死に際の疑問
以前男に、頼りたくなったら頼りなさい、と言った者がいた。
男はやがて、誰かに頼らなければ解決できなさそうな場面に出くわした。
その時男はふと、以前自分に声をかけてくれた者のことを思い出した。
そして頼った。
するとその者は、今手が回らないから頼るな、と言った。
後日、その者から連絡があった。
手が空いたから頼っていいよ、と。
しかし男は、なんとか自力で事の一切を済ませていた。
男はその旨を伝えた。
すると、頼らないでできるんならもう頼らないで、とその者は言った。
それ以後彼は、誰かに頼りたいときであっても頼らずに、自己解決してきた。誰かを頼ることなく生き続けた。
そんなある日、彼は町を歩いていた。来たこともない町だ。当然地理なんて分からない。
彼はさまよった。
やがてふと、彼の頭に妙な考えが浮かんだ。
居たら頼りたくなる。でも頼ると断られる。
彼は周囲を見渡した。
人、人、人。
彼の周りには人がいた。
彼は思った。
自分の周りには頼れるはずなのに頼れない人間がいっぱいいる。
彼はそう認識すると、突然人を斬り始めた。
いてもいなくてもいいならば、いない方がいい。
しばらくすると、周囲にいた人間の1人が感触の人間を頼った。
頼られた官職の人間はすぐさま駆けつけ男を抑えた。
男は牢屋に入れられた。
そして断頭台に立たされた。
彼は取り押さえられてから首を切り落とされるまで、首を傾げていた。
なぜあの者は人間に頼られたのに応じたのだろうか、と。
頼りたいときに頼れないことって、ありますよね?