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184話 不死王の街へ

 アルを追い払ったユーリ達は早速魔法陣の作成に取り掛かる。

 目的の場所はゼルが隠してくれていた部屋……

 それは月夜の花にあるという……果たして無事に着けるのだろうか?

 ナタリアはすぐに魔法陣を描き出す。


「ユーリ、そっちの方は順調か?」

「う、うん……」


 急ぐこともあり、何故か僕も手伝うことになったんだけど……

 大丈夫なのかな?

 彼女曰く「一緒に魔法を作ったことがあるんだ。私の癖くらいは覚えているだろう?」らしい。

 いや、確かにそうだけど、大丈夫かな?

 心成しか魔法の心得があるバルドは心配そうな顔を浮かべている。


「よし、終わったな……ユーリの方はどうだ?」

「こっちも終わったけど……」


 言われた通りには書いたけど……不安だ。


「そう不安そうな顔をするな、ちゃんと確認はする」

「そうだよね、良かった……」


 いや、本当に良かった。

 もしこれで確認せずに行くって言われたら慌てて止める所だ。


「……一部が違うが良く出来ている及第点だな」

「嘘!? 言われた通りに書いたよ!?」


 何処が間違っていたのだろうか? っと慌てて彼女が指を指す場所へと目を向けると……


「なんだこの字は?」


 バルドも気になったのだろう覗き込んできて……


()ってこれユーリちゃん……」


 ぅぅ……ケルムにも見られてしまった。

 というか、これが分かるって事はやっぱり彼は日本人だったみたいだ……


「だ、だって緊張してつい」

「意味はあっている、次にある時はちゃんと書けば良い」


 そう、僕は間違って日本語で行と書いてしまった訳で、ナタリアは地面に描かれた魔法陣の其処だけを直す。


「では行くぞ?」


 そう言葉にし、陣へと右腕を向ける――


「我望む、目的の地へと続く道を……繋がれし地への扉へと我らを送り賜へ……ヴェークポールト」


 魔法の名と共に魔法陣は光を帯びる。

 でも……


「どうした、ユーリ」

「今回はテレポートじゃないんだね?」


 ナタリアが目の前で転移魔法を使ったのは二回目のはず……リラーグに戻る時はメルの子守へ回ったから魔法の発動までは目にしていなかったし……

 だけど、前に言ってた時はテレポートと言っていたはずだ。


「あれはユーリの記憶を見て直した魔法だ。恐らく医学者ソティルが作った魔法だろう、私の転移魔法とは違う」


 そう言えばそうだった。

 でも、魔法の名が全く違うとは思わなかったよ。


「それにこの魔法は異世界へと渡ることも可能だ。まぁ、転移先に陣が無い場合一人しか移動できん上、どこに出るか分からんがな」

「じゃ……俺やユーリちゃんが来た時ってもしかしてとんでもない所に出たとか?」


 ケルムは恐る恐ると聞くもナタリアは静かに首を振る。


「いや、街の中だな……確か情報を発信する箱では簡素な住宅街と言っていたぞ」

「いや、うん……そこで良かったよ本当……」


 砂漠とか、海の上に出たらどうするつもりだったんだろう、ナタリアは……

 まぁ、フィーを救うために必死だったんだろう、うん……そう考えておこう。


「さっきから聞いてればケルムやユーリってお前ら、その異世界とかなんとか言うのから来たって言うのか!?」

「初めて聞いたな……」


 ああ、そう言えばバルド達に入っていなかった気がした。


「なるほど……道理でギルドの連中に騙されて襲われていた訳だ……どこのド田舎女が来たんだって思ってたが……」

「その事には触れないで!?」


 あれはもう二度とゴメンだ! 怖いし、二度と知らない人にはついて行かない。

 というかバルドも僕を騙したじゃないか……


「……はぁ」


 僕は一つ息をはき、皆の顔を見る。

 ここを潜れば、もう敵地だ。

 戦いを避けて仮面まで行く事は無理だろう。


「皆、良い? この転移陣の向こうは何があるか分からない、それに運良く逃げ切れたとしても相手も対策をしてくるはずだよ……この一回で――」

「うるせぇな……んなことは分かってるんだよ」


 バ、バルド……そんな面倒そうな顔しなくても良いと思うよ?


「元よりそのつもりだ。安心しろユーリ」


 ドゥルガさんは本当、変わらないな……


「お、俺は――その――」

「ケルム……」


 さっきの様子から見ても、ケルムは人と戦ったのが無い。

 少なくともさっきまではそうだった……いくら頼りになるから、仲間と和解したからと言っても連れていくのは酷なのかもしれない。

 いてもらった方が助かる――でも……


「あぁぁ~~なんつーか、うん」


 言葉を詰まらせてるし、ケルムはやっぱり降りる気なのかな? でも、それはそれで仕方ない。

 ここまでついて来てくれて助けてもくれたんだから十分だ。


「降りてもお前を責めるつもりはない、無理はするな」


 ナタリアも僕と同じ考えだったんだろう、悩む彼に告げる。

 だが、ケルムは頭をぶんぶんと振り。


「い、いや、大丈夫だ! 俺は力になりたくて身体を鍛えたんだ。ここで帰ったら何のためにやってきたのか分からなくなるぞ!?」

「良いの? この魔法陣を潜ったら一旦帰って心の準備して来ますなんて出来ないよ?」


 僕の言葉に彼はゆっくりと頷く。


「分ってる、あっちの世界のゲームじゃないって言いたいんだろ? 傷つけば血が出るし死ぬかもしれない、その逆もある。でもさ……なんか、俺も気にくわないって……その、氷狼やあのゾンビのおっちゃん見たら、さ」


 氷狼は分かるけど、あのおっちゃんってゼルさんの事か……彼にとっては知り合いでもないはずだ。

 だけど……その言葉を言うのは流石はナタリアが選んで連れてきた人って訳なんだろう。

 その証拠に満足そうに頷くのは銀色の髪を持つ女性ナタリア本人で――


「よく言ったケルム」


 その言葉もどこか誇らしそうだ。


「よし、じゃぁ……行こう!」


 僕の言葉に再び頷いた皆は魔法陣へと足を踏み入れる。

 一人一人光の中へ消えていき……

 僕の後ろ……ナタリアへと振り向くと彼女はなにかを投げてから転移陣へと入ったみたいだ。

 恐らくアルがおってくることを考えて陣を壊したんだろう。

 光の中を歩いているとやがて道は終わりをつげ……


 僕たちは小さな部屋へと出た。


「おい、ユーリ」

「分かった……我が往く道を照らせ、ルクス」


 バルドに言われ僕は魔法で明かりを灯す――

 すると徐々に部屋の中が照らされて行きそこには……


「全く、ゼルの奴は……これは一体なんだ」

「ほ、本だね?」


 目の前には机があり、一冊の本があった。

 僕はその本を手に取りパラパラとめくってみる……


「これって……」

「どうやらアイツの作った料理の材料が書いてあるみたいだな」

「あはは……なんだか家庭的な遺品だね」


 なんというか、僕たちがここに来ることを分かってて置いたのか気になるけど、ゼルさんのお手製ステーキサンドはまた食べたい。

 と言うのも一回ぐらいしか食べたことが無かったけど、あの味は忘れられないんだよなぁ……


「帰ったらゼファーに渡してやろう、私が味が違うと言ったら落ち込んでいたからな」

「そ、それはそうだよ……そう言われたら落ち込むと思うよ」


 本人は再現しようとしていたはずなんだから……

 それにしても、ゼルさんのお蔭で少し気が紛れた。

 これから向かうのはこのタリムの王と名乗る仮面――恐らくキョウヤの所だ。

 気を引き締めていかなければいけないけど、カチコチになる訳にもいかない……

 もしかしたら、ゼルさんが少しは柔軟な発想が出来る様にしておけってこの本を置いたのかもしれないね。

 そう思い僕は部屋の中を見渡す……良く見ずともこの部屋にはちょっとした鍛冶場のような物があった。


「ドゥルガさん、武器の調整って出来る?」

「ああ、リーチェほどではないが多少な」

「じゃぁ、皆の武器を見てもらえるかな」


 僕は其処を指差すと彼は其処へ向かい……


「古いが使えそうだ、任せておけ」


 そう言ってくれた。

 幸いここにはゼルさんの幻影魔法がかけられている時間はあるはずだ……

 なら、少し準備をするぐらいはしておこう……僕はそう思い。


「お願いするよ」


 ドゥルガさんにそう告げた。

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