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18話 ユーリの成長

 フィーナを療養させると言う名目上、屋敷へと連れ帰ったユーリたち。

 翌日からユーリの修行は再び始まる。

 度重なる失敗にもめげず、修行にいそしむユーリはどう成長したのだろうか?

 屋敷に戻って月日が過ぎた。

 フィーナさんは順調に回復をし、僕は修行に明け暮れる日々。

 ……そんな、ある日の夜のことだった。


「焔よ我が敵を焼き払え! フレイムボール!!」

「…………」


 僕が魔法を唱えると、手のひらの前に小さな火が灯る……。

 詠唱にあるように、敵を焼き払うと言うことは、どう考えても出来そうにない。

 それを見たナタリアは頭を抱え……フィーナさんは苦笑いをしている。


「ユーリ……真面目にやらないと、ナタリー怒っちゃうよ?」

「それがなフィー、ユーリはこれでも真面目にやっている。しかし、ユーリは本当に普通の攻撃魔法が苦手だな」

「うん、でも……なぜか、(ソティル)の魔法だけは出来るんだよね……」


 僕専用魔法だからか、なんなのか何度唱えても本の魔法は成功する。

 難点は使用制限があるってことで、魔法を連続で唱えると、魔力切れで倒れてしまう……それを踏まえてでも、強力すぎる切り札ではある。

 しかし、切り札と言うことは普通の魔法が使えることには越したことが無い。

 だから、何度も練習してるんだけど……。


「まさか、フレイムボールは小さな火を灯す魔法になるとはな……ウォーターウェポンで武器を作っても本人が弱く、ウォーターショットでは水を作れても、それを撃ち出すことは出来ないとは」


 聞いてて悲しくなってきた……あまり言わないで欲しい。


「しかし、褒める点もある。アースウォールでは強固な城砦を築け、エアリアルムーブでは本来浮遊程度の魔法で自由に飛び回れる……」

「それは私も思ったよ? ナタリーより、ずっと早いよね?」


 ……なぜだろう? 良く分からないけど、フィーナさんが世の少年たちの心を抉るような言葉を言った気がする。

 それはともかく、なぜか、僕は攻撃を意識しない魔法は上手くいく、ナタリアに天才的なセンスがあるとまで言われた。

 実際、アースウォールはナタリアのウォータージャベリンと言う魔法を耐え切る強度だった。

 ……因みにその時。


「私の魔法はその壁を貫くだろう。だから、壁を作ったら横に移動しておけ、強度テストで死なれては困る」


 とか言っていたのに、貫けなくってポカンとしていた彼女の顔は見物だった。

 その後、てっきり今のは本気じゃないとか言われると思っていたら……。


「……傷をつける程度とは、私は貫く気でやったんだぞ? 凄いじゃないか、ユーリ!」


 と褒められた。


「つまり、ユーリは本がないと、駄目ってこと?」


 そんな、はっきり言わなくても良いとは思うんだけど……。

 悔しい、でも……言い返せないなぁ。


「ああ、攻撃魔法は本、以外は望みが無いな」

「うう……」


 分かってたけど、辛い宣告だ。


「さっきナタリーが言ってたけど、剣の腕もどっちかと言うとヘタだし……冒険する時は気をつけないとね?」

「……うん」


 そう、僕はフィーナさんが動けるようになってから、ちょっとだけ剣の稽古をつけてもらっていた。

 結果はとりあえず扱える程度だ。

 この世界は魔法があっても……闘気とか、オーラとか、そう言うのは無いらしい。

 魔法を使って剣風を飛ばす……とかはあるらしいのだけど……。

 要するに魔法を使わない剣士、と言うのは純粋な剣術しか使えない。

 けど、人の限界が地球人よりずっと高く、その種族の中でもずば抜けた力を持つ者が居る。

 その例として挙げられるのが、フィーナさんとかだ。

 変な所で現実的だとは思ったが、まぁそこらへんは気にしないでおいた。

 とにかく僕は、剣術も攻撃魔法はまるで進歩がないのだけど、一応、覚えることが出来たのは幾つかの魔法――。


 フレイムボール、僕の場合、火種を作る魔法でしかない。


 アースウォール、さっきナタリアが言っていた通り、かなり頑丈な物を作れるみたいだ。


 ウォーターウェポン、剣を作れるけど、僕じゃ役に立たない魔法だ、作った剣を飛ばすなら、使えるかもしれない。


 エアリアルムーブ、自分だけじゃなくて人も浮かせることも出来て、各自の意思で動けるから空の魔物に対抗出来るし、特に僕は自由に自在に飛べた。


 ウォーターショット、本来は水の弾丸を打ち出すみたいだけど、僕の場合飲み水は作れることが分かった。


 それと、魔法の修行中に分かったことだけど、どうやらソティルは僕の成長に合わせて使える魔法が増えていくみたいだ。

 新たに増えたソティルの魔法は……やっぱり支援魔法だった。


 キュアウォーター、疫病や毒などを取り除ける水を作り出す、この水は予防にもなるため、掛かっていないものが飲むのも効果がある。


 イナンナ、雨を降らせ枯れた土地、腐った水、濁った空気などを通常の状態まで回復させる。


 グラース、この魔法をかけられたものは一時的に身体能力が増加する。



 これに、ヒールとか僕は僧侶……いや、賢者的な感じなのだろうか?

 心なしか支援魔法が多い気がする。

 いや、事実多い……でも、パーティにおいて、この位置づけの人はそのままパーティの存命に関わるし、重要な魔法が多い……。

 因みにソティルは、万全の状態で連続して五回魔法を唱えると魔力不足になる。

 前回が三回だったことから、修行の間に魔力が上がったと言うことだろう……。


「まぁ、剣も使えるのと、使えないのでは全く違う、出来るだけましだ。全く駄目なやつも居るしな」

「そうだね、もしかしたら、ユーリも別の武器なら上手く使えるかもしれないよ?」

「そういうものなの?」


 どう考えても、武器を持って戦う僕、っという図が思い浮かばないのだけど……。


「ああ、人には得て不得手がある。補助魔法が得意で、攻撃魔法が苦手な様に使いこなせる武器もあるはずだ。焦らず探せ」

「気長に、ね?」

「う、うん」


 どうやら励まされたらしい、僕は頷いて返事をする。



 それと、魔法とか以外で出来るようになったことがある。

 それは、この世界の文字と言語、つまり会話だ。

 魔法のピアス無しでも理解できるし、話せるようになったのと、読み書きを何とか出来るようになった……。

 だけど、ピアスは相変わらず付けている。

 一回外したらフィーナさんや皆に折角似合ってたのにと言われたからだ。

 

 後、言葉が理解できるようになったのでふと気になり、試しにソティルの最後のページを見てみたが、そこには日本語がやっぱり書かれていたことから、僕が言葉を理解しているかと言うのは関係ないみたいだ。


 なにはともあれ、これで、日常生活に関しては不自由は無くなった。

 フィーナさんも仕事に復帰する時は、また冒険に連れてってくれると言っているし、今度はちゃんと彼女のサポートも出来るだろう……。


 この世界に来てから良いことばかりではないが、充実している。

 使ったことの無い魔法を使ったり、それで冒険したり、新しい人と出合ったり……日本に居たままでは、いずれ、今日の食事の為のバイトに、明け暮れる日々だっただろう……。

 いや、最悪お金が尽きる前に学校を退学し、就職しようとしていたかもしれない。

 だが、そうしたら中卒だ……雇ってくれる場所は少ないだろう。


「どうした? ニヤついて……」


 女性になってしまった、と言う点は不満ではあるが、これはこれで視野が違って面白いのかもしれないと、この頃考えられるようにはなってきた。

 ナタリアのお陰でこの世界へ来れたわけだし、感謝をしないとね。


「人の顔を見て、ニヤつくのはやめないか? 気持ち悪いぞ」

「ナ、ナタリー……言いかたって、物があると思うよ?」

「……言おうと思ってたことがあったけど……やめたよ」

「ふむ、聞こうか?」


 僕はフィーナさんのほうへ視線を動かした。


「フィーナさん、ありがとう!」

「へ? うん? なにが?」

「うん、また冒険に連れてってくれるって、言ってくれたので」

「あ、そのこと? 良いんだよー?」

「ちょっと待て、このタイミングでフィーに礼を言うのはおかしいだろ? それ、私への言葉だったんじゃないか!?」


 いや、そんなことは無い。

 ちゃんと、フィーナさんにも、お礼を言うつもりだった。

 だから、間違いでも、おかしくも無い。


「ほら、良いぞ? 言ってみろ」

「…………でも、フィーナさん、無茶は駄目だよ? ヒールでは回復出来ないこともあるんだから」

「わ、分かった……分かったけど、……ユーリ、ナタリー……ずっと、胸張って待ってる、よ?」


 うん、知ってる。


「知ってるなら、言えば良いだろう?」

「心を無断で覗く覗き魔には言わないよ?」

「……分かった、覗かん、覗かんから」

「お礼は強制する物じゃないよ?」


 僕がそう言うと、ナタリアは胸を張るのを止め、項垂れた。


「そうだな、ユーリの言う通りだ」

「冗談だよ、ありがとう……ナタリア」

「う、うむ……改めて言われると、気恥ずかしいものだな」


 てっきり当然だ、とでも、言われると思ったんだけど、面と向かって言われるのは苦手なのか、なんなのかナタリアは顔を赤くしていた。

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