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プロローグ
死に怯えずに暮らしたいと、願った。
生きたい。そう願うことは、この世界では断罪されるべき行為になる。
この世界には魔法があり、『魔力を持つ人間』が存在していた。
魔力を持たない、普通の人間よりも圧倒的に優れた力を持ちながら、彼らは人の目から逃れるように生きなければならない。
持たざる者はいつだって、持つ者に羨望思いを抱くものだ。そして、強すぎる思いはいつしか憎しみへと変貌する。
二十世紀。『魔法』と呼ばれる万能の力を恐れた人々は、人類史をともに歩んできた魔法使いたちを、人ではなく人類を脅かす存在。すなわち、怪物として扱いはじめた。
やがて、エスカレートした迫害は虐殺へと変わった。
そうして、彼らの住む世界はこの世界にはなくなってしまった——。