消えた妖精と甘い夢。
『ん〜…。どこにあるの…。』
私ーリリィは不安な気持ちを抱えながらも、なんとか森の中へと足を踏み入れ…、途中、小石に躓いたり木にぶつかったりしながらもエメラルド色の魔法石を探索中です。
しばらく歩いていると段々と霧深い空気が漂い始めました。視界がだんだん霞んできたので無闇に歩き回るのも危険だと感じました。
『お願い…エメラルド色の魔法石の場所まで、導いてください…』
意識を集中させるとグリーンネオンの魔法陣が私の足元に広がって…、微かな風の流れ道が出来上がります。私はそれを肌で感じながら、ふたたび歩き始めました。
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『なんだか…、寒いような……。』
まだ霧が漂う空間の中、歩いていると徐々に冷たい空気を感じ始めました。魔法石を探索するために常時魔力を消失しているので、少し疲れて眠くなってきました。
と、その時。
『…、あれ、風が……、あっ!!』
ふいに今まで感じていた風が途切れたかと思えば霧深い空気の中、目の前に現れたのは透明に凍り付いた湖でした。
そして、その湖の中心辺りの空間に、きらきらとエメラルド色の魔法石が美しくうかんでいるのでした。
『あれだわ…!!きっとあの石が…!!』
私は煌びやかに輝くあの石を、大好きな…そう、貴女の瞳の色だと感じると、無我夢中で凍り付いた湖の上へと足を踏み出しました。
しかし、
パキッ…
『え……』
ふいに鈍い音が足元で響いて、四方八方に広がる亀裂の中心へ、私はがくんと身体をおとしました。
冷たい水が私を包んで、泳ぐことができない私は息をする事もままならないまま…。
なんで、いつもこうなの…。
私は冷たい水の中、離れゆくと水面を見上げました。ぼんやりと視界にうつるのは、今もまだ輝くエメラルドの光…。
私はそれを見ると、溢れることのない涙を水中に溶かして、
愛おしき貴女の姿を思い浮かべながら、
そっと、意識を手放したのでした。
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暖かな光がさして霧が晴れると、
湖の氷はまるで宝石のようにきらきらと光はじめます。
優しい風が緑を揺らして、
まるで私の冷たくなった心を溶かす陽だまりの春が訪れたかのような…。
『……』
まだ朧げな意識の中で、
『…、意識がないだけか…』
誰かの声が聞こえてくるの…。
『…ケホッ…、ケホッ…』
ふいに咳き込む私の髪を、そっと優しく撫でて…。
ふわり…。
私、この匂い…知ってる…。
その香りに、私胸がドクンと高鳴って…。
そして、
『……っ…』
柔らかい、なにかが…そっと、私の唇に触れて…。
『ケホッ…ケホッ…』
私の口端から一筋の水が溢れ出して。
それ、で……。
まだこの夢の続きを見ていたいと感じたのはなぜなのでしょうか。