プロローグ3
リラーグでの初の依頼をこなしたユーリたちは、龍狩りの槍の依頼をこなしていた。
前回の様に人を相手としない依頼にほっと胸をなでおろすユーリだったが?
「ユーリ!!」
フィーが声をあげる。
何匹か二人の攻撃をかいくぐって来たのが、こっちに向かっているみたいだ。
「我が意に従い」
僕は矢を複数取り出すと……詠唱を始める。
狙いは……今まさに僕へと目掛けて、ボロボロの剣を振りながら迫ってくる魔物たち……ゴブリンだ。
「意思を持て……マテリアルショット!」
以前よりは大分、融通の利くようになった射撃を解き放つと……
僕の意思とは……やはり違うものの、矢はゴブリンへと叩き込まれる。
「……ふぅ」
辺りを見回すと、ゴブリンの死骸が複数体転がっている。
大きさは違い、醜いものの……人に近い姿をしたそれを倒したことに気持ち悪さを感じながらも、僕は詠唱を口にする。
「我らに天かける翼を、エアリアルムーブ」
空へと飛び上がった僕は……遠くを見回してみるが、特に動く影は無いようだ……
「ユーリ! シルフとドリアードは大丈夫って、言ってるよー?」
「分かった! こっちも一応見たけど大丈夫みたいだよ、フィー」
魔物がいないことを確認した僕は、地上へと降り立ち二人の方へと向かう。
二人と言うのは言うまでも無い。
フィーとシュカだ。
「ゴブリン、多い」
「だねー、いつもはもっと少ないんだけど、どうしたんだろ?」
ギルドの事件から数日過ぎて、僕たちの所に入ってきた依頼は……リラーグ周辺でゴブリンが人を襲うから、退治してほしいというものだった。
フィーの言うことでは、ゴブリンと言うのは頭が良く、人にちょっかいを出す時は勝てると分かっている相手だけらしい。
というか、本気で相手にすると返り討ちに遭うのを理解して、それはイタズラに留まっているらしいんだけど……
「うーん、冒険者相手に武装をしてくるゴブリンなんて、聞いたことが無いよ……」
僕としては、それが普通なんだけどなぁ……
「ゴブリンの討伐依頼って……そんなに無いものなの?」
「うん、魔物とは認定されてるけど、リラーグでは友好関係にあるはずだよ?」
「魔物と友好関係?」
なんか、ほのぼのとしてる感じがするよ?
「厳密に言えば違うけど……ゴブリンは巣穴を広げて移動するから――」
「鉱石残る、人拾う」
「なるほど、確かにそれはある意味友好……共存関係なのかな?」
それでいて人にあまり危害を与えないって感じかな?
「でも、ご飯盗む」
「だねー、色んな罠を張って、食料だけ狙うみたいだよ?」
ま、まぁ……それぐらいなら少し多めに――
「それに、根こそぎ持っていくみたいだね?」
「全部なんだ……」
でも、これと言って危害は無いように見える。
食料に関しては困るけど、護衛さえ連れて行けば良いだろうし、なんて言ったって数が多くて面倒だけど……僕でさえ簡単に倒せる魔物だ。
エルダーウィローよりちょっと強いぐらいで、ドレイクバードの方がまだ怖い。
これぐらいなら、新米の冒険者だって数人居れば護衛が務まるぐらいだよ。
「まぁ、取りあえず、戻ろうかー?」
「うん……」
でも、今回はどうも様子が違うみたいで……僕は辺りのゴブリンの死体に目を向けると……
そこには、リラーグの武具店で見かけた装備を身につけているゴブリンたちが横たわっていて……
「ユーリ、どうしたの?」
「ん? いや、ちょっと気になっただけだよ」
「シュカ、疲れた」
「わ、分かったよ、すぐに戻ろう」
どうやら、冒険者を狙っているみたいだ。




