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150話 リラーグでの再会

 無事リラーグへと転移することが出来たユーリ達。

 そこには懐かしくもマリー達が出迎えてくれた……

 久しぶりに会ったその人は昔通りの笑顔だと安堵をする中、ユーリはふと違和感を感じた。

 違和感を感じ、それが何なのかふと疑問を思った僕は空へと目を向ける――

 リラーグへと戻ったその日、確かまだ昼頃だったはずだ。なのに空は暗く、分厚い雲が覆っている。

 天候が悪いにしては暗すぎると思うんだけど……


「空は闇に閉ざされました……ボクたちが知る青い空はあの雲の遥か向こうに……」

「え?」


 その場にいた青年はそう呟き、僕たちの前に立つ。

 剣と盾を持っているってことは冒険者なのかな?

 どこかで見たような気もするんだけど……誰だろうか?


「この子のお蔭でねあたしも楽が出来たんだ。ドゥルガやシュカが鍛えたんだろう? 昔のフィーを思い出すようだったよ」

「え? え……?」


 ドゥルガさんやシュカが鍛えた?

 それって……まさか、いや、でもたった五年でここまで……


「あはは、ボクも随分と背が伸びましたからね。ユーリお姉ちゃんやフィーナお姉ちゃんが分からないのも無理はないかな?」

「「ノ、ノルド君?」」

「…………」

「ちゃんと鍛錬を行っていたようだな」


 僕とフィーは同時に、シュカは呆然とし……ドゥルガさんだけは合点がいったのか少年へと言葉をかける。

 だ、だって僕より背が低くてかわいかったよ?

 なのに今は背が高いし、よく物語で出てくる主人公みたいな容姿になっている。


「はい、ドゥルガさんとシュカお姉ちゃんの教えを守り日々鍛錬を積んできました。それとユーリお姉ちゃんが以前村を……ボクと母さんを救ってくれたように機転を生かし、あの魔物から逃げることも出来たんです」

「ほほう、やるじゃないかユーリ」

「い、いや……僕はなにもしてないよ」


 あの時は出来ることだけをしたんだ。

 それに大蛇を倒せたのはフィーの機転があったから、彼女がいなければ僕もノルド君だけじゃない皆もきっと食べられていただろう。


「ノルド、久しぶりに会えて嬉しいのはわかるけど、仕事があるだろう早くお行き」

「そうですねマリーさん……さて積もる話はありますが、リラーグ領主シルト様が皆様が来たらお会いし話したいとのことです。ご足労願えますか?」

「うん、僕たちも挨拶に行かないとだからね、でもシュカを休ませたいんだ。マリーさんお願い出来るかな?」


 そう言うとマリーさんはシュカの身体に気が付いたようで、顔を綻ばせると。


「ああ、任せておきな」


 流石に今のシュカを歩きまわさせる訳にはいかない。

 マリーさんは快く受けてくれて一安心だ……と思っていた所。


「まま……つかれた」

「眠いの? うーん休ませられないかな?」


 泣きつかれたこともあるのだろうメルはフィーに抱きつき眠たそうな顔をしている。

 こ、困ったな……ゼファーさんの店は遠いのかな? 僕たちの屋敷も目に見える範囲ではないし……

 シュカと一緒にマリーさんに預けるしかないよね……でも、マリーさんは優しいけど知らない人だし大丈夫かな?

 そう、心配していると――


「では、子供たちは私が面倒を見ます、フィーは一応領主と顔を合わせてください。後ほどゼファー様の酒場で合流いたしましょう」


 シアさんがそう言ってくれた。


「うん、お願いねシア? メルもちゃんと良い子にしてるんだよー?」

「うん……わかった」


 余程眠いのかとろんとした目のメルはシアさんの方へと歩いて行く……

 これなら安心だ……僕は三人へと目を向け――


「シアさん、マリーさん、お願いするよ……ノルド君も案内お願いね」


 そう言うと、ノルド君の後をついて歩く勿論、フィーやナタリアも一緒だ。

 それにしても彼の成長ぶりには驚いたけど、リラーグに着いて驚いたことは他にもある。

 トーナやアルムで見知った顔が街の中にいて……以前より街は人が溢れていて……それもあってか活気にあふれていた。

 当然、人が増えれば食糧難になるだろう、なのに市場にあるのは新鮮な野菜や肉。

 太陽が出ていないのにどうやって……


「食料が気になりますか?」

「え? ……う、うん」


 急に声を掛けられ僕はそれだけ答えると、僕の様子を見かねたのかナタリアがノルド君に質問をしてくれた。


「正直に言おう、不思議でならないな……私たちのいた場所ではユーリの魔力があったため太陽が出ていたが、ここは違う一体どうやったんだ?」

「ふぁ!?」


 太陽があった理由って僕なの!?

 いや、流石にそれはないよね……だって、魔力だけでそうなるなら……


「ええ、ユーリお姉ちゃんの知り合いに錬金術師のテミスさんがいらっしゃいますよね?」

「テミスさん? うん、リラーグで知り合いになったけど……」

「彼女が……おっと」


 ノルド君がなにかを言いかけた時に急に立ち止まる。

 一体なんだろうか? 首を傾げつつも彼の奥へと目をやると……


「よっお嬢ちゃん酷いじゃないか、せっかく来たなら俺たちにも会いに来てくれよ」

「レオさん!?」


 なんでリラーグに?

 ここは結界で覆われているはずだ。

 外から入るには中にいる人……術者が一度魔法を解く必要が……


「なんでいるのか? って顔をされていますね、リラーグに人が集まっていたので何事かと思い来たんですよ」

「…………ホーク」


 シュカ、今明らかに嫌な声出たね……?

 で、でも二人がここにいるってことは……


「「デゼルトは?」」

「そこ聞くのはあたしのことじゃないの!?」


 僕とフィーは同時に声に出し、それに突っ込みを入れるのは当然シアンさんだ。

 でもシアンさん、そう言われましても貴女はそこにいましたし……


「…………安心してください、デゼルトもこちらに来ていますよ」

「最初は警戒されちまったが、お嬢ちゃんのドラゴンだって説明をしてな、今は――外周で昼寝でもしてるんじゃないか?」

「そっか……デゼルト無事なんだね」


 良かった……あの子は魔物だから、襲われることは無いとは思っていたけど……実験なんかに使われそうで怖かったんだ。


「良かったね、ユーリ?」

「うん、安心したよ」

「彼らが持ってきてくれた、魔水晶のお蔭もあり人口的な太陽を作ることが出来たんですよ」


 …………へ?


「ああ、あれか……いやな壊れた水晶体を持って行けば直るかも知れないと思ってな。そうしたらフォーグの宿のお嬢ちゃん……ジェネッタだったか? が魔法で太陽を作るだの、なんだかよく分からないことを言い出してな」

「どうやら、ユーリさんが使った魔法のことを言っていたらしいのですが、太陽を作る魔法なんてありませんからね。炎の魔法と光の魔法を駆使し、温度と光度を保つマジックアイテムを作ったらどうかと提案したんです」

「提案したのはあたしよ!!」


 そう言えば、シアンさんは妙に的を得る時があったっけ?

 グアンナの時もそうだったし……


「しかし、あくまで食べれるという状態です、それさえも彼らとテミスさんがいなければ出来なかったことで今は助かっております」


 そうなんだ……

 なら後で陽光(ミーテ)を使えば……って流石に長時間は使えないか。


「っと引き留めて悪かったな。ノルド、俺たちは酒場にいるからよ」

「はい、後でご案内します」


 三人はノルド君にそう言うと去っていく……でも、酒場って龍狩りの槍のことだよね?

 わざわざ案内をされなくてもフィーが連れてってくれそうだけど……


「では、改めて屋敷にご案内させてもらいます」





 シルトさんの屋敷は以前と変わらない場所にあった。

 だけどそこには前よりも兵士の数、そして冒険者がいて……


「おい、ノルドその団体はなんだ?」

「客人です」


 どうやら、僕たちは警戒されているみたいだ。


「客人だ? おいおいだからって領主様に会わせる……」

「ギャアギャア騒いでるんじゃねえよ……ようやく来たか、女」


 怖い顔で近づく男性を制したのは屋敷の中から顔を出した懐かしい人、クロネコさんだ。

 彼は冒険者を睨むと……


「テメェの仕事はあくまで見張りだ。客にまで絡んでるんじゃねえ」


 彼はそう言うと僕たちにはついて来いと一言告げる。

 すると、今まで案内をしていてくれたノルド君は頭を下げ。


「では、クロネコさん……ボクは案内までですので、持ち場に戻ります」

「ああ、ご苦労だった」


 な、なんか……僕たちが喋る雰囲気じゃないなぁ……

 そう思いつつも、クロネコさんの後に続き僕たちは屋敷の中へと入った。

 暫く歩くと彼は一つの部屋の扉を開け――


「ここで待つ事になってる、暫くしたらシルトの奴が来るはずだ」

「わ、分かった……」


 なんか、クロネコさんも偉くなってるの、かな?

 なんにしてもこの部屋でようやく一息を付くことが出来る。


「なんか、昔と違うね?」

「流石に五年だからね……」

「私は見たことがない物ばかりだな、しかし……領主直々に話か、悪い話でなければ良いのだが」


 確かに、こんな世の中になってしまっていくら野菜が作れるとは言っても食糧難は間違いがない。

 街を守るために僕たちには出て行ってもらうなんてことも無くは無いだろう。


「おい、もしもの時はどうするんだ?」

「その時はその時だろう」


 バルドは口には出さないけどシュカのことを心配してるのだろうか?

 でも、多分ここが駄目ならオークの村を提案してくれるだろうドゥルガさんがいるし、彼に交渉してもらえばアーガさんも許してくれるはずだ。


「……あ、あたしは流れでついてきちゃったけどここにいて良いの?」

「そういえば、リーチェずっとついてきたねー?」

「なんか別れるタイミングを逃しちゃったからね……」


 確かにそうだけど、いちゃいけないってことは無いだろうし……


「武器も必要になるかもしれないから、リーチェさんもいてくれた方が良いかもしれないよ」


 僕がそう言った丁度その時、静かに扉は開けられた。

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