籠から出た鳥
「おい、目が覚めたみたいだな。」
目の前にいるのは誰?
「貴方、貿易商ですか?」
「んなわけねーよ。俺は…海賊だ。」
何故、海賊に捕まったのかしら、私。
「目の前にいる海賊にお訊ねしますが、私は捕虜ですか?」
「いや、俺の野望のために拐ってきた女っていう立ち位置ってコト。俺の名はメール・アンテュール。よろしく、女王様。」
メール・アンテュール…その名の通り、海に似た青い瞳がキラリと光った気がした。
「あ、女王様。船長室からでないほうがいいぜ。」
「何故?」
「……ちょっくら、耳、貸せよ」
『あのな、身分なんて関係ねぇ。俺の部下たちは、ちっ~と頭のネジが外れているんだ。だからな、ココから出たら……お前が女ってだけで、アイツらの餌食決定だ。』
え~と、それはつまり……?
「……っ!そ、そんな……。」
「その、まさかだ。この船にまともな頭を持ったヤツなんて、いやしねぇよ。」
全く、顔を赤らめる姿が可愛らしい女だ。利用するのが、勿体ない程に。
「失礼ながら、船から下ろして頂けませんか?」
「……死ぬ気か?女王様は、海にドボンするつもりだと。」
「私は帰りたいのです、今すぐに。自分の命よりも、民の命が失われることの方が、惜しい。」
そう言うものの、帰りたくは無い。本当は、死ぬことが惜しいのだから。
「そうか。…じゃあ、帰してやるよ。」
「本当…ですか?」
「嘘はつかねぇよ。後々、面倒だしな。」
この女の容姿は、凛として、憂いを帯びた瞳が、魅力的。そう、頭の中にメモ、メモ。
本当に人のいい女だ。……絶対に離さない。