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俺の夢は異世界ハーレムだったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
4章 冒険者稼業も楽じゃない
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52話 ユーリとフィーナ

 トロールを倒し、リラーグへと戻った一行に領主の息子シルトからの呼び出しの手紙があった。

 どうやら結界が完成したと言うことで、シルトと共にそこへと向う。

 ユーリはその結界の中で「フレイムウォール」の魔法を唱えると……結界は壊れてしまった。

 実験を終えたユーリはシルトから食事に誘われたのだが、フィーナが行かないと聞くと誘いを断るのだった。

 翌日、僕たちが食事を取る為にテーブルへと席に着いた時だった。


「おはようございます」


 そう言って現れたのはシルトさんだ。


「お、おはようございます?」


 朝早くからどうしたのかな? それに、領主の息子のはずなのに彼の周りには護衛も無い。

 いくら、人さらいの一件を解決しても、他の事件に巻き込まれるかもしれないのに無用心じゃないだと思うけど?


「えっと朝……早く、どうしたの?」

「いえ、結界のことで……昨日屋敷の者と話をしまして、ユーリ様にもお伝えしようかと」


 ああ、なるほど……


「でも、それなら、連絡をくれれば僕たちが出向きましたよ? わざわざ足を運ばせるなんて……」

「い、いえ、とんでもない! 私は朝、街を見て回るのが趣味なんです。そのついででして」


 それなら良いけど……なんか、理由が無理やりっぽいような?


「それで昨日の結界ですが、知っての通りあれ二重結界です」

「二重結界?」

「名前の通り二つの結界を合わせた複合結界だよ?」


 本当に名前そのままなんだ。


「そ、それで……そのなにか対策が見つかったんですか?」

「ええ、それなんですが……新たに結界を作るしかないとのことなんですよ」

「流石、ユーリだねー」

「ええ、そこで魔法のことでお話を……」


 そ、そうは言われても僕、ナタリアに教わったことぐらいしか、分からないし……


「少し、お時間を頂いても……大丈夫ですか?」

「えっと……」


 シルトさんも魔法が使えるみたいだし、なにか為になる話を聞けるかもしれない。

 でも、なんだろうフィーがにっこりしながら怒っている気がする。


「今日はその、知り合いの所に顔を出そうかと……」

「そう……ですか、でしたら……またお話をお願いします」

「は、はい」


 とはいっても、結界作成には僕の手って必要なのかな?

 知識は無いし、最後の確認だけで良いような気がするなぁ……


「では、失礼いたしました」


 丁寧に礼をした彼はそそくさと酒場を出て行ってしまう。

 んー、本当に散歩の片手間で来たのかな?


「ユーリ、良かった、シルト、お金持ち」

「ん? なんのこと……ってフィー?」

「どうしたの?」

「なんで……僕、後ろから抱きかかえられてるんでしょうか?」

「さぁ?」


 さぁ? ってフィー……理由はフィーにしか分からないんじゃ?

 シュカはシュカでなぜか首を振ってるし、一体なんなんだろう?


「えっと……」

「シルト、ユーリ、好き」

「はい!?」


 ちょっと待て、どこにそんなイベントあったの!? 無いでしょ!?

 会ったのだって数回、というかまともに話したのは昨日だよ!?


「ユーリ、頑張れ」

「頑張らないよっ!!」


 なんで頑張らないといけないんだ……というか、シュカが心なしか活き活きしてるのは気のせい?

 しかし、男と恋人に? ないない、いくら今は女の子だからって……それはご勘弁願いたい。

 以前ナタリアに言われた、男でハーレム作れば良いだろう、なんてことを実践する気は無いし、例え一人でも止めて欲しい。


「って、ちょ……フィー?」

「ん~?」

 

 なぜか、じわじわと締め付ける力が強まっていくから、苦しいんだけど……っていうか当って……


「……やっぱ、ユーリ、フィーナ、好き?」

「……え?」

「ユーリ、寝る時、緊張してる、今も」


 そりゃ緊張するよ、お互いに服着ててもパジャマはそこまで厚い服じゃないし……色々って……あれ?

 確か、僕はそう言うのに反応しなくなったはずだ。

 かといって男性に魅力を感じるかっと、言われるとそうじゃない。

 でも、女性……シアさんやナタリアにドキっとしたことはある。

 フィーにはこの旅の途中、何度かそういうことが起こっているわけで……どういうこと?


「シルト、残念」

「ええっと……」

「フィーナ、頑張れ、シュカ、気にしない」

「が、頑張れって……私?」


 名指しで頑張れと応援されたのに、なんで疑問系なのかな……いや、それよりも――

 一応反応してる……? 鏡で自分の身体を見て反応しなかったのは、ただ単に自分の身体だったから?


「え、えっと……シンティアの所に行こうカー?」


 そして、なんで突然話題を別方向に……語尾もなんかいつもと違うよ?

 確かに、話題がそれれば僕も助かるんだけど……


「…………」


 シュカは話題がそらされたことがショックだったのか、しょんぼりしてるし……いや、うん……僕もフィーも困ったから、ちょっと控えめにしてもらうとして……


「依頼も入ってないみたいだし、会いに行こうか?」

「そうだねー?」

「逃げた……」

「そ、その話は良いから、ご飯食べよう?」


 フィーはそうシュカに告げると、ようやく僕から離れて席に着き、すっかり覚めてしまった食事に手を付けた。

 スープは冷たいはずなのに……以前、僕が教えた様に息を吹きかけて冷まそうとしてるけど……


「フィー?」

「ん?」

「もう、冷まさなくても……大丈夫なんじゃ……」

「じょ、冗談だよ?」


 フィー、なんで君はそんなに動揺したように……





 その後、僕たちはフィーが言った通り、シンティアさんの家に足を運んだ。

 朝早いってこともあるのだろう、まだ店は空いておらずドアをノックするが、誰かが出てくる気配は無い。


「あれ? まだ寝てるのかな」

「もう少ししてからもう一回来ようかー」


 僕たちが、そう店を去ろうとした時、扉が開く音がし……


「た、助けてくれませんかねぇ……」


 そう、苦しそうに呟くテミスさんの声がした。


「テ、テミスさん!?」

「なにかあったの!?」

「……敵っ?」


 見た所、外傷は無い。

 でも、シンティアさんは? もしかして……まだ、人さらいをしてる人たちが……


「お姉ちゃんが……」

「シンティアが――?」

「さ、さらわれたんですか!?」

「調合失敗し――」

「「「……え?」」」


 そう最後の言葉を告げると、テミスさんはその場に倒れ、フィーはなにかを感じたのか慌てて鼻をふさいだ。

 もしかして、換気をせずに調合をして、失敗その所為でテミスさんが倒れた?

 いや、もしかして……ではなくそのままかな?


「シュカ、窓開けに行こうか」

「分かった」


 僕たちは店へと入り、窓と言う窓を開け放ち、即座に換気を行う。

 それにしても凄い臭いだ……でも、トロールの後だとそこまできつくは無いかな?


「ふぅ……」

「これで、全部、開けた」

「もう、大丈夫ー?」

「窓は開けたけど、まだちょっと臭いが残ってると思うよ」


 僕の忠告を聞くとそれぐらいなら、っとフィーは手を離し、部屋の中を見渡す。

 釣られて僕も部屋を見渡したけど……薬草だらけだ。


「って、シンティアさんは!?」


 調合中に失敗したなら彼女は――


「あら? 皆さん、どうしたんですの?」


 ずいぶんとのんびりした様子で、彼女は顔をみせてくれたけど……見た所なにか変わったところはなさそうだ。


「シンティアさん!? 大丈夫ですか?」

「え、ええ? 大丈夫ですけど……ユーリ様?」

「な、なんですか?」

「やはり、私たちには……その口調なんですね……」


 そこなの!?

 

「えっと、テミスから調合失敗したって聞いたけど、大丈夫なの?」

「ええ、大丈夫ですわ」

「で、でも、テミスさん倒れて……たよ?」

「あら、変な成分でも出ていたんでしょうか?」


 へ、変な成分って大丈夫なんだろうか?

 いや、テミスさんの様子からしても、危ないものが混ざってそうな気がするんだけど……


「あれと、あれと混ぜたわけですから……分かりましたわ」


 って言うか僕たちも少なからず吸っているはず、これで毒とかだったら早々に魔法を使った方が……


「恐らく、副作用で睡眠作用がありますのね。大量に吸わない限り、大丈夫ですわ」

「……えっと、なんで……シンティアさんは大丈夫なの?」

「薬師ですから、当然ですわ」


 そんな理由で大丈夫なんだ……


「そ、そうですか」

「その、シンティアさん、他になんか効果とかってありそう?」

「いえ、特に身体に危害を加える物は使ってませんので……大丈夫ですわ」


 今、大丈夫ですわ、まで若干の間があったような?


「と、とにかく、この様子じゃテミスは寝させてあげたほうが良さそうだね?」

「ええ、折角来て頂いたのにすみません、仕方が無いですわね……テミスには言っておきますわ」


 テミスさん、なにも悪くないのに……なぜか、彼女が悪いことになっているような?

 しかし、このままここに居ても悪いし、別の所に行くしか無いか……


「じ、じゃ、また来ますね」


 僕たちはシンティアさんの店を後にすると、街の中を当ても無くぶらぶらと歩く……

 改めて思ったけど、大きな街だ。


「どこ、行くの?」

「んー……ご飯は食べたばっかりだから、そうだ!」

「どうしたの、フィー」

「時計塔の上に登ってみよう?」

「え?」


 それは、行きたい。

 行きたいけど、相当高いだろうし……フィーって高いのは……


「フィー、高いの苦手」

「あ、足が着いてないのが苦手なだけだから大丈夫だよ?」


 そういえば時計塔に登ったって前に言ってたっけ?


「じゃぁ、行ってみようか」

「う、うん……大丈夫」


 本当に大丈夫なのかな?

 心配しつつも僕たちは時計塔へと向かい、展望台へとついたわけだけど……


「景色、良く、見える」

「だね、遠くまで見渡せるよ」


 魔法を使わなくてここまで見えるなら楽で良いね。


「でしょ? 良い景色なんだよー?」


 それに浮遊感が無いからなのか、フィーも大丈夫そうだし……ここなら少しばかり暇を潰せそうだ。

 それにしても……


「階段は疲れたけどね……」

「そ、それは仕方ないよ?」


 東京タワー展望台までエレベーター無しで上がるような物だし、この世界の人って一般人でも、地球の人たちより身体能力高いんじゃって思うよ。

 だって……


「人も結構居るね……」

「うん、観光地だからねー?」


 そうなんだ……って口にしようとした時、僕の目にある現場が目に入った。

 それはさも当然のように宙を浮き、先導する人と連れてこられる人たちだ……


「あ……えっと?」


 見間違えようも無い。

 あれは僕が得意な数少ない魔法、エアリアルムーブ……

 つまり、空を飛ぶ魔法な訳で……

 まぁ、当然だよね? あんな長い階段は常人には無理だよって……僕、良く倒れなかったなぁ……


「ああいう風に来る時もあるよ?」

「フィー、別に責めないけど、その言い訳は苦しいよ?」

「空、苦手、分かってる」

「うぅ……」


 まぁ、黙ってたのは空で行こうって、言われるのを考えたからだろうけど、気にしなくても階段で行くのに……


「とにかく、折角来たんだから……なにか、面白い場所無いか探してみよう?」

「面白い場所?」


 僕は頷き窓へと視線を戻し、街並みを眺める。


「んー、なにかあるかなー?」


 フィーも一緒になって眺め始めたけど、特にこれと言って……


「――っ!」

「シュカ?」


 どうしたんだろう? 今、なんか一瞬、顔が強張ってた感じがしたような?


「奴隷、市場、なにかある」

「市場って……潰れたはずだよ?」


 僕もそう聞いたけど……目を向けてみると、確かに人が集まってるみたいだ。

 もしかして、まだ奴隷が?


「見に行ってみよう」

「そうだね、もし……奴隷を売ってるようなら、領主さんに言わないと……」

「…………」


 小さく返事をし、僕たちは奴隷市場へと急ごうとするが、違和感を感じ振り向くと……シュカはその場で固まっている。

 ショックを受けてるんだろう……無理も無い、彼女はあそこに居たんだから。


「シュカ、急ごう!」

「分かった」


 僕の声に気がつき、シュカはようやくこっちへと走ってくる。

 その目には憤りとも、悲しみとも取れるものが見えた気がした。









「えっと……」

「と、とりあえず……最悪の状況では無いね?」

「予想外」


 一体……これはどういうことだろう?

 僕たちの目の前に広がるのは以前、奴隷たちが自分達を売り込んでいた表の市場。


「美味しいですよー!」

「こっちにも寄ってってくれよ!」

「ほら! 賭けだ賭け! 俺に一発でも当てれたら金貨一枚だ!」


 慌てて駆けつけた僕たちが見たのは……

 かつて、そこで自身たちを売り込んでいた奴隷たちが、店を構えていると言う状況だった。

 これは……もしかして……


「お祭り?」

「美味しそうな物、いっぱい」

「みたいだねー? ちょっと、見て回ってみようか?」


 丁度良いし……これは嬉しい発見だ。

 僕たちは元奴隷市場を練り歩く……本当に祭りだ。

 わたあめやりんご飴、今川焼きなんかは勿論無いけど、串焼きやタリムのマネだろうか? ガレットもあるし、ちょっとしたゲームもある。


 その中でも、シュカが気になってたのは……


「お、なんだ? 可愛いお嬢ちゃんたち、俺に挑戦するか?」

「えっと……」

「シュカ、する」


 そう、入った時に聞えた攻撃を一発でも当てられたら、金貨一枚って言うゲームだ。


「おう、じゃぁ銀貨五枚先払いだ。ルールは簡単、お互いに素手だ……例え当らなくても俺が殴ったり、嬢ちゃんが俺に一発でも当てれたら俺の負けだ」

「分かった、早く」


 シュカは僕にナイフを手渡すと、男に対峙するように立つ……


「悪いなお嬢ちゃん、手加減はしないぜ」


 彼は自信満々に笑い、シュカから視線を離さなかった、が……


『おおおおおっ!?』


 シュカが素早く距離をつめたかと思うと、男はすぐさま横に移動し……避けたっと思った所をシュカは大地を蹴り、以前に見せた強引な方法で再び懐に潜り込み……

 勢いをそのまま維持しながらの一撃を男へと叩きこんだ。


「うそだろ?」


 そう思うのも仕方ない。

 僕が目で追えたのが不思議なぐらい、速い攻撃だったわけで……


「もう、一回」

「お、おい、流石に負けると分かりきってるやつとは、もう戦えないぜ! 商売にならないぞ!?」


 シュカに金貨を渡すと、男は困ったように言い放つ、まぁ……その通りだよね。

 でも、シュカとしては……まだ、やりたいみたいだ。

 恐らくあの子に渡す為にお金を稼ぎたいってことなんだろう……

 とはいえ、言われたことが分からない訳じゃない、彼女は渋々といった感じで戻ってきた。




 その後も僕たちは祭りを心ゆくまで楽しんで、市場を去ろうとした所……見知らぬ男性がこちらへ走ってくるのが見えた。


「や、やっと、見つけましたよ! フィーナさん!」

「……ふぁ?」


 いきなり、フィーの名前を呼んだ男性の顔には焦りが見えているが、対照的にフィーは先ほど買ったガレットを美味しそうに頬張っている。


「あの、貴方は誰ですか?」

「すいません、オレはクロネコの兄貴の部下でゲンと良います」


 な、なんか顔が怖いし、そっち方面の人っぽい言い方ですね?


「ん? んー? おふぉいふぁした」

「フィー、食べるか、喋るかどっちかにしよう?」

「あ、あの食べながらでも、良いので聞いてもらえますか」

「クロネコ、なにか、あった?」


 シュカの言葉に反応する部下、ゲンさんは神妙な顔をし口を動かした。


「ええ、昨日の夜……兄貴が以前、交流を結んだオークの村から……鳥が飛んで来たんです」

「ふぉれへ?」


 ん? オークって……


「ええ、内容はスライムの大量発生でした……スライムでしたら、兄貴一人でもなんとかなります」


 オークがスライムに……っていうか、オークって魔物だよね?

 いやいや、オークって名前の人かもしれない。


「調査に行って、なんとかなる様なら……兄貴が倒す手筈だったんですが……」

「んくっ……戻って来てないってこと?」

「ええ……」


 内容は分かったけど……


「フィー、オークって魔物じゃないの?」

「魔物だよ? でも、知能はあるし、彼らなりの礼儀を通せば危害は加えられないよ?」

「そ、そうなんだ……」


 僕が困惑する中、フィーは丁寧に説明をしてくれる。

 どうやらオークは人の言葉を理解し、危害を加えられた場合は攻撃してくるけど、危害を加えず手土産を持って、長の所に挨拶に行けば客人として扱ってくれるらしい。

 見た目は醜悪でゴブリンやトロールみたいだけど、性格はいたって温厚とのことだ。


「それに……オークは別名、エルフの騎士とも呼ばれるんだよー」

「エルフって、豊穣の精霊……だったよね?」

「うん、エルフの近くには必ずオークもいるの森族(フォーレ)は昔から交流があるし、怖くは無いよ?」


 うーん、ゴブリンといい、オークといい……名前が一緒でも随分違うんだなぁ……


「それで、兄貴を探していただけませんか?」

「クロネコはいつ頃出たの?」

「早朝です……ここら辺の夜行性の魔物は足が早くありませんし、馬で……」

「その、オークの村って近いんですか?」


 ゲンさんは僕に目を向ける。


「貴女がユーリさんですね……」


 こ、怖いなぁ……本当にそっち方面の人にしか見えない……

 そんなことを考えていると、地図を広げて指で指し、丁寧に教えてくれた。


「ここがリラーグ、そしてこの森が」


 彼は、ほぼ真っ直ぐにリラーグから、西にある森へと指を動かし……森の中心でトントンと地図と叩いた。


「オークの住む森です」

「うーん、でもスライムかー」

「なにか、問題があるの?」

「うん、スライムってオークや私の様な力任せの攻撃って効かないんだよね?」


 そうなの? あっという間に倒せそうな感じなのに。


「スライム、核壊さないと、増える」

「核?」

「うん、刺せば……なんとかなりそうだけど……シュカとユーリに任せるよ?」

「分かった、シュカ、頑張る」


 ぼ、僕も!? 大丈夫かな……

 刺すってことは……マテリアルでどうにかするしかないよね?


「あ、ありがとうございます!」

「まぁ、おたがい様だからね?」

「それで、先に言っておくことがあります」

「なんですか?」


 ゲンさんはもう一度、地図を見るように促すと森から更に西……

 森を抜け、少し先の所の山脈を叩く……


「森は決して抜けないでください……ここは――グリフィンの巣です」

「分かった、馬を借りて行こうか?」

「そうしよう」


 ちょっと遠いけど、空で行って肝心な時にフィーが動けないと困るし……

 もしかしたら、いや……スライム以外のなにかが居るのは確かだろう。


「兄貴をよろしくお願いします!」


 頭を下げるゲンさんに僕たちは一言言うと馬小屋へと向け走った。


「森に入ったら、まず獲物を狩るよ?」

「獲物?」

「オークへの手土産、武装した人が来たら、まず警戒するからね?」


 確かに、いきなり武器持った人たちが自分たちの住処に来たらそうだよね……


「だから水辺には最初は近づかないようにしよう? シュカとウンディーネに水の場所はお願いするね?」

「分かった、任せて」


 なるほど……スライムは水辺に居るんだね。

 倒せるなら倒してしまえば良いけど……大量って言ってたし、オークから情報を貰った方が良いってことかな?


「僕は?」

「うん、危なくなったら、いつも通り助けてね?」


 フィーはそう言葉にし、僕へと顔を向ける。

 その顔はいつも通りの笑顔で――


「分かった、なんとかするよ」


 こんな時に不謹慎だけど、心臓が跳ねた……

 やっぱり、そういう感情が無くなった訳じゃないのかな?

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