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28話 精霊医師?

 宿へと戻った二人の元に、先ほどの男たちが訪ねてくる。

 彼らは、ユーリを精霊エルフだと思い、その力で富を得ようとしいた。

 話の中で、フィーナと精霊に対する言葉に、苛立ちを覚えたユーリはルクスを使い、男たちを退散させる。

 ユーリは、一般人に魔法を使ったことを悔いるが、戻ってきたマリーは良い気味だと言い笑った。

 その翌日……

 翌日、朝食を終えた僕たちは、マリーさんにお手伝いすることが無いか、尋ねてみようとした。


「あの、マリーさん」

「なんだい? あ、ちょっと待ってな」


 マリーさんが入り口の方へと、顔を向けてるけど……どうかしたのだろうか?


「村長! 朝から、どうしたんだい?」


 後ろを振り向いてみると、そこには中年の男性が立っていた……

 あの人が村長だとしたら随分、若い村長だな。

 いや、それより、なにしに来たんだろう? マリーさんの様子を見る限り、いつも来る訳じゃなさそうだし……


「いや、ちょっと用事があってな、貴女たちが、村を救ってくれた冒険者だな?」

「は、はい?」


 随分と砕けた口調の村長さんだな……いや、前の村長さんの方が、村長っぽい感じがしたよ? 


「すまんが……早々に、発ってくれないか?」

「……どうして?」


 フィーナさんは若干、不満そうな声を出す……というか、僕も同じ気分だ。

 何で、村を出て行かなければ、いけないんだろうか?

 昨日のような人たちばかりでは、無いだろうに――


「……村長、アタシはそんなの納得できないね……なんで、村を助けた子たちを追い出さなきゃ、いけないんだい?」

「俺も納得している訳では無い。だが、一部連中がな、なにやらよくない話をしていたと話を聞いてな。村の中で抗争されたら困る、なにより恩人を殺させるわけにはいかない……無礼を承知の上、もう一度だが頼む……冒険者よ、すぐに発ってもらえんか?」


 一部の連中って昨日の人たちかな?

 やっぱり、仕返しに来るつもりなのか……そうと分かれば仕方が無い。


「……分かりました」

「ユーリ!?」

「わざわざ、危ないことを伝えに来てくれたんだし、今は先に行って……帰りにまた立ち寄ろう?」


 本音を言うと、少し仕事はしたかったのだけど、フィーナさんまで狙われているのでは、安全優先で村を出てしまった方が良い。

 準備とか色々したいけど……そこは、なんとかするしかないか……


「……すまない、これは少ないが、村を救ってもらったせめてもの礼だ、持って行ってくれ」


 布に包まれた、なにかを村長から手渡され、その中身を見てみると……

 金貨一枚と銀貨、数枚が包まれていた。


「えっと、これは?」

「ちゃんとした礼は今度させてもらおう、今はそれで勘弁してくれないか?」


 いや、勘弁もなにも無い、こんな大金貰って良いのだろうか?


「その、僕は雨を降らせただけですし、こんなに頂くのは……」

「雨を降らせただけ、と言っても……村はそれで救われたらしいじゃないか、それじゃ少ないぐらいだ……遠慮せずに貰ってくれ」

「そうだよ! 案外ケチ臭いね、村長……金貨五枚だって少ないぐらいだ」


 いや、それはさらに貰いすぎな気がするよ?


「ユーリ、良かったね? 気にしてたもんね」

「え? あ、うん」


 確かに、無一文同然なのは気にしてたけど……


「おっと、そういや、あの依頼はアタシからしたんだったね、忘れてたよ……ほら、これも持っていきな!」


 重そうな音を立てて、目の前に置かれたのは布袋だ。


「これは?」

「保存の利く肉や新鮮な野菜だよ、昨日トーナの奴に、金を積んで買っておいたのさ、こんなことになったんだ……あんたたちにやるよ、野菜は腐る前に食っちまいな」

「マリーさん、ありがとう!」


 うわぁ……なんか凄い入ってそうだけど……良いのかな?

 これ。店で使う予定だったんじゃ……うーん、少し残しておいた方が……


「……なんだい、あんたは嬉しくないってのかい?」

「い、いや、もらいすぎ、なんじゃって――」

「あのね、あれはアタシの依頼だ、報酬はアタシが決める。これが報酬だと言ったらこれだ、他には無いよ! 準備の手間が省けて良いじゃないか」


 な、なんか、凄い怖い人だよ? マリーさん……


「マリーさんの言ってる通り、すぐに出るなら準備とかも出来ないし、貰っておこう?」

「で――わ、分かりました」


 でもって言おうとしたら、睨まれた!? 有無を言わせない気どころじゃなくて、なにか身の危険を感じたよ……

 でも、最悪狩りをして、食べなければならないのだけど、見た目がアレな魔物を食べるのは……ちょっと気が引けるし……

 虫とかは勘弁願いたいし、正直食材は助かる。

 マリーさんが怖いのもあるし、素直に受け取っておこう。


「フィーナさん後、必要な物ってあるかな?」

「ランプの油は……最悪、ユーリの魔法に頼るとして……水かな?」


 水か、いざとなったら、キュアウォーターの水に頼るとしても……それはあくまで、いざって時だ。

 使いすぎて、なにも出来ない状況になるのだけは避けたいし……


「店は流石に今は開いてなさそうだよね……井戸の水を汲んでくるしかないかな?」

「親父!!」

「―――ッ!?!?」


 僕がそう口にした時、突如声を上げながら、酒場へと来た男性が居た。

 その人の言った言葉から察するに、村長さんの息子だろう……

 当然、僕はその声に驚く羽目になった。


「なんだ? シュッツ……騒々しいな、客人の前だぞ!」

「それが……井戸の水がおかしいんだ!」


 ……おかしい?


「おかしいって、そりゃおかしいだろ……昨日までは、飲めなかった物が飲めるんだから」

「いや、そうじゃなくて! 朝方に飲んだ奴らが……腹痛を訴えだしてるんだよ!」


 腹痛? おかしいな……

 もし、魔法が失敗したなら、他にも影響があるはずだ。


「フィーナさん、精霊は?」

「ん? 昨日のままだよ? 水の精霊も特に問題はなさそうだけど……一応、聞いてみるね?」


 フィーナさんはそのまま、なにかに語りかけている仕草をした。

 恐らくは精霊と会話してるんだろうけど、特殊な言葉なんだろうか?

 僕には聞き取れない。

 なるほど……これじゃ、会話が出来るのは森族(フォーレ)だけって言うのは納得できる。


「……地上に居る水の精霊は元気だよ、でも、井戸とかの地下に居る子たちは、なんか昨日の夜から元気が無いみたい。距離が離れてたから、異変に気がつけなかったみたいだね」


 やっぱり、水か……っていうことは、あの人たちが薬か何かを入れたって所だろうか?

 僕たちになにかするなら、この宿で寝ている所を襲えば良いんだし、それをしなかったのは、恐らくフィーナさんが居るからだ。

 それに万が一、僕の口を塞ぎ損ねた時のリスクがある。

 僕、自身は魔法使いとしか言ってないし……火の玉辺りでも当てられたら、どう対処したら良いのか分からないだろうし……

 もし、こういう時、自分たちの安全を確保することが出来て、確実に動きを止められて襲撃できるといったら、水に何かを仕込んでおくのが得策だ。

 朝はどうしたって喉が渇く……あれ?


「あの、マリーさん僕たちが食べたスープとかって、もしかして……」

「安心しな、昨日言っただろ? それはトーナの水だ」


 そういえば、昨日言ってたのを今まですっかり忘れてた……

 あれ? でも、そうしたら……ここの水樽にでも仕込んでおけば良いんじゃないか、なんか変だな?


「あの、ここの店って、いつもは水どうしてるんですか?」

「勿論、井戸から汲んでるよ、あっちの方が冷たいからね、朝顔洗うのに丁度良い。しっかし、まぁ運が良かったね、トーナの奴から水を多めに貰っておいて正解だったよ」


 なるほど……じゃ、相手の読みが外れたってところか……とはいえ、このまま去るのも残された人たちが心配だ。

 水は結局、飲めないんだから……

 解毒作用のあるキュアウォーターでも中に入れれば、井戸の水は治るはずだけど……


「あの、井戸って何個あるんですか?」

「村にあるのは二カ所、どうやら、どっちも駄目みたいだ……幸い、死ぬような毒じゃないが、死ぬほど辛い腹痛らしい……」

「ユーリ……」


 分かってる。ちょっとした仕返しにしては……やり過ぎだ。

 魔力はしっかり寝てる分、回復してる。

 村を出て行く前に、ちょっと精霊を治療していこう。


「一回、キュアウォーターで回復するか試してみよう……フィーナさん、精霊の容態が治ったか教えてくれるかな? 駄目ならもう一回、雨を降らせるよ」

「うん!」


 そうと、決まれば善は急げだ。


「マリーさん、空の水樽はありますか?」

「あるけど……なにに使うんだい? まさか、その井戸の水を飲むってんじゃ……」

「治してくれるんだよ?」


 フィーナさんの言葉に、村長とその息子……確かシュッツさん? は固まってしまったが……対照的にマリーさんは、恰幅の良い身体を揺らしながら、豪快に笑い始めた。


「あはははは、そりゃー良い! 昨日みたいな魔法を、また見せてくれるってのかい!? あんたらが、その井戸の水を直しちまえば、犯人探しをして、そいつらを追い出す、算段も出来るかもしれないねぇ! ちょっと待ってな! すぐ持ってくるよ」


 マリーさんはそう言い残し店の奥へと入っていく……


「い、井戸を直すって、そんなこと出来るのか? 職人でもないのに?」

「いや、シュッツこのままでは……どの道、村は前の状態に戻ってしまう、水が悪ければ作物にも影響が出るかもしれない。村を出て行けと言った手前ですが、お二人共お願いできますか?」


 そう言うと、村長は頭を深く下げてきたけど、頭を下げなくても良いと思うんだけどな。

 元々、全部直すつもりで、雨は降らせたわけだし……僕たちの所為じゃないとしても一部だけ治りませんでしたって、言うのはちょっと気が引ける。

 それに……


「大事な仲間の友達が傷つけられてるのに、放っておけないですからね」

「「……は?」」


 村長たちは、なんのことか分からないだろうけど……そんなのは、どうでも良いんだ。


「ユーリ……ありがとう」

「お互い様だよ、いつも助けてもらってるからね」


 後は僕たちに危害を加えようとしてる、あの人たちが他になにかしてこないとは限らない……気をつけないとな。


「ほら、樽持って来たよ……これで、良いのかい?」

「ありがとうございます、マリーさん!」


 準備が整ったことだし、すぐに取り掛かろう!

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