーからのお礼として、手料理の夕食を振る舞われたまではよかったのだが……ベティーは酒に酔っているわけでもないのに、両手をテーブルにバン!と叩きつけ、そのまま立ち上がり高らかに宣言する!!


 「よし!決めた!!アタイもガキ共の白銀の空賊団に入るわ!!」


 ・・・はあああああ!????


 ムリムリムリ!!こんな恐い人と、一緒に空賊やるとか嫌だ!そこら中の空賊に片っ端から喧嘩吹っ掛けそうだし、おれ達の命がいくつあっても足りない気がする!

 ゴンザレスにとっても予想の斜め上をいく発言だったようで、口を大きく開けたまま目が点になっている。

 そりゃそうなるよね……それにギルドの受付はどうするつもりなのか?一度言い出すと聞かない性格っぽいだけに、慎重に発言しなければならない。

 きっとキルルも嫌な顔をしているだろうと思い、キルルの方を見ると……何故かベティーに抱きつきーー


 「ベティーさんがいてくれると助かる!」


 ・・・ヤバい!!これは非常に不味い展開になってきた。

 キルルとベティーのタッグに、口で言い負かせる自信がない!ましてや今現在おれにとって、唯一の味方となるであろうおっさんは……放心状態な上に、全くもって当てにならない人物だ!

 先程ベティーに言い負かされたばっかりだしーーと言うよりも、全ての原因はこのおっさんにあるんですけど!!

 何か良い手が無いか……


 「どーなんだよ?ダメなんて言わねぇーよな?!船長さんよ!?」


 これは脅しだろ!?寧ろノーなんて言った瞬間……おれはこの世に居ない気がする。自然と答えはイエスしか残されていないのだが、確認の為に一応聞いておく!


 「ギルドの仕事は……?それにわざわざ自分から空賊なんかに落ちぶれなくても……」


 これが今のおれに出来る精一杯の抵抗だった!ハッキリ言って、これ以上は恐くて言えません。ゴンザレスからの援護射撃を期待したのだが、おれの期待は敢えなく撃沈する……今だに放心状態で、本当に使えないおっさんだ!

 

 ベティーはおれの発言を聞き、ゴンザレスに対してアタイ今日でギルドの受付辞めるからの一言。

 

 そして・・・


 ギルドの受付なんてやっていても、つまらないし退屈だと言い出し……空賊に落ちぶれても、おれ達と空賊やってた方が刺激的で面白そうだから別にいいと!


 やはりおれの予想通り、一度決めた事は絶対に曲げないタイプの人だった。

 こうなってしまうとおれでは、もうどうする事も出来ない。


 「分かりました。キルルも喜んでいるし、これから宜しくお願いします!」


 ベティーはニッコリと笑い、キルルの頭を撫でていた。この人は普通にしていれば、めちゃくちゃ美人なのに勿体ない……悟られないように、心の中でそう呟くのだった。

 話が纏まったところでーー


 「おいベティー!ギルドの仕事場はどうするつもりだ!?」


 ゴンザレスはようやく我に返り、今更そんな事を言い出すのだが……時既に遅し!ベティーは何時でもギルドの仕事を辞められるように、辞表を常日頃から持ち歩いていたのだ!

 先程ゴンザレスが放心状態となっていた間にーー辞表は既に、ゴンザレスの手に握らせていたのだ。

 ベティーはゴンザレスに、自分の手を見ろと顎で差す。

 視線を自分の手に落とすと、両手で受け取ってしまっている辞表に気付くゴンザレス。

 え?!みたいな顔をして、ベティーと辞表を交互に何度も見ていた。

 やっぱりこのおっさんは、ただのアホだな……


 ーー結局辞表を無理矢理受け取らせたベティーは、晴れて今日から白銀の空賊団の一員として仲間になった!!

 ベティーは元々、名のある冒険者だ!自信のレベル等を教えてくれた。



 名前: ベティー・ウィッチェル・ノーバート


 年齢:      ??


 レベル:     79


 スキル:     蕀薔薇(ローズウィップ)  何処からでもバラを咲かせ自在に操ることが出来る


 魔法:      異空間収納(中) 闇魔法(B) その他(C)


 魔力:      206


 剣技:      (D)



 レベル79か!凄いのかな??おれはこの世界の平均的なレベル等が分からない為に、全く検討がつかない。

 それとおれもキルルも知らない項目が!魔力ってなんだろう??おれ達の時はそんなの無かった気がするんだけど……


 「魔力てなんですか?キルル達の時は無かった気がするけど?」


 キルルも気付き、気になっていたみたいだ!それについてはゴンザレスから説明を受ける。なんでもおれ達が使用した測定器は古い物だったらしく、魔力までは測れなかったみたい。

 どーせならおれも魔力を測ってみたい!!とゴンザレスに言うと、今度新しい測定器を持ってきてくれる事になった。 

 自分の魔力がどのくらいなのか楽しみにしつつ、おれはふと気がついたことがある!何故かキルルがベティーにベッタリなのだ!!!

 何故だ!??そこはおれのポジションの筈なのに!!


 「ウィル?なんでそんな微妙な顔してるの??」


 「キルルがやたらベティーさんにベッタリだなぁと……」


 すると大きなため息と共に、いい加減妹離れしてなんて言われてしまう。そんな事言われてもなのだが……おれの可愛い妹が、この時少し遠くに感じてしまう。 

 そんな事がありつつ、この日はこれにてお開きとなった。

 

 ーー翌日はゴンザレスだけが仕事に向かい、俺達はこれからどうするかの話し合いをするーー


 「ゴンザレスからクエストがあるまで基本に暇なんだよなぁ」


 「お前達は修行等やっていないのか?」


 余計な事を言ってしまったかもしれない……万が一怖いベティーと修行なんて事になったら……想像しただけで身震いがする。

 一緒に修業しなくてすむ、何かいい方法はないか?


 「ベティーさんは剣が苦手だよね?キルルが剣を教えるから、他の事を教えてください!」


 キルルがベティーにとんでもない事を言い出してしまった!!何故わざわざこちらからお願いするんだぁ!!

 心の中でそう叫ぶのだが、そもそもベティーがキルルから剣を教えてもらうなんて事ないだろう……


 「本当かい?助かるわぁ!アタイ位になると教えてもらう機会もなくてねぇ!」


 はい!これで逃げ出す事が出来なくなってしまった上に、確実に修行に付き合わされてしまうだろう。

 まぁ強くなる分にはいいんだけど、ベティーがなぁ……そもそもおれが船長なんだから命令してもいいのかな??

 この人の事だからきっと、実力を示してから言えとか言いそうだよなぁ。


 「じゃあ早速始めましょう!!キルル、ベティーさんとの修行が楽しみです!」


 「アタイもさ!!宜しくねキルル!」


 なんかこの2人仲良過ぎだよなぁ……おれ達は湖の辺りまで行き、まずは剣の修行から始める事に!剣に関してはキルルが誰よりも強いので、キルルが先生をする。

 木刀を使いキルルとベティーが互いに向かい合って、構えから教えて始める。

 おれも見ているだけでは修行にならないので、新たにスキルを使った攻撃等を開発する。

 おれのスキルは想像力次第でなんでも出来るチートスキルな訳だし、空も飛べれば新たな魔法まで作れる。

 ただいざと言う時にすぐ使えなければ意味がないので、普段からなるべく使い馴れておかないと。

 おれは様々事を試していく!どーせ空賊だし黒をメインとした魔法を考える……黒い炎、氷、風、雷……やっぱりどれも簡単に作り出せた!

 それもおれが魔法を解くまで消える事がない、どれもこの世界に存在しない魔法ばかりだろう。

 次におれは自分の武器を創る事にした。やはり元日本人なだけあって日本刀にしてみた。刀身まで黒い、怪しい刀に仕上がった。強度はダイヤモンドよりも固く、何があっても刃こぼれすらしないように。

 

 「ウィル!キルルも自分に合った剣が欲しい!」


 「アタイのも作ってくれ!」


 おれは作業に没頭していた為、横で見られていた事など全く気付かなかった。

 2人がどんな剣がいいかの要望等を聞き、早速創ってみた!

 キルルは背中に背負うソードを創った!勿論黒が主体となっており、とても軽くて強度もバッチリ!

 そしてベティーの剣は2本用意しており、少しイビツだ。こちらも黒を主体としているのだが、問題は刀身の形だ。大きく曲線を描いており、まるで三日月かのような!外にも内にも刃があり、どちらも切れ味抜群!

 相手が盾等を使っていても、斬り込めるような物となっていた。

 こちらは腰に装備する物となっていた。

 出来上がった剣をすぐに2人へと手渡すーー


 「軽い!!それにキルルにピッタリだよ!!」


 「そうそう!アタイはこんな形のが欲しかったんだよ!」


 2人共かなり嬉しそうにしている。ちなみにこれ売ったらいくらくらいになるか聞いてみると、ベティーにメチャクチャ怒られてしまう……


 「お前はバカか?こんなものが世の中に出回ったら大変な事になるだろ!!後にも先にもこんな剣を作れる奴はいない。値段なんて付けられるような物じゃないんだよ!!」


 いくらお金を出しても買える物ではないほどの物らしいく、ホイホイと創っていい物じゃないみたい。

 そこまで凄い物なのかと思ってしまうのだが、ベティーが言うんだからそうなんだろうな。

 そんな事もありつつ、修行を終え家に戻るとーー何故かベティーまで、おれ達の家に一緒に入ってくる。

 ベティーの家は向かいにあるんですけど?


 「アタイも一緒に住むわ!部屋用意しろ。」


 はあぁぁ??!!!せっかく向かい合いに家まで創ってやったのになんで今更!?聞けば料理等はベティーがやってくれるとの事で、どうやらちゃんとおれ達が飯を食べているか等が気になるようだ。

 実は面倒見がいいようで、意外と家庭的だったようだ。

 やっぱり喋り方とかさえ何とかすればメチャクチャいい女なのに……本当に勿体無い人だなぁ。

 おれが新たに部屋を用意してる間に、ベティーとキルルで料理を作ってくれていた。キルルもベティーから料理を教わる事が嬉しいようで、楽しそうにしている。

 母親のような存在になりつつあるようだ。そんな光景を微笑ましく思いつつ、ソファーで寛いでいるとーー


 「ただいまぁ!!」


 なんて言いながらゴンザレスが家に入ってくる……


 「ゴンザレスの家は向かいだろ!?」


 固いこと言うなよぉ!なんて言いながらおれの横に座り、一緒に寛ぎ始めるゴンザレス。どいつもこいつも家を創った意味ないじゃん!!

 そんな訳で今夜も賑やかな食卓となる。おれは文句を言いつつも、心のどこかで賑やかな食卓を嬉しく思うのだった。


 ご飯を食べ終わるとーーキルルとベティーが2人してゴンザレスに、今日おれが創った剣の自慢を始める。

 嬉しそうに2人して見せびらかし、ゴンザレスもまじまじとおれの創った剣を鑑定していた。


 「ウィル!お前こんなの創っちゃ不味いだろ?!」


 やっぱり?ベティーに続きゴンザレスまで言うのだから、今後は創らないようにしなければ。と思った側から、俺にも作ってくれ!と言い出すゴンザレス。

 1人だけ仲間外れは可哀想なので、ゴンザレスにも要望を聞き創って上げた。

 背中に背負うロングソードで、こちらも黒が主体だ!見た目に反して軽めで、こちらも強度は抜群となっていた。

 皆して自分の剣を、ニヤニヤしながら手入れをし始めてしまった。

 喜んでくれたのは嬉しいけど、何もそこまでしなくても……まだ使ってもいないのに。

 すると急に手入れの手を止め、何か思い出したように持っていた鞄をあさり始めるゴンザレス。


 「忘れてたんだが、新たなクエストだ!」


 そう言ってゴンザレスが取り出したのは、1枚の地図だった。机に広げられた地図を見ると、1ヶ所にばつ印が書かれている。

 これがどんなクエストなのか聞いてみると、最近ばつ印の辺りで新たに島が目撃されたとの事!今現在その辺りに島は確認されておらず、未確認の島な可能性が高い。

 生物が生息しているかすら分からないのだが、未確認の島だと危険も伴うらしいのだ。万が一危険生物等がいた場合、直ちに立ち入り禁止区域になる。

 

 「遂に冒険らしい冒険クエストがキタァー!!」


 まだ誰も知らない島に、最初におれが足を踏み入れる事になるわけだ!一気にテンションが上がるおれ達!キルルもベティーも冒険と聞き、ワクワクした表情を見せる!!するとゴンザレスが、今回は俺も同行すると言い出した。

 空賊船にギルド長が乗るのは不味くない?と言ったのだが、どうせ船を降りるまで顔は出さないから大丈夫だと言い切る。

 ゴンザレスがそれでいいならおれ達に文句は無いのだが、何故急に同行する気になったのか??


 「ベティーばっかりズルいだろ!!」


 どうやら自由にやっているベティーが、ただ羨ましかっただけのようだ……明日の朝からばつ印の辺りに向けて出発する事になり、おれは2人乗りとなっている自由号(リベルタ)へ向かう。今回は4人乗りにしなければ!と言っても大きさはそのままで、部屋数を増やすだけなんだけどね!

 まぁ部屋数を増やしたところで、どーせ使ってもらえないんだろうけど。準備しとくに越したことはないからいいんだけどね。

 ついでに大砲なんかも装備し、より空賊船らしくしておいた。

 家に戻り明日の準備を済ませ、ベットに入り寝ようとするのだが……眠れない!楽しみ過ぎて駄目だ!!しかし寝なければと思い、睡眠魔法を思いつき試してみると……爆睡だった。

 翌朝自分でもビックリするくらいぐっすり眠れたら事により、体調も万全のおれは気分も上がる!

 皆は若干寝不足のようだが、それでもいつもよりテンションが高い。おれ達はベティーとキルルが作ってくれた朝食を済ませ、未発見の島を目指しリベルタに乗り込む。

 

 「いざ未発見の島に!出航!!」


 船長のおれの掛け声と共に出航するリベルタ!普通に行けば1週間程度で到着出来る場所らしいのだが、リベルタにはジェットエンジンがある!

 これを使えば2日もあれば到着出来るだろう。早速ジェットエンジンに切り替え、高速で向かうことに!

 これに驚くゴンザレスとベティー!ゴンザレスは知ってはいたが、実際に体感するのは初めてなのだ。

 2人してあり得ないとぼやいていたが、敢えて聞かなかった事にする。こんな事で一々驚いていたらきりがないですよ?おれは元異世界人で、なんでもありの存在だからね!!

 勿論リベルタには透明化の魔法をかけており、誰かに見られる心配もない。

 そんな訳でばつ印の空域まで、順調に船を進めるおれ達なのであった。



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