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7話 意外な関係

 お礼を言われたシアは逃げるように街中を駆けていき、残されたユーリは迷子になっていた。

 そこに現れた親切そうな男について行ったユーリは襲われかけ、酒場の冒険者と名乗る少年に助けられる。

 彼に道案内をお願いするとお金を要求され、ユーリは渋々要求に従い、彼を雇うことにした。

「じゃ、行くぞ……」


 そう言いつつ彼は戻って来た。

 先に進まないのかな? なんて考えていると、また僕に手を差し出してくる。

 ……今度は先払いってことか?


「そうじゃない、手を出せ」


 布袋を取り出し、要求どおり銀貨を一枚取り出したところでそう言われた。

 ん? お金じゃないのか? って言うか手を出せって……さっき避けたじゃないか!


「お前、変な奴だな? 依頼が終る前に金を払うなんて……そのまま逃げられたらどうするつもりだ?」


 その上、おかしい人扱いかよ!

 そもそも、先払いか後払いかなんて知るはずがない! 何せ僕はここに来たばかりだ。

 まぁ、それは彼は知らないんだけど……。


「まぁ良い、ほらさっさと立て、鈍い女だな……見た目も悪くない上にそうだから狙われるんだ」


 やっぱり、コイツ嫌なやつだ……。

 今の今まで座り込んでいた僕は一人で立ちあがり、服についた汚れを軽く手で払う。

 そして、ぶっきらぼうな態度を取りつつ少年に話しかけた。


「ここから、どのくらいかかるんですか?」

「そうむくれるな、依頼はちゃんとこなす……露店街までは少し歩くが遠くはない安心しろ、それと報酬は着いてからで良い」


 そこはキチンとしてるのか、まぁ……持ち逃げするやつも居るだろうし、それはありがたい。

 嫌なやつだが、酒場の冒険者らしいし、シアさんの話なら信用は出来る。

 恐らくちゃんと送ってくれるだろう。

 ただ、今度は対処できるように警戒を欠かさないようにしておかないとな……。

 僕はそう考えながら少年の顔を見てもう一度依頼を言った。


「では、露店街への案内お願いします」

「おう、ここはゴロツキも多い、離れないように付いて来な」


 分かってますって……身に染みるぐらいにね。

 なにせ、たった今、危ない目にあってこの人に助けてもらったわけだし……って言うか名前さえ聞いて無いけど……流石にそれは不安だよな?


「あの……貴方は名前なんて言うんですか?」


 黒髪は僕の話に反応し、こちらをチラっと見るとまた前を向く。

 その態度がまた実に憎たらしい……いらっとくるな。


「人に名前を聞く時は自分から言うのが礼儀じゃないのか?」


 うぐ!? ……間違ってはいない。


「僕はユーリこれで良い?」


 本当はユウリなのだが、ナタリアたちにはユーリって呼ばれてるし、それで良いだろう。


「そうか、俺はバルド、この街の冒険者だ。酒場の冒険者だ……分かったか?」

「分かりました、酒場の冒険者のバルドさんですね」


 はぁ……やっぱり一言一言なんか引っかかる感じだよ。

 助けてもらった手前、失礼なことは言えないし、露店街までの我慢だな……。


 





 結果から言うと、バルドは口に出したとおり、ちゃんと露店街まで案内してくれた。

 目の前に広がるのは数時間前、シアさんと別れたその場所だ。


「依頼達成だな?」


 そう言うとバルドは手を差し出してきた。今度こそお金だろう。

 代金を手渡すと彼はニヤリと笑う。


「毎度あり……じゃぁな」


 今更だけどなんか変な感じだなぁ……宿には銀貨二枚で泊まれるのに案内には一枚か……高いなぁ。

 僕がしみじみと考えているとバルドは去って行こうとする。

 今度こそお別れだ。


「ユーリ様!!」


 そう考えながら見送っていると聞きなれた声が聞こえた。


「シアさん!! 良かった……急に走って行ってしまったので、困ってしまいましたよ」


 息を切らせながら僕の方へと走ってくる人は間違いなくシアさんだ。

 良かった、やっぱり戻って来て正解だ。


「申し訳ございません!! ナタリア様より昼間の間は付き添うように言われていたのにもかかわらず!」

「いえ、まぁ……お互いに無事でしたし、買い物を早く済ませてしまいましょう?」

「申し訳ございません……あら? そちらに居るのは……」


 シアさんの視線を追うとそこには先ほどの少年、バルドがまだ立っていた。

 固まってるけど……そこは仕方が無いだろう。

 シアさん美人だし、恐らくは見とれているのだろうな、その感情が羨ましい僕に分けてくれ。

 いや、それよりもシアさんは知らない人に付いて行っては駄目って言ってたなどう説明しようか……。


「えっとこの人は危ないところを助けてもらって、その……」

「そうだったのですか、流石はバルド……さん、ゼル様もさぞ鼻が高いでしょう」


 え? 僕まだ名前言って無いよな? それにゼルさんって僕が今日向かわないといけない酒場の店主さんじゃ?


「ま、まぁな、ところでししょ……いや、し、シアさん、もしかして……ユーリはナタリア……さんの知り合いなのか?」


 彼の態度に何かあると感じたのだろう、シアさんはにっこりと微笑んではいるが……。


「知り合いと言いますか――――」


 息を大きく吸うとコメカミ辺りをぴくぴくとさせながら大きな声を出し始めた。


()()()()ですよ、現在屋敷で生活をしています。彼女は田舎から来たばかりで、この街に疎く案内をしていただいて助かりました」


 な、なんだ? シアさんがいつになく怖いぞ……っていうかバルド、後ずさりしてませんか?


「あ、ああ……だから、道理で金……いやなんでもない」

「金? お金がどうされましたか……ああ、大丈夫です。()()()()()()()()()()()()()()()()は私が間に入り、報酬を決めさせていただきます」

「えっと、シアさん?」


 どういうことですか? とまでは怖くて聞けなかった。


「チッ!! おい、お前! なんで最初にこの人とナタリアがらみだって言わなかった!」

「うわぁ!?」


 周りの注目を浴びる中、急に腕を引っ張られてしまった……って言うか何で小声で話す!?


「知らないですよ! バルドさんとシアさんが知り合いってことも今、知ったんですから」


 そうだ、知らなかったことを責められても困る。

 そもそもこの人に会ったのは偶然だったわけだし……。


「ユーリ様はナタリア様の大事なお弟子様です。あまり手荒なことはなさらないでください」

「あぁ分かったよ、今回は特別だ。二人の顔に免じて、銀貨四枚で手を打ってやる……ほらよユーリ、余りだ、受け取れ」


 なに? 良く分からないけど二枚帰ってきた?


「銀貨二枚返したと言うことは案内に六枚も? 相変わらずお金に目が無いんですね。バルドさん」


 シアさんは案内だけで六枚と勘違いしているみたいだ。

 訂正してあげた方が良いかな? とは言え………………つまり、僕は金銭的に騙されてたみたいだ。

 それを元々知り合いだったシアさんが見抜いてくれて、追い詰めてくれたのか……。


「案内だけじゃない、馬鹿な野郎共から助けた分も合わせてだ……余計な分は返したから良いだろ? ったく」

「そうですか、ですが良くはありません、貴方の行動はゼル様の店の評価に繋がります」

「そっちはフィーナの奴がなんとかするだろ……アイツは底抜けに馬鹿だからな」


 フィーナって……僕はこれからその人に会わなければならないのだけど、不安になるようなことを言わないで欲しい。


「そんなこと言ってたらゼル様に怒られますよ、フィー……ナ様は間違いなくこの街一番の冒険者なんですから」


 おお、それは楽しみだな! きっとすごい人なんだろうな。

 多分……。


「一番ねぇ……まぁ良い、俺はそろそろ戻る。じゃあなユーリ、二度と会わないことを期待してるぜ」


 すまん、バルドすぐに会うことになると思うよ……。

 去って行ったバルドを確認するとシアさんは溜息をついた。


「ユーリ様、ご無事で何よりです……この度は本当に申し訳ございませんでした」

「い、いえ! 気にしないでください、僕もウロウロしてしまいましたし……」


 その結果、危ない目に合ったし……。

 本当、怖かった……僕は今は女の子な訳だし、気を付けないといけないな。

 で、でもまぁ……気を取り直して……。


「シアさん買い物を済ませてしまいませんか?」

「ありがとうございます。では、行きましょうか」


 今度こそ家具屋に向かった僕たちは予定通り店で椅子を買い。

 その後、シアさんはなにやら手続きを済ませているみたいだ。

 予定通り椅子を馬車で運ぶための手続きだと思う。


「お待たせいたしました。では、一通り街を回ってからっと言いたいのですが……先にゼル様の酒場に向かいましょう」

「あれ? 食料の買出しはしないんですか?」


 確か、そう言ってた気がするんだけど……。


「時間が掛かってしまいましたので、食料は私一人で買いに行きます。ですので、ユーリ様は先に酒場で休んでいてください」


 なるほど、確かに日も傾き始めてる。

 もう少し街を見たかったんだけど、仕方が無い……。

 明日ナタリアの友人にでも案内してもらえば良いし、取り合えず酒場に向かうとしよう。



 酒場街は丁度、街の中央にあった。

 そこには多くの酒場があり、冒険者と見られる人達が歩き回っている。

 まるでゲームの画面に飛び込んだ感じだなこれ……ゲームはあまりやった事は無いけど、見てた覚えがある。


「ユーリ様、ゼル様の酒場はこちらの月夜の花亭です」


 綺麗な名前の酒場だなぁ。

 きっと店主さんも綺麗な人なんだろう。

 案内されるまま酒場に入る僕の目に飛び込んできたのは――。


「良く来たな!! ってなんだ! シアじゃないか!!」


 ……ガチムチ系のオッサンだった。


「お久しぶりです。ゼル様」


 この人がこの月夜の花亭って名前付けたのか? 奥さんが居て、その人がつけたのか?

 そもそも、月夜の花というか荒野の岩肌とかそんな感じの人なんだけど!?

 いや、いやいやいや、流石に初対面でそんなこと思ったら失礼か、人は見かけで判断してはいけない。


「そっちのお嬢ちゃんは初めてだな、お前さんも召使いかい?」

「い、いえ、僕はナタリアの弟子で――――」

「何ィィィ!? 弟子ッ!? アイツ弟子取ったのか!?」


 そ、そんなに驚くことなのだろうか? 後、声がでかくて僕がビックリする。


「はい、弟子の――」

「いやー!! そうかそうかっ!! 来る奴、断り続けてたナタリアが弟子かッ!! 人は変わるもんなんだな!!」


 ………………。


「えっと…………」

「で!! 何しに来たんだ? そうだ! お前さん立派な師匠がいるんだ! 名ぐらいは名乗った方がいいぞ!」

「さっきから名乗ろうとしてるんだけどっ!?」


 ついでにその度に大声出されてビックリしてるんだよ!!


「あぁ? そうだったのか?」


 ゼルさんは確かめるようにシアさんの方を向く……嘘じゃない、嘘じゃないぞ?


「はい、ユーリ様が名乗ろうとする度に大声を出し、ユーリ様が脅えてらっしゃいました」


 待って、僕、脅えてないビックリしただけなんだけど!?


「そうか、そうか! 悪かったなお嬢ちゃん!!」

「い、いえ……改めまして、ナタリアの弟子のユーリと申します……」


 名乗ろうとしてたのが嘘じゃないのは分かって貰えたけど、別の誤解が生まれてることには釈然としないな……。


「あーなんだ、さっきの感じでいいぞ、俺はぁこう、な? 丁寧な話し方されると……こう背中が痒くなっちまってよ……シアに関しては立場があるから仕方がねーが、お前さんはあのナタリアの弟子だろ? もっと偉そうにしてもいいんだぞ」


 あのナタリアって……僕の師匠である彼女はこの人にとって一体何なんだ?

 まぁ、確かにいつも偉そうではあり、異世界に渡れるほどの魔法を使えるのは現状彼女ぐらいしかいない(本人談)らしいけど……。

 とはいえ、ずっと敬語と言うのも疲れるものがある。

 だが、それとこれとは別だ、僕はあくまでナタリアの弟子この人はナタリアの知人。

 だったら、敬語で話すべきなんじゃないのだろうか? ナタリアには敬語使って無いけど……。

 何故か分からないけど親近感があって、気がついたら敬語を使ってないんだよなぁ……。


「僕は師匠であるナタリアの知人に対して、丁寧ではないのは失礼かと思いますので……」

「ほう? じゃぁ、なんでその師匠を呼び捨てなんだ?」


 ぐ、痛いところをついてくるな……。


「お前さん、ナタリアにいつも敬語なのか? ナタリア様とかお師匠様とか言ってるなら、それはそれで良いが、それは無いだろ? 最初から呼び捨てだったもんなぁ」

「う…………」


 意外と鋭いなこの人……それとドヤ顔でじっと見ないでくれ……。


「どうなんだ? ユーリお嬢ちゃん」

「はぁ……分かった、偉そうとまでは行かないけど、いつも通りで失礼するよ」


 僕の言葉に満足したのか笑顔を見せるゼルさん、ナタリアの知人だけはあって悪い人ではないな、声はでかいけど……。

 とにかく、良い人そうで良かった。


「げっ!?」


 そう思っていると突如放たれた嫌悪を含む声、僕はその声のした方を見る……。

 その先には階段があり、そこには案の定先ほど助けてくれた上、詐欺をしてくれた冒険者の男、バルドが僕の顔を見てあからさまに嫌そうな顔している。


「さっきぶりですね、バルドさん」


 態度と詐欺に多少……いや、かなり頭にきていた僕は嫌味をたっぷりこめてそう言うと……。


「お、おう、そう、だな。おい! ゼルの親父!! 俺は寝る。金になりそうな依頼があったら呼べ!!」


 そう言葉を返し二階へと戻っていくバルド……よっぽど僕と顔を合わせるのがイヤだったみたいだ。


「なんだ、バルドと知り合いなのか?」

「うん、先ほど助けてもらって、世間というものを教えてもらったよ……」


 詐欺をされたとまでは言えないからな、これが打倒だろう。


「そうか、アイツ金に目が無くてな。迷惑をかけただろうが、悪い奴だけには手を貸さない、そのところを差し引いてくれよ? それにあいつは困ってる女は見捨てない、金は要求するがな」


 そうなんだ……女性は見捨てないって案外紳士なのかな? まぁ、僕の場合は複雑な気分になるけど、彼が完全悪というわけではないのは分かる。

 きっとそれを言いたいんだろうな、ゼルさんは……。


「助けてくれたのは事実だ、それ以上は言わないよ」

「そう言ってもらえると助かる、さてお前らは何しに来たんだ? 場合によっちゃ優先するぞ」


 おっと、危うくここに来た理由を言うのを忘れかけてた。


「僕はここに寝泊まりしているフィーナさんに用があって、シアさんは買い物で、馬車を貸して欲しいとの事なんですが……」

「先日、家具が壊れてしまいまして、それを運ぶのといつも通りの食料の補充です。ゼル様、お手数ですが、フィー……ナ様に馬車を貸してもらえないでしょうか?」


 馬車の持ち主……ゼルさんの知人ってフィーナさんだったのか、馬車を持ってるって一体どんな人なんだ!?


「ああ、そういうことか、今フィーは依頼で離れてるが今日には戻る。丁度良いな」

「それとナタリア様の言いつけで、このユーリ様をここに泊めていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」

「もちろん、宿泊料は払うよ、お金ならある」


 僕は銀貨二枚を取り出しゼルさんへと渡した。


「ああ、二階の三号室が空いてる。好きに使いな!」


 ゼルさんはそう言いながらカギを手渡してきた……なるほど一応あるのかカギ。


「では、ユーリ様、私は買い物を済ませてきます。お部屋にてゆっくりお休みください」

「はい、分かりました気をつけてくださいね」

「……ユーリ様、私にもいつも通りで大丈夫ですよ」


 ん?


「えっと……?」

「いえ、ユーリ様は主人であるナタリア様のお弟子様です。ですので――」

「つまり、シアは自分だけ他人行儀はイヤだって言ってるんじゃないか?」


 ああ、なるほど全くそんなつもりは無かったのだけど、シアさんはそう思ったのか……。


「分かったよ、シアさん気をつけて行ってらっしゃい」

「はい、では、行ってまいります」


 彼女は僕に初めて笑顔を見せると店の外へと走り去っていった。それにしてもなにか顔が熱いな。

 これはアレだろうかシアさんの顔にドキッとしてしまったのだろうか? いや、女の子(自分)の裸を見てもドキドキしたり興奮したりはしなかったのだ。

 だから、違うのかもしれない……ただ、本当にそうだとしたら若干嬉しい気持ちにもなる。

 ……いや、それよりもシアさん一人で行かせてしまったけど大丈夫なのか?


「あの、さ……ゼルさん、シアさん一人で大丈夫かな?」

「あ? あー大丈夫だろ、アレでバルドの師匠だ」

「そうなんですか、なら安心――――へ!?」


 今なんて言った!?


「え、え? バルドさんの師匠? シアさんが?」

「ああ、アレで格闘術だけならウチの稼ぎ頭のフィーと並ぶ……いや、家事もこなせることを考えると……実質、アイツの方が良いかもしれん」


 な、なるほど……確かにシアさんの料理はおいしい。

 ってそうじゃない、ゼルさんは冗談を言っているのだろうか?


「元々、まぁ、色々あったがウチの冒険者として働いてもらってたのがナタリアの奴が引き取ると言い出してな。アイツの頼みじゃなきゃ冒険者を続けて貰いたいところだったんだが……」


 ちょ、ちょっと待て全くそうは見えないんだけど……。

 それに稼ぎ頭と並ぶか、それ以上の実力者をポンと知人の所へ転職させるなんてそれで良いのかこの人!?


「ナタリアはナタリアで事情がある。家の中や暗い洞窟の中なら自由でも、表じゃそうじゃない。買いだしに行くのだって一苦労だ。腕の立つ上に家事もこなせるシアを気に入るのは道理って物だ。ま、本人としては、ただ買い物が面倒なだけだろうがな」


 ああ、なるほどナタリアに聞けばそう答えるのだろう、(さいわ)い目は普通みたいだけど……肌や髪は日光に当ったら駄目だろう。

 髪ならウィッグをつけるって手もあるけど、肌は日焼け止めのようなものが有っても難しい……事実、晴れている日は窓にも近づかないし……。

 外に出る時はいつも婆さんスタイルだ。

 そのための変身ローブも、いざと言うときに魔力が足りないってことになりえるから、自分の護衛というか、外出での用事を済ませる為にシアさんを雇ってるってわけか……。


「まぁ、シアは普段がアレだ。気がつかないのも無理は無いが、信頼は厚い。だからユーリ、今回はお前さんを安全に街に連れて行くための護衛に選ばれたってわけだな」


 確かに運良く怪物に遭わなかったから気にしてなかったけど、遭遇してしまっていたら対処が出来る人がいないと駄目だ。

 シアさんから聞いた情報からだと、僕でも逃げることぐらいは体が動いてくれれば出来るはずだ。

 だけど、ナタリアは安全を最優先してくれていたというわけだな、ちょっと嬉しい。

 それにしてもあのシアさんがバルドの師匠か――。


「じゃあ、フィーが戻るまでもう少しかかるだろう、飯でも食って待ってな」

「ありがとう! 遠慮なく頂くことにするよ」

「あったりまえだ! ちゃんと元とって帰りな!!」


 それって店側が言って良い言葉なのか? だが、言った通り遠慮なく頂こう。


「少し待ってな、とびっきりの料理を食わしてやるよ!!」


 フィーナさん……一体どんな人なのかな?

 料理を待っている間、ぼんやりとそんなことを考えていると、店の入り口が勢い良く開けられた。


「ただいまー!! おじさんっ! お腹空いたよ!?」


 その声は店の中に響き渡った。

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