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187話 タリムの城へ

 タリムの街……そこに現れたユーリ達一行……住人達は一縷の望みをお告げと一致する彼女達に託す。

 一方、ユーリ達はお告げとは関係なくタリムの王となった仮面を倒すと答え、歩みを進めるのだった……

「どうしたものか……」


 城の様な建物に近づいた所でナタリアは呟く……

 彼女の視線の先にはライオンの様なたてがみと体躯、目立つ人間の様な顔と耳そしてサソリの尻尾を持つキメラ……

 恐らくあの尻尾には毒があるんだろう。

 あんなものまで作っていたのか……


「ミーテで動きを封じるっていうのは?」

「ん?」


 いや、ナタリアそんな目を丸めて「ん?」って言われてもそれが得策だと思ったんだけど、すぐに表情を真剣な物へと変え――


「あ、ああ……残念ながらアレは現生の魔物でメメコレオウスと言う。あのサソリの様な尻尾の先は開いてな、中にある竹串の様な針を無数に飛ばす魔物だ」


 っと教えてくれた。

 そして、それに続く様にバルドが口を開く。


「針は頑丈で人の骨位だったら簡単に貫通するんだよ……おまけにアレは温かい食事を好む」

「え、えっと、その針って毒とかは?」


 僕が知っているマンティコアとは若干違うみたいだけど、問題は毒があるかどうかだ。


「あの魔物にそんなものは必要無い、獲物を追い詰める足、骨をも砕く牙を持っている」

「いや、ドゥルガ? それ針いらなくないか?」


 うん、僕もそう思う……


「ケルムの疑問は最もだが針はそれを凌ぐ魔物や冒険者に使う。そして縫い付け喰らう……どうやってここに連れてきたのかは謎ではあるが、厄介過ぎる魔物だな」


 な、なるほど……確かに厄介過ぎる。

 それに見た所ゾンビではない……キメラならミーテで足を止めるだろうけど、話を聞く限り魔力の無駄遣いになってしまいそうだ。

 魔力の消耗は気になるけど光衣マジックプロテクションが安全そうだね……

 そう思い僕が口を開こうとした時――


「待てユーリ」


 ドゥルガは目の前に手を出して詠唱しようとする僕を止める。


「ドゥルガ……?」

「メメコレオウスの奥だ」


 彼の言葉通り目を凝らすとその奥には最早見慣れたと言っても良い魔物キメラが休んでいるのが見えた。

 こうして見比べているとキメラはメメコレウスと言う魔物に似ている……


「もしかして、あのキメラはメメコレウスを元に作られてたってこと?」

「かも……しれんな」


 それにこれだけ魔物が居たら……逃げだしたら殺すなんて脅された時には住人たちは恐怖で逃げれなくなってしまう……

 なんたって、月夜の花はタリム一と言われた冒険者であるフィーが居て、ゼルさんも居た場所だ……実力は見せつけられた後に違いない。


「……数が多いな」

「さ、流石にユーリちゃんやナタリアさんの魔力が持たないと思うぞ?」


 バルドは眉間に皺を寄せ、そしてケルムは不安そうな顔で僕たちを見る。

 彼の言う通りだ。

 流石にこの数を魔法で倒すには魔力が……

 でも……どうしても僕の魔法が必要になってくるのは目に見えている。

 

「……おい」


 バルドは僕の肩を掴み、声を潜めつつ声をかけてきた。

 そちらを向くと彼は真剣な表情で言葉を続ける。


「あの武器に纏わりつかせる魔法……ありゃどの位もつ?」

「魔力の分だけ……正確な時間は分からないよ……それにあれはオリジナルで今すぐにバルドに教えることは――」


 いや……まてよ?

 普段魔法を使っていることが多くて気が付かなかったけど……エンチャントの魔力をソティルの魔法並みに注いだらどうなんだろう?

 当然いつもはそれ以下なんだ、もしかしたらディ・スペルが飛んでこない限り長時間魔法が掛かったままになるかもしれない。

 でも、少ない数ならともかくあの数相手じゃ出来てただの足止めだ……それにメメコレオウスとか言うのには効果が無い可能性がある。


「おい、どうなんだ?」


 バルドは僕の返答が無い事に苛立ちを見せ僕は慌てて答える。


「魔力を籠めれば長い時間は大丈夫だとも思う……でも――」

「上等だ……おい、あの魔法を俺達にかけろ」


 バルドは分かっていないのだろうか? あれはあくまでその属性の特徴を持たせるだけで威力が上がるとかではないんだ。


「だから、それだけじゃ……」

「……なるほど、ではバルド三人なら時間稼ぎ位は出来ると言うことか?」


 ドゥルガはバルドにそう告げ、彼はニヤリと笑ったけど……三人?


「へ? さ、三人? ここに居るのは五人だぞ?」


 ケルムの言う通り、ここに居るのは五人なんで三人……って!?

 ま、まさか……ドゥルガとバルドが考えていることって……


「危険すぎるよ!」

「ああ、無茶だな……やはり魔力を消耗する事は仕方がない、一気に片を付けよう」

「いや、あいつらは揃って翼がねぇ……だから二人で飛んでいけ」


 確かに翼は無い、だけどそれなら――


「それなら皆で……」

「良いか、ユーリ空が得意なお前ならばメメコレオウスの針も避けれるかもしれないが、俺たちはそうではない、お前もナタリア一人なら連れて行けるだろうが全員は無理だろう? それに今は大人しくしているが魔物が街に降りる可能性もある」


 そ、それはそうなのかもしれないけど……


「それなら尚更、今すぐにかたをつけた方が早いだろうに……」


 ナタリアの言葉に同意見だ。

 倒せるなら倒して向かった方が安全……その分後がきつくなるかもだけど皆がいれば……


「い、いや……ユーリちゃん? ボス戦に魔力枯渇した状態で挑むとか死ぬよ?」

「それはあくまでゲームの話でしょ!?」


 というか前の世界の知識が無いと分からない事でしょ!?


「いや、これ大真面目に言ってるんだけどさ……ナタリアさんは剣を使えるし、聞く限りだとユーリちゃん空なら自由自在なんだよね?」

「そうだな、ユーリは空を飛ぶのが得意だ……まるで鳥……いや、ドラゴンの様に自在に飛ぶ」


 それは――言い過ぎだと思うよナタリア。


「そ、そうか……じゃぁ、二人とも前に立っても攻撃を避けたり受け流すことは出来る訳で……頼みの綱の魔法もユーリちゃんだけ、攻撃魔法も強力なのはナタリアさんだろ? 二人の魔力が減るってことはそれだけ戦力が削れるってことだぞ?」

「え……っと?」

「良いか? 俺たちがここで耐えることによって相手は俺達を援軍に出さないための戦力をこっちに回さないといけない、いくら魔物でも限りがあるだろ?」


 いや、確かにそうだけど……それは……


「あくまで可能性ってだけで無限に呼び出すかもしれないんだよ?」

「それこそ、さっさと頭押さえればいいんじゃないか? それが出来るのはユーリちゃんなんだろ? でも一人じゃだめだだからナタリアさんもついて行くこれで良いんじゃないか?」


 そんなこと言ったって……


「なら私がここに残ってドゥルガか誰かが行けば――」

「だーかーらー、ナタリアさんの魔法はいざって時にユーリちゃんを守れるだろ? 俺の精霊魔法は詠唱が長すぎるし、バルドがどれぐらい魔法使えるか分からんし、ドゥルガはどう見たって魔法って感じじゃないだろ? 寧ろ俺たちじゃ手が少なすぎて逆に守られそうだぞ」


 そんなことはない、とは思う。

 だけど、ドゥルガは避けるのではなく耐えるから光衣マジックプロテクションで削られるし、ケルムの精霊魔法は確かに詠唱が長すぎて使い勝手が悪い。だからと言って頼りにならない訳ではない。

 バルドに関しては魔法も頼りにはなるけど……戦力を増やせるあの魔法がある以上、残るのだとしたらこちらの方が良いのかもしれない。


「……分かった」

「ユーリ!? だが……」

「いや、ケルムの言う通りだよ……バルドのサーヴァントがあれば五人で戦うのと一緒だ。その間に仮面を倒す……」


 ちょっと前まで怖がっていた彼がここまで言ってくれているんだ……

 それに、皆凄腕の冒険者……あんな魔物の足止めくらいなら十分すぎるだろう。


「……ナタリア、行こう!」

「…………はぁ、そうだな魔力を温存できるのは助かる」


 彼女は三人の方へと目を向け口を開く……言いたいことは分かった


「「だが、無茶はするなよ?」」


 僕とナタリアの声は重なる。


「ユーリ……」

「え、えっと……そう言うかなって……」


 半眼で見られ僕は頬を掻きつつ答え――右手を三人へと向ける。


「万物の根源たる魔力よ、(つるぎ)に宿りて力を示せ! エンチャント!!」


 魔力をいつ所以上に込めたそれは以前よりも帯びている光が強まっている感じがした。

 効果は変わらないだろう……だけど、皆なら上手く使ってくれるはずだ。

 魔法が掛かったことを確認した僕とナタリアは城を睨み同時に詠唱を唱える。


「「我らに天かける翼を、エアリアルムーブ」」


 中へ浮き魔物の頭上を飛び越え……僕たちは城へと向かう。

 恐らく中にも魔物は居るだろう、でも……皆があそこで戦ってくれる以上負ける訳にはいかない。

 僕たちは城の窓を破り中へと侵入した――






 飛び去るユーリたちを見て、バルドはふと森族(フォーレ)の男性へと目を向ける。

 彼の目には足を震わせながらもたつケルムの姿が映り……


「案外根性あるじゃねぇか……」


 バルド武器を構えるとは彼に声をかけた。


「いや、マジで怖い……あんな魔物に敵う訳ないって!?」

「そう思うならユーリたちを止めていれば良いと思うが……」


 ため息交じりのドゥルガはケルムにそう伝えると――


「このまま消耗したら負けるの確定だぞ!? それぐらいなら向かわせてなんとかしてもらうしかない!」


 何故か胸を張り彼はそう答える。

 二人の冒険者はケルムのその様子に呆れつつも口元を綻ばせた。


「さぁって……始めるぞ」

「ああ、任せておけ……」

「やっぱ、俺も行けばよかったかもしれない!?」


 ケルムの悲鳴に近い声が合図となり……地上での戦いは始まった。

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