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Episode of Interference Zero 04

「おはよう、恭介。ちょっといいか?」恭介が教室に入って一番最初に聞いたのは孝人の低い声だった。孝人の言わんとすることは瞬時に理解したので恭介は荷物を置いて孝人と教室を出た。奏とあやかも二人についてきた。四人は学校の庭園に出て、設置してある長いベンチに座った。

「ゼロの黒幕が死んだのは本当か?」孝人は開口一番から本題に入ってきた。

「ああ。殺されたらしい。」

「聞いた。俺にも入間さんから電話がかかってきたからな。」

「あいつら二人を倒せるような奴がこの世界にいるのか?」

「分からないわよ。もしかしたら集団で襲ったのかもしれないわ。」

「集団で襲うにしても一人一人の能力がかなり高くないと倒せないぞ。」恭介が言った。

「そうだよなあ。だけど犯人は割とすぐに俺たちの前に姿を現すかもな。」

「それに犯人探しは生活保安課がやってくれているし。」

「あいつらあてにならないんだよ。」孝人がため息をついて言った。

「前の演武の結果だって散々だったしな。」演武とはその能力を日常的に使うことがある超能力者達が集まり、互いに技術を高めあうという行事である。だが、ここ数年は中高生が中心のドラゴンズの能力が大人たちの能力に圧倒的に勝っている。

「ま、まあここは大人たちに任せましょうよ。」あやかが孝人をなだめて話を元に戻した。

「とりあえず、しばらく犯人探しは任せるとしよう。大人たちが犯人を見つけ次第、攻撃に加わればいい。変に嗅ぎ回って犯人に勘づかれて不意打ちでもされたら最悪だからな。」

恭介に続いて奏が口を開いた。

「生活保安課は超能力者でも偵察や隠密な調査に長けた人が多い部署よ。まあ確かに孝人の言う通り、力量ではドラゴンズに及ばない。でも調査に関しては向こうの方が上ね。能力云々のこともあるけど、やっぱり私たちはまだ子供だから。」

「なるほど。了解した。」

「必要であればまた話し合ってから入間さんに情報開示を求めればいいしな。」

「そうだな。」

「じゃあ、先に教室に戻っていてくれ。俺は少し野暮用があるから。」

孝人と奏とあやかはベンチから立ち上がって校舎に入っていった。

「さて…と。」恭介は誰にも見られていないことを確認してからディプローマを使い変身し、瞬間移動をした。移動後の座標は、この校舎の屋上。恭介が降り立つと二人の青年がそこにいた。

「あの二人は元気になったんか?」一人は明るく話しかけてくる関西弁の青年、飛隆だった。もう一人は彼の背後で足を組んで立っている。雅翔だ。

「ああ。おかげさまでな。」

「俺らなんもしてへんから、感謝される筋合いはないで。」飛隆は笑った。

「で、用件って?」

「昨日俺らが交戦した奴が死んだらしいやん。だからそのことでちょっと話があってな。」恭介は口を開いたまま少し固まってしまった。

「どうして知っているんだ?」

「俺らのネットワークをなめたらあかんわ。まあ色んな伝手があってな、それで知ったんや。」

「現場にも行ってきたで。」

「本当か!?」

「ほんまや。なんでこんなとこで嘘つかなあかんねん。」

「んでな、ちょっと中入って見てたんやけど、変な物が落ちてたんや。」

「変な物って?」

「これだ。」ようやく雅翔が口を開いた。雅翔が差し出したのはピンクの小さな木の欠片だった。

「何だこれ?」

「これは武器だ。しかも人間界のものではない。」

「何でそう分かるんだよ。」

「俺の能力で分析してみた。」

「そんなことまで出来んのかお前の能力。」恭介は目を見開いて言った。

「忍として偵察、分析、暗殺はお得意のものだ。」

「物騒な言葉が一つあったような…」

「気にするな。話を戻すぞ。」雅翔はそう言うとポケットからライターを取り出し、その木片に火を付けた。

「おいおいおいおいおい!!!!何してるんだ!!!…よ…」恭介の声のトーンが小さくなっていった。というより最後の方は声が出なかった。その木片は火が付くと小さな波動を発生させ、火を消してしまった。

「どういうことだ…これ…」

「それはな、神樹から作られたもんなんや。神樹って言うのはな、神界の『中央の域』に生える一本の大木でその木は燃やすことも倒すことも斬ることも出来ひんねん。神樹から作るって言っても、斬ることも出来ひんのにどうやって加工すんねんってなるよな。」

「ああ。」

「その神樹が燃やすことも倒すことも斬ることも出来ひんのはな、外界から与えられた力を相殺する働きがあるからやねん。さっきので分かったと思うけどあれだけ小さな欠片になっても火を消すほどの力を持ってんねん。それが大木になったらそりゃあ並大抵の力では倒されへんわな。でもな、その力をかき消すほどの力を持つ奴もおんねん。」

「そんな奴がいるのか?まさか、ゼロを倒した奴はそんな強敵なのか?」

「違うで。その神樹の力をかき消せたのは今まで二人しかおらんからな。今回のことはその二人のうちのどっちかがやったことではないわ。だってな、その二人やったら普通にこの世界消せるからな。」

「そうなのか…」

「んで、神樹から作られた武器とか防具を『神器』って言うねん。その『神器』を与えられた奴が今回の犯人やわ。」

「この破片が何の神器かは分からないのか?」

「さすがにそこまでは分からんかったわ。まあぼちぼちこっちも調査して行くから有益な情報があればまた教えたるわな。」

「ありがとう。恩にきるぜ。」

「お互い頑張ろな!」そう言うと飛隆と雅翔は瞬間移動して消えた。


恭介は瞬間移動して校庭に戻ってきた。そこには木を見ながら佇む女子の姿があった。黒くて長い手入れされた綺麗な髪。遠目からでもすぐにそれがあやかだと恭介には分かった。

「何してんだ?」

「あっ、恭介。何にもないよ。ただ暇だったからっていう理由と、今日の午後のことを聞きに来たんだ。」

「今日の午後?ああ、買い物か?」

「うん。こんなこともあったからどうするのかなって思ってさ。」

「あやかはどうしたいんだよ。」

「えっ…」あやかは予想外の返答に少し固まってしまった。

「行きたいのか行きたくないのか、だよ。」恭介は頭を掻いた。

「そりゃあ、行きたいけど…」

「じゃあ、決まりだな!」

「えっ。」

「えっ、じゃねえよ。あやかが行きたいなら行こうぜ。」

「うん…」恭介は彼女の心中にははまだ戸惑いがあるように感じた。

「だからさっき俺は大人たちに任せよう、って言ったんだぜ?」

「あっ…」

「わかるよ。あやかの気持ちもすごく分かる。俺も入間さんから電話があった時に考えてたんだ。こんな状況で遊びに行ってもいいのか、ってな。でも、遊びとあっちを両立すればいいと思ったんだ。」

「両立って、どういうこと?」

「遊びに行ったところにゼロを倒した奴が現れるかもしれない。それに周りに何か変化があってもすぐに対応できるだろ?だからだよ。万が一そこに敵が現れなくても、それは普段の調査と同じで空振りに終わったと考えればいいんじゃないか?」

「なるほど。そうだね!確かに恭介が言うことも一理あると思うよ!じゃあ、学校終わったらすぐ行こうね!」

「ああ。そろそろ予鈴が鳴るから戻ろうか。」

一人の思春期の少女の不安が払拭され、彼女がとある萌芽に確信した瞬間だった。


その頃…東京都内某所では…

「ただいま。」ドアを開けて入ってくる少年。歳は10代半ばといったところだろうか。

「おかえりなさい…」消え入りそうな声で出迎える女。歳は20代前半といったところだろうか。彼女の声ば不気味でいてかつ妖艶であった。

「どう?今までぐっすり眠っていたからね。具合は悪くない?」

「大丈夫…私が望んでしたことだから…特に問題はない…」

「そっか…良かったよ。肌がちょっと白すぎるから、具合が悪いのかと思ったよ。」

「元々こういう肌だから…」

「そっか…」少年は女と同じソファに腰掛け、そっと女の顔に自分の手を当てて言った。

「綺麗だよ…本当に綺麗だ…君の腕も脚も胸も髪も肌も目も。本当に美しいよ。リリス。」

リリスと呼ばれた女は目を閉じ少年にもたれかかった。少年は思った。もう自分の美しいものを汚させる真似は誰にもさせない、と。


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