Episode of Changing Zero 04
涼太はあすかと共に下校していた。「紗弥香ちゃんって結構可愛かったなあーそう思わないか?」
「…そうね…だけど、彼女は厄介ね…」
「やっぱり気づいたよな。恭介が言っていた『純粋』の少女って彼女のことだよな。」
「…それ以外に考えられないよ…しかも、彼女は自分自身の能力に気づいていない…」
「万が一、いきなり覚醒でもして暴れ出したら収拾がつかねえな。」
「そこは、恭介がなんとかしてくれる…」あすかがそう言うと涼太は笑った。
「あすかは放任主義だなあ。相変わらずだな。」
「…そうなの?」あすかはあまり意識していないようだ。
「良いねえ。思春期の男女が二人仲良く下校するシーンは。」
「誰だ⁉︎」と涼太。「…そんな関係じゃないよ…」とあすか。涼太はあすかの焦点が少しずれているように感じたが触れる余裕はなかった。
「これは失礼。さっきのは独り言ですよ。気になさらないで下さいね。」そう言って涼太とあすかの前にフード付きの白いローブを着た男が現れた。
「私の名前はレンギス・ゼロ。巷で話題のチェンジ・ゼロを付与した張本人ですよ。」
「なん…だと…?ゼロを付与した人間だと⁉︎」
「そうです。私がゼロの能力を与えたということが信じられませんか?高橋…涼太君。」
「…どうでもいいよ。ここで倒すだけだから…」あすかはそう言って左手を胸の前にかざした。
「ディプローマ…」あすかがそう言うと左手の人差し指に指輪が現れた。あすかの両手に青い鋼の籠手がはまった。両肩に鋼の防具がはまり、肩の防具から背中に虫の羽根のような形をした鋼が伸びていく。それは腰のあたりで止まった。両膝にプロテクターがはまり、靴は鋼のブーツに変わった。
「すぐに終わらせる…」そう言うとあすかはレンギスの懐に飛び込んだ。右腕でアッパーを繰り出すあすか。レンギスはそれを躱し、あすかの右手首を掴んで投げ飛ばした。
「…なんなのこいつ…」
「このままではまずい!俺も加わらねえと!ディプローマ!」涼太の髪の毛に稲妻の形をした髪留めが現れた。その髪留めからスパークが彼の周りに走り、みるみるうちに彼の姿が変わっていく。涼太は白色のパーカに白色のクロップドパンツを着た姿に変わった。
「ライトニング・スパーク!」涼太の周りに無数の電気の槍が現れ、レンギスの方へと飛んでいく。だが、レンギスはそれも軽い身のこなしで躱した。
「いやあ、私も舐められたものですね〜私は…少なくともリーダーならともかく普通のドラゴンズのメンバーに負ける気なんて毛頭ないですからね。」途中からレンギスの声は低く威圧するような声にかわった。最初は少し笑っていた目が急に真剣になった。
「この程度で私を倒せるとでも?」
「なら、本気でいかせてもらうぜ(わ)」涼太とあすかの声が被った。
「ほう…面白い。」
「ハード・アーマー!」あすかの装甲が強化され、硬度が増した。
「いくぞ、あすか!」
「…うん、わかった。」
「ボルテックス・フィールド!」予め展開されていたフィールドに電気が走る。
「ほう…これは無作為に放電した訳では無さそうですね。」
「当たり前だ!」
「喋ってる余裕はあるの?あなた。」次の瞬間あすかはレンギスの真後ろに移動していた。
「アウトバースト…」涼太の電流があすかの右手へと集まり、右手が青白く光った。あすかはそのままレンギスを殴りつけた。
「捉えた…」
レンギスはあすかの横で静止している。
「いやあ、危ないところでした。間一髪でしたよ。さすがアウトバースト、『突発』ですね。殴りつける速さも尋常ではないです。」涼太とあすかは驚いた。アウトバーストを直に食らった男が平然と立ってなおかつ喋っているからだ。
「さて、私の能力もそろそろお見せしましょうか。私の能力は『リミット・ゼロ』。人間の速さの限界を超えることが出来るのです。」
「なんだと⁉︎」
「残念ながら光速に達することはできませんでした。光速になるには『光』の能力が必要のようですね。ですが、『無』から生まれた私の能力でもそれに近い速さを得ることは出来ました。折角ですから…」レンギスはあすかと涼太の目の前から消えた。
「お見せしましょうか。」レンギスは低い声で呟いた。
「後ろだ!」
「…えっ?」あすかの後ろからレンギスの手刀が振り下ろされた。
「くっ…」あすかの両手でのガードはなんとか間に合った。
「ふっ…」レンギスは鼻で笑うと目にも止まらぬ速さで手刀を振り下ろし続けた。あすかは防戦一方で、攻勢に転じることが出来ない。
「ううっ…」レンギスの手刀があすかの腹部に命中し、その衝撃であすかは吹っ飛ばされた。
「あすか!」
「人の心配をする前に自分の心配をしたらどうですか?」レンギスは既に涼太の後ろに回りこんでおり、そのまま涼太へ飛びかかった。
「ぐあっ…」反応出来ず背中にダイレクトに手刀を食らい、涼太も吹っ飛ばされた。