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175話 新たな仲間は……

 ユーリのお願いに首を縦に振ったケルム。

 新たな仲間を得たその翌日……朝食を取っていた一行の前に現れたのはケルム……彼の言葉に思わずむせたユーリを前に困惑する仲間たちだったが?

「ユ、ユーリ大丈夫か」


 ナタリアはすぐに僕の目の前に水を差しだしてくれ、背中をぽんぽんと叩いてくれた。

 そんな様子を見ていた元凶の人は僕の横に来ると……


「ん? どうした? もうドジっ子だなー俺が口移ししてやろうか?」


 なんて変なことを言ってきたけど、原因は貴方ですよ?


「けほっ……け、結構です」

「ああ、その通りだケルムさえ黙っていればなんの問題もない」


 僕の言葉に続き、眉をぴくぴくと動かしているナタリアはそう答えた。

 最悪だ……。

 まだ寝ているって聞いたから、朝食を食べ終わった後に会わせようとしたのが間違いだった。


「えー、恥ずかしがらなくても……良いんだぜ?」

「「…………」」


 ああ、二人は呆然とケルムへと目を向けてるし……


「恥ずかしがってもないし、普通に食べれるから……」

「ユーリ……その男はなんだ?」


 ドゥルガさんは正気に戻ったのだろう、ケルムを睨みつけたまま僕へと質問をする。


「え、えっと……」

「……まさか、また騙された訳じゃねぇだろうな?」


 バルドは僕へと鋭い視線を向けつつ、どこか苛ついた声を放つ……

 そういえば、初めて彼と会った時まさに騙されていた現場だった……その後にバルドによる金銭詐欺に遭ってた訳だけど、今は心配をしてくれているのだろうか?


「その……」


 ただ、この状況ではどう言ったら良いのだろうか?

 二人は完全にケルムのことを警戒している。

 この人が例の仲間ですって言って納得してくれるかな、いや……ちゃんと紹介できていれば大丈夫だったかもしれないけど、この状況だと言いづらいよ!?

 だが、そんなことはなんとも思ってないのだろう空気を読む様子は一向にないケルムは笑ったまま二人の方を向き。


「ああ、今日から一緒に行くケルムだ。ユーリちゃんとは将来を誓い」

「誓いあってはいないからね!?」


 どさくさに紛れてなにを言おうとしているのか……

 僕は恐る恐る二人の表情をうかがうと。


「こ、こいつがか……」

「シュカたちが武器を作らせた……」


 二人は同じような表情を作り呟く。

 その表情から察するまでもなく、最悪な出会い方だったと言うことは分かっていた。

 そんな二人の様子に僕が頭を抱えると……


「まぁ、ナタリアさんやユーリちゃんには恩があるんだ、協力は惜しまないぜ」


 まともな言葉が聞こえ、顔を持ち上げた……のに――


「そしてゆくゆくは、ユーリちゃんと」

「ユーリは嫁には出さんぞ……そもそもフィーがいる」


 ナタリアのフォローはありがたいとして、結局其処に話を戻すの!?

 僕は再び頭を抱える羽目になり、切に願った……どうか、仲間割れだけはすることは無い様にって思った矢先のことだ。


「おい、本当にこの野郎を連れていく気か?」


 バルドは彼の行動が気にくわなかったのかどこか棘のある声で言葉が放たれた。


「俺は反対だ……ワリィが信用が全く出来ねぇ」


 彼は乱暴な言動とは裏腹に仲間想いだ。

 だからこそ、普段ふざけたことを言っている彼とはちゃんとした形で会わせたかったんだけど……

 うん、どう考えても最悪だとしか言いようがないよ。


「ん? なんだ君は……」


 いや、うん、ほぼあなたの所為なんですけど何故笑顔でそう言っているのでしょうかケルムさん。


「そうか――!!」


 なぜだろう、凄い嫌な予感がする……そう思った僕は慌てて立ち上がり。


「ユーリ――」

「一応、ケルムのお蔭で危機を脱したことならあるよ!?」


 ケルムの言葉を遮り、バルドに告げた。


「……で?」

「その、前に氷狼と戦った時だよ……火の精霊魔法で援護してくれて、そのお陰で勝てたんだ……」


 事実を言っているはずなのにバルドの視線が刺さる様で怖いよ。


「……その話はシュカのやつから聞いてる。だから期待をしたんだが……」


 うぅ……シュカのことだし、ちゃんと伝えてくれてたみたいだけど、まずいことになった。

 そうだ! ドゥルガさんなら、僕の意見を尊重してくれるはずだ。

 情けないとは思う、でも今は――


「ユーリの判断なら俺は文句は言わんが……今回だけはあえて言わせてもらう……バルドと同意見だな」

「ド、ドゥルガさんまで」


 そんな、今までは僕の意見ならって言ってくれていたのに今回だけはって……


「え? もしかして俺やっちゃった?」


 当の本人はやっと気が付いてるし……。


「もしかしなくてもだな……しかし、二人ともケルムも悪いやつでは……」

「ナタリア?」


 なぜそこで言い淀むんだろうか、そう言えば前に何か聞いたことがある様な……。

 そして、なぜケルムを除いた皆は僕を心配そうな目で見て来るのでしょうか?


「ケルム……」

「え? なんだ……?」

「今回も残念だが」

「ちょ!?」


 ふぁ!?

 ナタリアまで急になにを言い出しているの!?


「ナ、ナタリア急にどうしたの」

「……そ、そうだったな」


 僕の言葉にはっとしたのか表情を切り替えた彼女はなにかうんうんと唸り出し始めた。


「では、こうしよう……もしなにか起こすようならばバルド、ドゥルガ二人がケルムに対し何をしても私達は文句言わん」

「へ? ……俺を!?」

「心配し過ぎだよ、ケルムは確かに変なこと言うけど直接は――」

「確かにそうだが、シアとシュカからユーリを助ける様に言われている二人が納得せんだろう? 何くだらない事で人を殺める奴らではない、ちょっと痛い目に遭うだけだ」


 それはそうなんだけど、いくらなんでも警戒し過ぎではないだろうか?

 事実、彼は氷狼の時に手助けをしてくれたし、ナタリアを助けると言ったらついてくるとまで言い出した。

 そんな人が急になにかをすると言うのはちょっと考えづらいなぁ。


「……はぁ分かったよ、ナタリアさん信用が無いってんなら、俺はその条件を呑む」

「ケルム!?」

「だってなぁ、もう武器受け取っちまったし……折角手を貸せるチャンスだ。それに今ナタリアさんが言った通り、殺されることは無いだろ?」

「それは……そうだろうけど……」


 なんというか、彼は真面目な部分を表に出してた方が良い様な気がする。

 いや、絶対そうだよね?


「良い覚悟じゃねぇか……」

「二言は無いな?」

「無いって」


 これは大丈夫なのだろうか? 三人はなんとか納得はしたみたいだけど……心配だよ。


「じゃぁ、自己紹介な? 俺はケルムよろしくな」


 そんな僕の思いは余所にケルムは笑みを浮かべ二人へと自身の名を告げる。


「ドゥルガだ」

「バルドだ、言っとくがもしもの時は――」

「あー分かってる。だが、本当に死なない程度にはしてくれよ? それでいいよな、ナタリアさん」

「お前が構わないならそれで良いが、くれぐれも勘違いされるようなことはするなよ?」


 ナタリアは一応心配しているみたいだ。

 彼は普段がこれだから勘違いされていることは間違いない。

 というか、さっきから店主であるブランシュさんはこちらへと近づいて来ないのがなによりの理由ではないのだろうか?

 今回、到着したその日にケルムのこと聞いたんだけど、ブランシュさんはあからさまに嫌な顔を浮かべてた。

 一体彼はなにをしたんだろうか、いや知りたくはない……


「で、ユーリこれからどうするんだ? まだ体調がワリィようなら」


 気を利かせてくれたのか珍しくバルドから話を切り替えてくれた。

 それに、相当心配させてしまったみたいだ。

 どこか声が優しい気もするよ。


「うん、体調の方は大丈夫だよ……だから、早速だけど氷狼に会いに行こうと思うんだ」

「そうか、だがユーリ無理はするな。きつかったらすぐにいえ肩を貸そう」

「ありがとう、ドゥルガさん」


 やっぱり、彼は頼りになる人だ。


「俺の背中も貸そうか?」

「それは結構です」

「即答!?」


 いや、だってなんか目が変な感じでしたよ?


「ケルムは道案内だ。それと今は前よりは頼りになりそうだ魔物が出た時も頼りにしてるぞ?」

「あ、はい……」


 彼はナタリアにそう言われ何故か肩をがっくりと落とすとやる気のない返事をした。

 早速二人には訝し気な目で見られているし、真面目なままいて欲しいよ……

 そんなことを思いつつ。


「じゃぁ、必要な物を買ってから出発しよう」


 僕は皆にそう告げた。

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