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Episode of Interference Zero 02

恭介は一本の電話のせいで目を覚ました。時間を見ると朝5時半。目覚ましのアラームは6時半に設定しており、もちろん誰かにモーニングコールを頼んだわけでもない。

「ったく、誰だよ。こんな時間に。」恭介が発信者の名前を見るとそこには入間久信と表示してあった。なんで警視庁特殊事件対策局生活保安課の人間が俺に用があるんだ?何か起こったのか?と訝しみながら応答した。

「はい。片川です。」

「もしもし。ごめんね、朝早くから。」本当にそうだよと恭介は心の中で毒づいた。

「それでも深夜1時に電話をかけられるよりかはマシだろう?」

「あ、はい。」何を言ってるんだこの三十路の男は、とまたまた毒づいた。

「君たちにも学校があるし睡眠中だろうと思ったからかけるのを止めたんだ。」

「そうなんですか。」さっさと用件を言えよと思った。

「実はね…君たちと交戦したゼロの黒幕が死んだんだよ。」

「……!?」恭介はその一言で完全に目が覚めた。

「それは確かなんですか?」

「ああ。昨日の深夜1時頃に通報があってね。東京湾のそばのコンテナが爆発を起こした、ってね。そこは元々もう使われていなくていつの間にかゼロのアジトになっていたようなんだ。」

「2人の遺体は?」

「見つからなかったよ。あまりにひどい爆発だったから燃え尽きたんじゃないかというのがうちの見解だよ。」

「そんな…加害者は誰なんですか?誰も見ていないんですか?」

「そうだね。手がかりはないんだけど…」久信は少し黙り込んだ。

「どうかしましたか?」

「いや、どうしても不可解なことが一つだけあるんだ。」

「なんですかそれは。」

「一つの部屋だけ爆発の影響を受けていないんだ。」

「えっ?」

「全ての部屋が木端微塵になっていたんだけど、一つの部屋だけ破壊された時間にズレがあることが分かったんだ。」

「しかも念入りにそこだけは全く何も残らないくらいに壊されてるんだよ。」

「何かあったのでしょうかね?」

「そうだと思う。ゼロの黒幕二人を葬れるような奴が興味を持つもの…それは何なんだろうな?」

「入間さんはゼロがどのような者たちか詳しくご存知ですか?」

「いや、そうでもない。分からないことだらけでむしろ困っているんだ。」

「ゼロは…『A』の系統の神の手下の残党から力を授かった者たちらしいです。」

「そうだったのか…昔に聞いたホムンクルスの話に似ている。」

「ホムンクルス?人造人間ですか?」

「ああ。この世に一体だけ存在するホムンクルスは確か『A』の残党から能力を貰ったとか。今は行方不明だってさ。最後に確認されたのは1950年10月26日だといわれている。某ヨーロッパの国の地下庫に幽閉されていたらしいんだが、その後地下庫が何者かに爆破されその時に消えたらしい。」

「それを某政府当局はみすみす指をくわえて見ていたんですか?」

「まあ、そういうことになるな。そもそも犯人探しさえすれば良かったんだからな。」

「ホムンクルスは取り返せなくても良かった、と?」

「そのホムンクルスは休眠状態にあり、しかも相当な力を持つ者でないとリブート出来ないらしい。それにその爆破には超能力が関与していなかったし、リブートしてもそのころのイギリスにはジャン・ルイスマンがいたしね。」

「ジャン・ルイスマンですか…確かに彼ならどんな敵でも倒せたでしょうね。」

ジャン・ルイスマンとは第二次世界大戦中から後にかけて活躍したドラゴンズロンドン本部(ニューヨークに本部が移行したのは1980年。)のリーダーであり、その正体は『V』の直系の神が降臨した姿だったと言われている。彼の能力は『掌握』、物理学で言われる『ラプラスの悪魔』の具現化であった。その能力を活かし第二次世界大戦中にはベルリン支部のドラゴンズメンバーを大いに苦しめたと言われている。2005年に人間界では亡くなり神界に戻ったとされている。

「今回の敵はリブートしたホムンクルス並みの強さを持つ者だと思う。当面は生活保安課で対応するけど、もしかしたら君たちに招集がかかるかもしれない。また何か情報を掴めば連絡する。君たちも何か情報を掴んだら連絡してほしい。」

「分かりました。」

「朝早くからすまなかったね。それでは良い一日を。」電話はそこで切れた。良い一日なんて過ごせるわけがないだろ…と恭介は思った。そういえば今日はあやかと遊びに行く予定だったな…まあしばらくは彼らに任せようと心の中で呟いた。再び時間を見ると5時45分。少し陽の光を浴びようと恭介は部屋のベランダに出た。朝日が眩しい。気候も穏やかだ。自分だけ別の世界にいるような疎外感を味わった。この世界で普通に生活している人間はあの爆破事件のことをただのオカルト現象と捉えてしまうんだろうな。自分たちの生活がいつ脅かされてもおかしくないという事実をつゆほど知らずに。風が恭介の頬を撫でた。心地よい風だった。公園や神社では桜も満開になっている。暖かくお花見には最適な気候だ。だが肌で感じる気候はそうであっても実のところは頬を切り裂くような冷たい風が吹き氷雨が降っている。それが今の恭介だった。彼はベランダから部屋に戻り、学校に行く支度を始めた。


「ちょっと待ってて!!」恭介がインターホンを押すと返ってくる大きな声、いつもの光景だ。こいつは俺に一番近い存在であるのに昨日の事件の真相を知らないんだな…そう思っているとドアが開いて紗弥香が走って出てきた。

「ごめんごめん!待たせちゃって!」

「あ、いつものことだから大丈夫だよ。じゃあそろそろ行こうか。」

「うん!」紗弥香はにっこりと笑った。

「何かあったの?」しばらくして会話を切り出したのは紗弥香だった。

「いいや、別に何もないよ。」

「なんかぎこちないよ。」恭介は驚いた。全くそんな素振りを見せているつもりはなかったからだ。

「何かあったの?言って!」

「…」

「またそうやってはぐらかすの?」

恭介は沈黙を選んだ。

「ねえ?」彼は答えない。

「ねえ?」彼はまだ答えない。

「何か言ってよ!恭介!」恭介は紗弥香の剣幕に気圧されてしまった。これ以上彼女の言葉を黙殺することは出来ないと観念した。

「なあ、紗弥香。」

「何?」

「この世界の人間の殆どが知らないものが自分たちの生活を何の前触れもなく変えてしまったらどうする?」


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