Episode of Changing Zero 12
一方、ゼロのアジトでは、パソコンを見ている男と紅茶を飲もうとしている男がソファに座りながら喋っていた。
「レリューシュがやられ、レンギスも残量が減って帰投か…」
「全く、興味本位で行動するなとあれだけ釘をさしたのに…」ゼロの黒幕の一人であるレユート・ゼロが言った。
「私もあそこまでエネルギーを使うとは予想してませんでしたよ。そして、さらに予想外だったのが…」レンギスはそう言って紅茶を口に含んだ。
「第三勢力『陰の警告者』の乱入とその力ですね。」
「ああ。俺も少し彼らについて調べてみたんだが…妙なことに彼らの名前はネット上に出回っているのに実態が一切明らかにされていないんだ。」
「それは…国家権力が絡んでいるんですかね?」
「そうかもしれない。まず第一にあのような組織が出来ること自体がおかしい。普通、超能力者は能力の大小に関わらず一旦ドラゴンズに所属するはずで、その際に記録が残るはずなんだが…彼らは所属していた記録すらないし、レリューシュを倒したあの少女、秋原あすなといったか…彼女の戸籍謄本を少々グレーなルートで調べたら彼女の戸籍謄本の備考欄には何も書かれていなかった。」
「わざわざそう言うということは、他のドラゴンズに所属しているメンバーは備考欄に何か書いてあるってことですね。」
「そうだ。そしてレンギスが戦った後の二人についても調べたが結果は同じだった。」
「彼らは記録上一般市民として生活していることになっているが、本当は超能力者である…これは国家権力か何かを動かさないと隠蔽出来ませんよ。」
「確かに、あの真昼間に大阪の繁華街で超能力を使って、しかも当人はドラゴンズに所属していないのに公的機関から何も咎められないということは彼女の超能力のことは公的機関が完全に把握して、その上黙認しているとしか考えられないな。」
「それで、どうします?殺めちゃいますか?彼女達。」
「無理だろう。彼女らを殺すのは至難の業だ。それに、今はドラゴンズのことだけを考えていればいいんだからな。」
「そうですか?案外サクッといけるかもしれませんよ?ドラゴンズの方は。」
「それはない。ドラゴンズ日本支部には警戒すべき人間が三人いる。しかもアメリカからさらに三人トップレベルの能力者が来ているらしい。しかも、あいつは別格だ。」
「でも、覚醒どころか能力に気づいてすらいないんでしょう?」
「そうだ。だが、それでも十分強い。一筋縄ではいかないだろう。」
「警戒するに越したことはない…というわけですね。」
「ああ。」レユートはそう答えて側にあったカップに入ったコーヒーを苦そうに飲んで立ち上がった。
「レリューシュの回収には既に人員を投入した。レンギス、とりあえずお前はここで休んでろ。俺がドラゴンズの奴らの所へ行く。」
「くれぐれも無茶しないで下さいよ。」
「ああ。分かってる。十分エネルギーも補充した。」そう言ってレユートはアジトの玄関へと向かった。
「ところで、『彼女』はまだお眠り中ですか?」レンギスがソファに座ったままレユートの後ろ姿に声をかけた。レユートは足を止めてレンギスの方を見ずに言った。
「ああ。ぐっすりと眠っているよ。下手に起こそうとするなよ。」
レユートはアジトを出て行った。
アジトの扉が閉まり、しばらくした後レンギスは立ち上がり、別の部屋に行った。
「ほんとですね。ぐっすりとお眠りになられています。いつ起きるのでしょうか。私には分かりませんし、レユートにも分からないのでしょうね。こんなに…死んだように眠っていたら…」
レンギスは口元を緩めた。