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*crystal tears*  作者: 桜咲 香恋
2/10

夜空色の薔薇。

翌日…。リリィはまだ残るあの人の熱を感じながら、上の空状態で学院の廊下をふらふらと歩いていた。





『…///(まだ、信じられないよ)』






昼下がりの薔薇園で、麗しのあの方が、私の…、私の…。

リリィはその光景を思い出して思わず頬を染めた。






ちゅっ…。




リリィは数冊の教科書をぎゅっと抱き締めながら、そっと人差し指で自らの唇をなぞった。リリィはなんだかイケナイ事をしているように感じて…、彼女の身体は火照り始めていた。




その時、






きゃぁぁ







『…?』




白い柱が立ち並ぶ学院の外廊下の一角に、数名の女生徒が集まっており、そこから甲高い歓声が聞こえてくる。リリィはその場に近付いてその場で様子を伺った。すると…。




『…!(まぁ、なんて、綺麗な方…)』




集まる花々たちの中心に現れたのは、夜空色の長い髪を一つに束ね、同色の妖艶な瞳を持った美少女であった。





『アイリス副会長…ご機嫌よう///』




『ふふ…ご機嫌。』



彼女は妖艶な笑みを浮かべた。




『アイリス様…今日も美しいですわ…』





『あら…そう?嬉しいわ…』




そう言ってアイリス副会長と呼ばれた美少女はとある女性徒の頬に手を添えてふっと色っぽく微笑んだのであった。




きゃぁぁあ



再び歓声があがる。



『…っ///(わ、私見ちゃいけないものを…)』




そのリリィは思わずはっ口を塞いだ…。そして、




バラバラッ




『…あっ!!』




手元からこぼれ落ちる教科書達…。

リリィは慌ててそれらを拾い集める。

すると、




『…あらあら?』




次々と捌ける女生徒達。かつん、かつん、と足音が響く。

そして、



『へっ…!?///』




教科書を拾うリリィの目の前に現れたアイリス副会長と呼ばれた美少女は突如としてリリィへ迫とり、俯く彼女の顎をさっと持ち上げたのである。




『…見ない顔ね、ふふ、可愛い子…。』




じっと見つめるアイリス副会長の挑発的で妖艶な視線に、リリィは思考が停止して動けなくなった。思わず震える唇で吐息を漏らしたその瞬間、アイリスの口元が悪戯に微笑んで、そして、





『…可愛い。』









近付く唇。動かないリリィの身体。

リリィがはっとした時には既に、状況に対処できる時間はなく、ただ顔を赤らめることしかできなかった。







…だ…め。
















『アイリス副会長』










『…!?』






突如として背後から聞こえる凛とした声。

リリィは今までの硬直から嘘のように解き放たれて、脈打つ鼓動に任せて思わず振り返った。







そこには、







『…っ///』







薔薇園で出逢った麗しの貴女が、今日も凛とした姿で立っていたのである。






きゃぁぁあ





『しゅ、シュラビーレ様よ…///』




シュラビーレ…様…。




『本当だわ…///…な、なんて麗しいの…』





再び巻起こる歓声…。

リリィはそれすらにも動じず、ただ熱い視線で現れた人物をを見つめるばかり。そう…リリィの隣で青い影が、なるほどね、と意味深に微笑んだことにも気が付かずに。







『あら…シュラビーレ…、久しぶりね。どうしたの…、私に逢いに来てくれたのかしら…?』




そう言って立ち上がるアイリスがシュラビーレ様にグイッと近寄ります。




きゃぁぁあ




しかしそんな動作にも動じずに、シュラビーレは澄ました顔で言い放った。






『会長がお探しですよ。いつもいつも会議に出席しないで、どこで、なにを、しているのかと心配していらっしゃるみたいで。』




そうちらりと視線を流しながら言い放つシュラビーレに、アイリスは一瞬にやりと笑った。そして…。




ユラッ…





『あ、アイリス様!?』






『…っ』




バッ






えっ…







突如として重なる二つの美しい影。

それはまるで一枚の絵画のようで…。





きゃぁぁあ





よろめいたアイリス副会長を抱きとめるシュラビーレ…。周りの歓声が最高潮に達する中、リリィは思わず、





『…っ!』





教科書を拾い集めるとその場を走り去っていた。





ふふふ…可愛い…。

アイリスは不敵な笑みを浮かべた。






『…大丈夫ですか(何を貴女は遊んでいるんですか)』



シュラビーレは小声でそう呆れたように言葉を漏らした。



『ふふ…ごめんなさいね…ちょっと目眩が(ちょっと意地悪したくなったのよ)』



加えてアイリスもそうシュラビーレに呟く。

そして再び、悪戯っぽく笑った。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





はぁ…っ、はぁ…



『…っ』




分かってる。





『…っ!!』





分かってるよ…。






『…はぁ…』






美しい二人。天の上の存在。





選ばれる人…、選ばれない人。





『……。』







大丈夫。






ちょっとチクリと痛むけど。








貴女を想えるこの気持ちだけで私は、幸せなのだから…。






リリィは今見た現実に涙を堪えながら、ただひたすら走っていた。

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