魔法使いの独白
これから始まる(予定)の世界についての、魔法使いの独白です。
一応ファンタジーのつもりで書いていきます。
【異界、幻、魔法。
現実という視点から見れば、それらはただの滑稽譚であり、おおよそ自分たちには関係ない世界だと思うのだろう。
世界は表裏一体であり、表側と裏側がある。
鏡の向こう、水底、木陰に灯影。果てはドアの向こうから自分のすぐ後ろまで。
表側から見て裏側とされる幻は、確かに息づいている。
それは、確かな存在感を持って私たちのそばにある】
魔法使いは独白を終えると、にっこりと笑った。
微かな顔の動きに合わせ、緋色の髪が揺れる。
鮮やかな緋色は、昼と夜、夜と朝を繋ぎ、また同時に空と地を繋ぐ陽の赤さの様であり、体を巡る血の赤の様でもあった。
緋色の髪が、瑞々しい肌とシャムロックのような緑の瞳によく映える。
「まぁ、こんな風に大仰に言ったところで、表も裏も関わる奴は関わるし、関わらん奴はそうそう関わらねぇよ。ただまぁ、自分たちがいる世界だけとか、狭い視野でいない方がいいってことは確かだな。裏も、表も、両方な」
今までの調子を崩し、豪快に言い放つ。
荒っぽい口調ではあったが、彼女には不思議なほどよく似合った。
「世界は広いし、一つってわけじゃない。訳がわからなくなりそうなくらいたくさん、気が遠くなるくらいいっぱいあるだろ」
先程の笑顔とは違う、不敵な笑み。
「まぁ、どうでもいい与太話さ。悪かったな、私の独り言なんかに付き合わせちまってよ。要は、世界は広いから、細かいとこばっか見てんのはもったいねぇってことだ。理不尽も、平等も、悪意も、善意も、害意も、好意も、嘘も、本当も、一歩引いてみりゃあ、案外裏表無しの滑稽譚かもしれないぜ?
どの世界だって、醜くて、美しくて、悍ましくて、煌びやかで、スゲェからよ」
魔法使いは、心の底から楽しそうに、無邪気に。
最後の最後まで、笑っていた。
ゆっくりではありますが、溜め込んでるファンタジーの知識を生かしたいです。