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106話 加工技術と魔法

 金剛石を加工することに決めたユーリたちはリーチェの師匠であるフォルグ鍛冶場を借りることが出来た。

 しかし、肝心の鉱石は硬い物の衝撃には脆く鎚で叩いただけで割れてしまった。

 困惑するユーリたちにリーチェは魔法……鉱石自体をマジックアイテムにすることを提案し、ユーリはそれを承諾した。

「これが、こうなって……ここの言葉が……」


 魔法を作り始めて数日後、あれからすぐに僕はマジックアイテムのことを調べた。

 物を作ると言われると難しいかと思ったんだけど、実際は魔法作成そのもの。

 大型の魔法陣の上に魔法を吹き込む物を置いて、魔力を注ぐという物らしい。


 魔法の効果は衝撃や熱などに強くするというもので、これさえ出来てしまえば、後はフィーの剣になる大きな原石を探せばいいだけだ。

 それも、クロネコさんが情報を集めてきてくれて話もつけてくれた。

 というか、話を聞いたら引き取ってくれるならお金もくれるらしい。

 一応見つからなかった時の為に合金を探してくれてたみたいだけど、こちらには腕利きの錬金術師がいなくて見つからなかったとのことだ。


「ユーリ、ごめんね?」

「ん? いや、元はと言えば僕を助けてくれたからなんだから、当然だよ」


 どこか居心地が悪そうにするフィーにそう伝え、僕は再び式と格闘する。

 リーチェさんも今頃、金剛石と格闘してるだろうし頑張ろう。

 そう、考えていた矢先だった。


「ユーリいる!?」

「うわぁぁぁぁ!?」


 扉が勢い良く開け放たれた音にびっくりした僕は思わず悲鳴を上げる。

 な、ななな……。


「リ、リーチェ……ユーリならいるけど、どうしたの?」

「出来たの、金剛石の加工が!」


 なるほど……それであんなに大きな声で……


「それよりも見て、この石」


 彼女はほくほく顔というのだろうか、やけにニヤついた顔を見せながら手に持つ金剛石を加工した物を見せてきた。

 不格好ではある、でもそれは確かに……


「綺麗でしょ? 宝石並み……いやそれ以上かもしれない虹色の宝石なんて見たことないよ」

「あの石がこんな風になるんだね~?」


 僕は画面越しでしか見たことがなかったけど、光によって七色に光る宝石ダイヤだ。


「ユーリの言った通りだねー?」

「ん?」

「確かに、まさか金剛石同士で加工すれば良いなんて思いつくなんて、以外に頭は良いみたいね」


 な、なんか微妙に褒められてる感じがしないけど……

 本人に悪気はないんだろうなぁ、出来た宝石を見てうっとりしてるし、当然だけど、この世界でも宝石が好きな人は好きみたいだ。


「っと、これでとにかく加工は出来る、魔法陣の方はどう?」

「うん、こっちも順調だよ、もう少しで出来そう」


 僕の報告を聞き満足そうに頷いたリーチェさん、彼女は出来上がったダイヤを若干名残惜しそうに僕に渡してきた。


「魔法が出来たらそれで試してみて、その後砕けないか実験してみる……良い?」

「分かった」

「それで大丈夫なら、大きな物を取りに行くんだね?」


 フィーの言葉に再び首を縦に振ったリーチェさんは伸びをし、部屋を出て行った。

 これで、なんとか形にはなる。

 雑学でも頭に留めておいて良かったよ。


「そういえば、前に加工できるなんて凄いって私が言った時になにか言いかけてなかった?」


 僕の手にある宝石をまじまじと見ながらフィーが聞いてきた。

 ああ、あの時のことか……


「うん、ダイヤって僕の世界では永遠の愛とか永遠の絆を現す宝石なんだ」

「へぇ~そうなんだ?」


 僕は頷き、ふと考え付いた。

 折角ダイヤが出来たんだ……魔法が上手く行ったら一つブローチかなにかにしてもらおう。


「そうと決まれば、魔法陣を早く作らないと!」

「え? う、うん?」


 僕の声に首をかしげるフィー。

 彼女を見てより一層やる気が出て来た僕は再び式と向き合う。

 フィーが喜んでくれると良いな。





 二日後、僕は部屋の中に布を引き大型の魔法陣を書いていた。

 魔法には攻撃を含ませる物を一切含んでないし、危険はない。

 ソティルにも一応確認したけど、理論上爆発とかすることはないとのことだ。


「じゃぁ、行くよ?」


 僕はフィーとリーチェさんに声をかけるとダイヤを魔法陣の上へと置き、一歩下がり右手を魔法陣へ向けた。


「我望む、最も固き鉱物、決して傷つくことの無いものを、砕けることなく、未来永劫を……この物に与えたまえ……アダマンタイト」


 魔法陣は詠唱、名と唱えると徐々に光り始め……その光はダイヤへと吸い込まれる様に消えていく。

 僕は心臓がバクバクと脈を打ち光が収まるのを待つ。


「終わった、みたいだね?」


 ダイヤを手に取り、深呼吸をしてリーチェさんに手渡すと彼女はそれをあらかじめ用意しておいた鉄板の上に置き鎚で叩く。

 一回、二回と確かめるために何回も……


「…………ふぅ」


 その動きを彼女が止めたのを見て僕はゆっくりと息を吐き出した。


「お疲れ様、これならフィーの剣を作れるよ……ってぇ!?」

「「ど、どうしたの!?」」


 急に大声をあげた彼女に対し僕たちはそろって聞く、も、もしかして傷がついちゃった!?


「鎚が、へこんだ……」


 がっくしと項垂れる彼女を見て内心ほっとしたのは言うまでもなかった。

 でも、この魔法を応用すれば……もしかして別の魔法も出来そうだ……試してみよう……





 その日の夜、僕はリーチェさんに話をする為に部屋に赴いていた。


「で、話って?」

「えっと、実は出来た石で僕とフィーのアクセサリーを作ってほしいんだ」


 真面目な顔で聞き入ってた彼女はずるりと身を崩し呆れた顔で僕を見る。


「重要な話かと思ったら……」

「重要だよ!」

「……はぁ、それぐらいなら後で作っても良いけど、でも小さくは出来ないよ? 大きさが大きさだし、技術がまだ足りないペンダントやブローチ、それに腕輪になっちゃうけど良い?」


 何回か断られると思ってたけど、作ってくれるみたいだ。


「お揃いなら問題ないよ、でも……良いの?」

「今回はユーリのお陰で最高の武器が作れそうだからね。そのお礼は考えてたから丁度良いよ」


 リーチェさんってやっぱり良い人だなぁ、結構ぐさりと来る言葉があるけど……


「でも、女の子同士って言うのは私は反対かな……言っても聞かなそうだけど」

「あ、はは……」


 半眼にして睨まれた僕は目をそらし苦笑いを浮かべた。

 うん、やっぱり一言が怖いよリーチェさんは。





 さらに翌日、僕たちは村の鉱員さんたちに連れられて巨大な原石がある場所へと向かっていた。

 僕たちと言ってもあまり大勢で行っても邪魔になるということなので、リーチェさんを除いたタリム組だけだ。


「ほら、着いたぞ」


 鉱山の中を進んでいくと鉱員さんはライトで壁を照らし僕たちにそう告げる。


「うわぁ……」

「何日かかかったが持って行きやすいように周りを掘っておいた」

「助かる、おい! ドゥルガ運べるか?」


 そういえば、クロネコさんってドゥルガさんとリーチェさんはちゃんと名前で呼んでるよね。

 なんでだろう?


「任せておけ」

「しっかし、そんなクズ石なにに使うんだ? まぁ、持っててくれるならなんだって良いけどな!」


 地球じゃこんな大きさの原石見つけたら一台ニュースされた上に一騒動ありそうなものだけど、やっぱり価値観が違うんだなぁ。


「ま、待ちやがれ!!」


 僕がそんなことをぼんやりと考えていると、怒鳴り声が聞こえ……横を大きな袋を担いだなにかが通り過ぎて行った。


「……へ?」

「チクショウッ!! お、おいそいつを止めてくれ!」


 そ、そいつ?

 ゆっくりと振り返ってみるとそこには小さな体の見覚えがある魔物がいて――


『アギ! アギィ!!』


 袋を持ちながらこっちをバカにするような動きをしている。


「お、俺たちの昼飯が……また……」


 あ、本当にご飯だけ狙ったんだ……。

 というか、筋肉質な方々なのに退治はしないのかな?


「チッ、なぁ……あいつらから俺たちの飯奪い返してくれないか?」

「いくら出す?」


 バルドが息をするようにお金の話を切り出したよ!?


「そこを助けると思ってよ、な?」

「あぁ? それは依頼だろ? 金が出ないなら俺は降りる」


 どうやら彼は本気みたいだ。

 けど……もし襲ってきたらフィーは武器がないし、数が多かった時こんな所で炎壁(フレイムウォール)は使えない。

 意地悪な言い方だけど仕方ないか……


「断っても良いけど、もし石をくれないって言われちゃったらその分バルドが頑張ってくれるのかな?」

「クッ……」


 僕の言い方がどこか気に入ったの様子のクロネコさんはその顔をまるで悪役の様にして僕の言葉に続く。


「女の言う通りだな……リーチェも女も俺もやることはやった……後はこの石だけだ。手に入らなかったらそれ相応の謝罪、対応はあるべきだよな……分かるよなぁ? 馬鹿野郎」

「今回は、クロネコに、賛成」


 シュカもどこか意地悪っぽい顔してるなぁ。


「小さい剣では折れかねんな」


 ドゥルガさんは呆れたように腕を組んで、ため息交じりにそう言ってるし……フィーは――


「あんまり好き勝手してるとシアに言いつけちゃうよー?」

「ッ!?」


 どうやら、一番効果のある言葉を彼に向けたみたいだ。

 というか、シアさんて……


「シア? 彼女は優しいだろう、シアに言いつけるぐらいならナタリアの方が良いと思うが?」


 ドゥルガさんも同意見だったみたいだ。


「うん、でもシアに言いつけるよー?」

「テメェ……後で覚えてろよ?」


 バ、バルド怖いよ……?

 彼は低い声で唸る様にそう言うと、未だこっちが抵抗しないと思いこんで変な動きをしているゴブリンに向かい駆けて行った。


『アギィ!?』


 突然向かってきた男に対し怯えた様な声をあげたゴブリンは奥へと逃げていき。


「待ちやがれ!!」


 バルドの声は坑道の中に響き渡る。


「お、追いかけよう!!」


 (しばら)くそれを見ていたけどハッとした僕は皆にそう言うとフィーの手を取り彼の後を追った。

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