No.2
まずはここから逃げ出すにしても武器が必要だろう。
幸いにもキルルは剣の腕前はピカイチだし、まずは剣を用意することにした。
今おれ達が入れられている檻に、おれは両手を当て『創造主』にて剣に変えてしまう!
この時点でキルルは目を見開き、驚いて声も出ない状況。早くも口をパクパクさせ、おれにどう言うことか説明を求めそうになるがーーおれが両目を細めてキルルを見ると、約束を思い出したらしく両手で口を塞ぎ押し黙る。
牢屋の鉄柵もスキルを使い、何も無かったことにしてすんなりと出る。
牢屋を出ると左側に上へと行く階段があったのだが、その階段を上がって行っても見つかってしまうだけなのでーーおれは目の前の壁に下へと下る階段を創り、そのままキルルの手を引いて下って行った。
暫く階段を下っていると島の底までたどり着き、下には雲が見えた!辺りは暗く、おれの読み通り今は夜だった。
直ぐにおれは土を使って飛行船を創り出し、飛行船へと飛び乗った。
キルルと2人船内に入り操縦室へと足を運び、そのままモルダ国から離れるべく出発したのだ!
おれの生み出した飛行船は2人しか乗らないこともあり、全長20メートル位の小さな物にしておいた!
前世の記憶も駆使してスピードが出せるようジェットエンジンを搭載し、この世界ではあり得ない飛行船に仕上がっていた。船内は通常ガスが入っている部分まで部屋となっており、とても広く設備も充実させておいた。
今は逃走中で操縦室から離れられない為、安全な場所に着いたらキルルを案内して驚かせようと思っていたのだがーー
「ウィル……もう質問してもいいの?」
脱出するまでは質問は無しと言う約束をしっかり守っていたキルルだが、もう我慢の限界とばかりに聞いてきた。
「そう言えばそうだった!とりあえずもう質問してくれてもいいよ?」
おれは軽い気持ちでそう言うとーーキルルがマシンガンかの様に、おれを質問攻めしてくるのだ!物凄い質問の数でおれが答えるよりも早く次々と質問がくるので、一旦キルルを落ち着かせ1つ1つ質問してくれるよう頼む。
「本当に貴方はウィルなの?この力は一体なに?!」
そうきたか……本物か疑われるのは、兄として少し悲しいのだが……おれは本物のキルルの兄ウィルだと言うことをまずは答え、おれが生まれ持ったスキル『創造主』についても説明する。
本来であれば実の妹キルルにすら話すべきでないスキルなのだが、ここまでやってはもう誤魔化し様がないので正直に全てを話した。
おれのあってはならないスキルを聞き、まるで雷でも落ちたかの様な表情で言葉を失うキルル……今まで黙っていたことも謝っておいた。
キルルは首を左右に振り、謝らなくていいと言ってくれたーー
「お父さんもお母さんもウィルのスキルを話さない訳だね。」
おれのスキルを聞き、逆に府に落ちたと言うキルル。
今までおれのスキルは誰にも見せていなかったので、ある日キルルは父さんや母さんにおれのスキルがなんなのか聞いた事があったそうだ。でも結局教えてはくれなかったらしい。
まぁそれはそうだろう……なんせおれ自身が誰にも話すな!人前でスキルは何があっても使うな!と口酸っぱく言われ続けていたからな……
そして今後の事をもう一度、キルルとよく話し合うことにした。
おれは元々冒険者になりたかったから良いのだが、キルルは違うだろうーーこの先やりたいことも出来ず、冒険者にさせてしまうのは少し申し訳なく思ったのだ!
今ならまだ何処かオルガの手の届かない町でキルルを降ろし、好きな事して過ごす未来もあるのだからーー
「キルルは今後どうしたい?正直に話してほしい。」
おれの言葉を聞き、難しい表情で考え出すキルル……まぁ11歳の少女に今すぐ答えを出せるような状況じゃないよな。おれはこの質問をするのが早すぎたと少し後悔したところでーー
「キルルはウィルと一緒に冒険者をやる!!これ以上家族を失いたくないし、ウィルを1人になんて出来ない。」
一瞬悲しい表情を浮かべるものの、そう決意を述べる。本来であれば俺がキルルの心配をしなければならないところで、逆におれが心配されてしまうとは……本当にしっかりした、出来の良すぎる妹だよ。
この年でもうお互い唯一の家族になってしまったおれ達……家族は一緒にいる方がいいに決まってるよな!そう思って今後は2人で冒険者を始めることに決定した!
気づけば夜空が段々と朝日を迎え入れようとしていたーーすると前方に小さな島が見えてきたのだ!とりあえず近くに寄せて見ると……島は直径1キロ程しかない小さな無人島だった。島全体がジャングルのような森で覆われており、隠れるのにはもってこいの場所だったのでーー
「あの島で少し休もうか!」
ここ数日キルルもロクに寝ておらず、疲れきっていた……そんなおれも同じ様にだいぶ疲れも溜まっており、休みたかったので島へと降下する。
飛行船が小さかったのでちょうど木々の間に隠れる様に船を停められた!
窓から辺りを見渡すが、やはり無人島の様で誰もおらず動物すら見当たらなかった。まぁ万が一船を襲われてもちょっとやそっとじゃ壊れないよう強化してあるので問題ない。
ここでおれはキルルに船内を案内する事にした!まずはキルルの部屋へと行き、ドアを開けるとーー10畳位のワンルームみたいにしており、ベット等の家具、ユニットバスだが風呂もトイレも完備しておいた!
この世界ではあり得ない位のハイテク機能となっており、キルルも見たこともない部屋に驚きを隠せないでいた!疲れきっていた筈なのに、興奮しはしゃぎ回るキルル……おれは風呂やトイレの使用法を説明して自分の部屋へ行く。
とりあえずベットに横になると……おれも疲れが相当溜まり溜まっていたのか、直ぐに寝てしまう。
おれがはっとベットから起きるとーー隣で寝ているキルル……いつの間に俺の部屋に来てベットに潜り込んだのか?キルルを起こさないようそっとベットから出て、窓から外を見ると太陽が真上に昇っていた!どうやら昼位みたいだ。
ご飯は一緒に食べる方が良いだろうと思っていたので、キッチンとリビングは互いの部屋から直ぐに行き来できるような創りにしておいた。
ただ食材まではおれのスキルでも創り出せないので、森に何か食材がないか探しに行くことにした!船のハッチを開け外へ出ると、バナナの様な果物等がそこらじゅうに実っていたのでーー今後の事も考えて魔法による異空間収納を使い、詰められるだけ確保しておいた。やはり動物等はいなかった為、肉の確保は出来なかったが仕方ない。
ちなみに異空間収納の魔法は、この世界では誰でも扱える簡単な魔法なのだ!
船に戻って料理しようと思ったのだが……ここである重大な事件が!おれは料理が出来なかったのだ!!どうしようか悩んでいた時、タイミング良くキルルが起きてきた。
キルルに状況を説明するとーー
「はぁ~ウィルはキルルがいなかったらどーするつもりだったの?」
ため息をつきながら言われてしまった・・・
先程確保した食材ならぬ果物を取り出すと、キルルが包丁を使って食べやすいようカットしてくれた!果物だしただカットすればよかったのかと今更気付き、そのくらいならおれにも出来たと反省する。
そしておれ達は椅子に座りカットした果物を食べながら、次の目的について話し合う。
まずおれ達は冒険者になると決めたので、何処かギルドのある町に行かなくてはならない!冒険者になるにはギルドで冒険者登録をし、カードを発行してもらわなければならないのだ。
何か新たな発見や、功績の残る何かをしたり……ギルドからのミッションや依頼等をこなしていく事で、ランクが上がり知名度も上がっていく!そうしたことを重ねてランクを上げ、後に後世にまでおれの名が残る様な偉業を成し遂げたいと夢見ていた。
とりあえず地図を机に広げ、今いる場所を確認する。おれ達が今いる名もない無人島から一番近い国はノウルと言う国なのだが、モルダ国が近い為に駄目だ。
ここから少し遠いのだが、インブルと言う国がある!確かこの国は数多くの冒険者達が拠点にしている国だった筈……ここならおれ達も見つかりにくいよな?
それにしても少し遠い……と言っても、ジェットエンジンを積んだこの船なら直ぐに到着出来るだろう。キルルとも相談し、おれ達の行き先はインブルへ向かうことに決まった!
ただおれ達2人共島を出たことすら無かった為、不安要素が色々とあるのだ……まずこの世界の常識等があまりよくわかっていない。
まぁこんなところでグダグダと分かりもしないことを何時までも考えていても仕方がないので、とりあえず地図を見ながらインブルへと船を動かすのだった。
ーー地図を見る限りこの辺りの筈なんだけど……
「ウィル!あそこに島が見えるよ?」
キルルが窓の外を指差しながらおれに教えてくれた。キルルが指差す方へと目を向けると、確かにそれなりに大きな島が見えたのだ。
おれはジェットエンジンを切り、普通のプロペラに切り替えて飛行し始める……こんなものが世間にバレでもしたらきっと大騒ぎになってしまう!今は目立つ事は避けなければならないのだ。
島へ近づくにつれ、数多くの飛行船が目に入る。他の冒険者の飛行船が多いのだろうーー小型船からかなりの大型船まで色々とあり、この国では飛行船を停める駐船場まで設けられていた。
おれ達の飛行船も小型船置き場へと入り空いている場所に停める。
すると1人の制服を着たゴリラみたいな獣人がこちらに向かって歩いてくるので、おれ達もハッチを開け外に出ると……
「駐船許可証か、冒険者カードを」
とゴリラの獣人に言われるのだが……そんなもん持って無いんですけど?とりあえず冒険者カードを発行してもらいにこの国を訪れた事を伝えると、仮駐船許可証を発行してくれたのだ。
あくまでも仮なので、期限が1日しか無いらしい。ギルドで冒険者登録をして、その冒険者カードを見せに来れば無期限になるとの事!ちなみに期限が過ぎると飛行船は没収され、返してもらうのに高額の罰金を支払わなければならないらしい。
なのでおれ達はギルドの場所を聞き、直ぐにカードを発行してもらうべく足を運んだ。
ギルドは駐船場を出て正面にあったので、ものの5分程度でギルドに到着する。
おれとキルルは扉を開けて一歩中へと入るーーギルド内は多くの冒険者等で賑わっていた。中へ入ると椅子が並んでいて、奥には受付カウンターがあった。右手には大きな掲示板があり、数多くの依頼やミッションが貼り出されていた!
おれ達はまず登録が先なので受付へ行き、登録の方法をギルドのお姉さんに聞くとーー
「新規の冒険者登録ですね?それでしたら2階になりますので、あちらの階段を上がって下さい。」
と丁寧に教えてくれたので、言われた通り2階へ向かう。
階段を上がるとすぐ右手にはカウンターがあり、エルフのお姉さんが座っていたので声をかけたーー
「新規の冒険者登録を2人お願いしたいのですが?」
すると何故か無言のまま、舐め回すようにおれ達を見るエルフのお姉さん。
そんなに美人に見つめれらると恥ずかしいのだが……おれは少し顔が紅くなり、体をモジモジさせているとーー急に右足に痛みが走る!おれは痛みが走った右足を見ると……キルルの左足が乗っかっていた。
直ぐにキルルの顔を見ると……お怒りの表情だ!おれが美人のエルフを前にデレデレしていた事が気にくわなかったようだ。
直ぐに我に返り、ピシャッと背筋を張る。どーもおれはキルルに弱い気がする……そんなやり取りをしていたおれ達に、エルフのお姉さんがとんでもない言葉をかけてきた。
「ガキはさっさと帰ってママのおっぱいでも飲んで寝てろ!ここはガキの遊び場じゃねぇーんだよ。」
え?え?今誰が言ったんだろう……?おれは辺りを見渡すが、この場にはおれ達しかいなかった。まさかこんなに綺麗なエルフのお姉さんがそんな……と思ったのだがーー
「聞こえなかったのか糞ガキ?!」
うん!どーやらおれの聞き間違いでは無いようだ!まぁ確かにおれ達は何処からどう見てもガキだが、ここで引く訳にはいかない。
おれ達だけで食っていくには、仕事だってしなきゃならない!ましてや帰る家も財産も何も残っていないのだから。
すると突然奥の方から何やらイカつい声が聞こえたのだ。
「ベティー!テメー、また新規の冒険者と揉めてんのかァ!?」
えぇー!?ここのギルドはどーなってんだ?!恐い人ばっかなの?イカつい声の主は巨人族の大男で、床をドシドシと音を立てこちらに歩いてきた。
カウンター越しにおれ達を見るなり、何か考えるように首を傾げるーーおれ達と言うよりは、キルルを見ているような?
「テメーはキロルの奴に似てやがるな……?」
おれ達は驚いた!母さんの名だ!でもなんで母さんの名を、こんなイカつい巨人のおっさんが知ってんだ??キルルもそう思ったようで、おれよりも先に質問をした。
「お母さんを知っているんですか??」
「やっぱそうか!懐かしいなぁ!」
笑ながらそう言って話を聞かせてくれた。
母さんがモルダの騎士団隊長になる前、このおっさんが隊長だったらしいのだ!このおっさんは母さんを入隊当時から面倒を見ていた、言わば師匠だった!時が経ちおっさんも疲れてしまい、母さんを次の隊長に指名して退職したんだとか……そして今はなんと、ここのギルド長らしいのだ!
そんな偶然あるんだなぁ……ちなみにこのおっさんはゴンザレスと言う名前らしい。ゴンザレスは懐かしい話を語ってくれた後、母さんは元気にしているかと聞いてきた。
おれ達の表情は一気に暗くなり、キルルは涙ぐんでいたーーそんなおれ達を見るなり、ゴンザレスは奥にある個室に案内してくれたのだ。
おれ達をソファーに座らせ、ゴンザレスはお茶を出してくれた……とりあえずこれでも飲んで落ち着けと言われ、出してくれたお茶を頂く。
暫くして、おれ達が落ち着いた頃合いを見計らい……
「何があった?よかったら聞かせてくれないか?」
と見た目イカついおっさんが、親身に話を聞こうとしていたのだ。
おれ達は今までの事を正直に話して聞かせる……話を進めるにつれ、ゴンザレスはどんどん怒りの表情へとなっていきーー
「あの糞大臣め!!空賊と繋がってやがったか!!しかも龍の髭だと!?」
大臣とは、きっとあのひょろいジジィの事だろうと直ぐに分かった!そして龍の髭と聞いて難しい顔をするゴンザレス……このおっさんはおれ達の話を疑いもせずに聞いてくれた。見た目はアレだが、根はイイ人なんだろう。
今のおれ達の事情を説明し、今後食っていくにも仕事もしなければならないのでここへ来たことも話す。
だけどゴンザレスもハイそうですかと、直ぐには冒険者登録をしてくれなかったのだ!みすみすキロルの忘れ形見を、危険な世界に足を踏み込ませる訳にもいかないと。
だが冒険者になるには、ある一定のレベルを越えていればなれるらしいのだ!
ゴンザレスは立ち上がり一旦部屋を出て直ぐにまた戻って来たのだが、その手には黒い50×50×5位の機械の様な箱を持っていたのだ。
この機械に右手を置くと、今の自分のレベルから何から全て分かると言うのだ!
冒険者になるには、最低レベル10以上でなければカード発行は出来ないそうだ。冒険者登録するには、皆この適性検査を受けなければならないらしい。
適性検査を受けるのはいいが……この適性検査を受けるとスキルまでバレてしまうのだ。どうしようか困っているとーー
「レベルに自信が無いならまだやらなくていいんだぞ?」
おれもキルルもレベルに関しては問題無い筈なのだ。何せ幼い頃から母さんにしごかれてるし、おれに関しては自主的に修行だってしていた!そんな事を考えていると、何も言わずにキルルが機械に右手を置いたのだ!!
すると白い光が手の平を読み取り、割と直ぐに光が消えた。キルルは直ぐに手をどかすとーー
名前: キルル・マイスター
年齢: 11
レベル: 35
スキル: 未
魔法: 異空間収納(小) 水系魔法(E)
炎系魔法(E)
剣技: (AA)
と浮かび上がる。
レベル35ってなかなか凄いんじゃないか?!まだスキルは発現していないものの、剣技はAAって……
「流石キロルの子だな……この歳では見たこと無い数値だな。」
流石と感心すると共に、驚いてもいるゴンザレス。これならば何も問題なくカード発行が出来るとの事だ。
続いておれに目を向けてくるゴンザレスなのだが・・・どーしよ?!
おれが困っていると、何かあるなら話せと言うゴンザレス……
「安心しろ。これでもギルド長だ!秘密は決して漏らさん。」
どうせ適性検査を受けなければ冒険者にはなれないのだ!おれは腹を決める!!前以てゴンザレスには、数値を見ても騒がないでもらいたいとお願いをして……おれは機械に右手を置いたーー
名前: ウィル・マイスター
年齢: 13
レベル: 101
スキル: 創造主 如何なる物も自身の考えで生み出せる
魔法: 異空間収納(大) 全属性魔法(S)
剣技: (A)
と浮かび上がる。
ん?おれってレベル101なの!?しかも全属性魔法Sって……まぁやはりと言うべきか、剣技に関してはキルルに劣るようだ。
それにしてもこの数値はちとヤバくないか??おれってこんなに強かったの!?今まで母さん位しか比べる人がいなかったからなぁ。
この時おれは、この場が静か過ぎる事に気がついた!ふと辺りを見るとーー2人が浮かび上がった文字を見つめながら微動だにしなかったのだ。2人共別世界にでも行ってしまったのだろうか?
「あ、あのぉ~・・・やっぱり不味かった?」
2人の様子を伺いながら、恐る恐る声を掛けると……一斉にビクッとなる2人!!
どうやらこちらの世界に戻ってきてくれたようだ!
「これはどう言うべきか・・・絶対に他の者には見せるな!」
ちょっと怒りながら鼻息を荒くして言うゴンザレス……いや、こうなるのが分かってたから見せたくなかったんですけど?!
こんなスキルは、この世界にあってはならないと語るゴンザレス。
冒険者カードを発行するには、1つ条件が出されたのだ!
「お前達は俺の直属の冒険者になれ!」
どう言う事か聞くとーーおれ達では普通の依頼やミッションは簡単にこなしてしまい、目立ってしまうらしいのだ!あまり目立ち過ぎると目をつけられ、余計な危険に巻き込まれるのが目に見えているとの事。
ゴンザレス直属になれば掲示板に貼り出される様なミッションではなく、難易度の高いミッション等にはなるみたいだが……世間に知れる事はないので、余計な心配は無くなるとの事。
万が一にも世間にスキルが知れ渡る様な事だけはあってはならないと、釘を差すゴンザレス!!
それはごもっともなのだが、それではおれの夢が果たせない……おれの夢は、この世界で冒険者として名を上げる事なのに。ゴンザレスにも話しては見たのだが、今は大人しくしている方がいいと言われてしまう。
「ましてや龍の髭が一枚噛んでいるとなれば尚更だ!」
そもそも龍の髭とはなんなのか聞くと・・・
龍の髭空賊団はこの世界世界でもかなり有名な空賊団らしく、残虐非道でその名を馳せているみたいだ。
空賊か・・・そんな悪い奴らにおれは負けない!なんなら片っ端から逮捕してやりたいよ!とついつい前世での警察官気取りとなってしまう。
まぁとりあえずはゴンザレスの言う通り、大人しくしてるしかなさそうだ。おれ1人ならいいんだけど、キルルもいる!キルルまで危険に巻き込むなんて断じて許されることじゃない!!
しかしおれ1人で決める訳にもいかないのでーー
「キルルはとりあえずそれでもいいか?」
「キルルはウィルと一緒に居れるならそれでいいよ?」
キルルの返事を聞き、ゴンザレス直属になる事を了承した。
おれ達の返事を聞いて直ぐに、冒険者カードを発行してくると言って部屋を出ていった。
おれ達はカードが発行されるまで、お茶を飲みながらのんびりとした時間を過ごしていたのだがーードスドスと走ってくる足音が聞こえ、お茶も足音に合わせ波打っていた!
ゴンザレスが慌てて部屋へと入って来るなりーー
「大変なことが起こった!!!」
と叫ぶよに声を掛けてきたゴンザレス。
大変な事とは、いったいなんなのか?おれ達はとりあえず、ゴンザレスの話を聞く事にしたのだった。