キリン
優しくくちづけする時に かくりと首を傾ける
その長く艷めく睫毛に 一瞬だけ ときめいて
自分の立場を ただひたすら忘れたくて
いつもと違う人格の スイッチをカチリ 入れた
キリンのように 背の高い、きみ
きみを見上げれば首を痛める
眩しい笑顔に目を細める
ふと視線を斜めに向けたりするから
その方向を 向いてしまったじゃない
あっという間に接近されて
気づけば柔い 唇触れる
きみのことが 好きだった
その気持ちに 嘘はないかもしれないけれど
意味合いが少しだけ ずれている
きみの好きは loveの好きで
あたしの好きは likeだった
強いて言うなら 慈愛かな
見つめるだけで 微笑ましくて
思わず母性が あふれるような
そんな想い 抱えてた
きみに惚れてみたかった
いつか来てほしい 未来を夢見て
結局は最後となってしまった別れのとき
きみは優しく 唇あわせて
じわりじわりと あたしの顔に熱を持たせた
きみとのキスは いつも駅
駅のホーム 流れる電車を背にして唇を交わす
どうしてこんなにタイミングが悪かったのだろう
あと2ヶ月早ければ 許された関係かもしれないのに
頭の隅で浮かび上がった理性を飛ばし
いま この時だけ 私の持ち主でない者へ 委ねる