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105話 二人の鍛冶師

 戦力の一人であるフィーナの武器が壊れ、新たな武器を探すことになった一同。

 だが、彼女の武器は入手しづらい合金であった。

 そんな中、ユーリはダイヤ……金剛石があるかを問うものの加工技術が無いことを知る。

 だが、その技術を知っていたユーリはダイヤはダイヤで削ればいいと告げ、フィーナの新たな武器を求め、行動を始めた。

 僕たちが村について翌日のことだ。

 クロネコさんは情報収集にレオさんたちは村の中に繰り出し、バルドは部屋で寝ている。

 そんな中、僕たちは武器屋へと向かっていた。


「広い村だね……」

「そうだねー? 私がいた時はこの村見たことも無かったけど……」


 この村の名前はムルル、首都に住めない人たちがここで暮らしているらしい。

 住めない理由はどうやら高い税金を取られるみたいだ。

 村と言うだけあってムルルは税金が特別安いって訳には行かないみたいだけど、話しを聞いていくとやはり出てきたのは宮廷魔術師の存在。

 ますます怪しくなってきたね。


「着いた……」

「ふぅ、意外と大きい鍛冶屋だね、これなら必要な道具は揃ってそうだけど」


 武器屋に着いたらしく、二人は店の中へと入っていき、僕たちもそれに続いて中へと進む。


「ほう、中々良い武器が揃ってるな」


 入って一番最初に聞えたのは客を迎え入れる声ではなく、ドゥルガさんの感心した声だ。


「客か?」


 その声に反応したのだろう、奥から男性の声が聞え……

 彼はその姿を僕たちへ見せた。


「…………」


 その姿に僕は思わず息をのんだ。

 煤だらけの彼はこれほど武器屋、いや……鍛冶屋としてピッタリな人はいるのだろうかという格好だった。

 ずんぐりとした体躯、男性としてはかなり背は小さく僕ぐらい。

 ヒゲは伸ばし放題であり……

 簡単に言えば、伝説の武器を作ってしまいそうな種族。


「うげ……」

「ド、ドワーフだ……」


 僕とリーチェさんの声が重なり、男とフィーはほぼ同時に口を開いた様で……


「あん?」

「どわーふ?」


 声は再び重なって聞えた。

 だ、だってあれ完全にドワーフだよ!

 あれ? でもこの世界にドワーフっていないよね?

 だとしたら奇跡的に見た目格好が同じってことなんだ……なんか凄い人を見た気がするよ。

 そう一人感心する僕を見たフィーはしきりに首をかしげている。


「ユーリ、ドワーフってなに?」


 よほど気になったのだろうか? こっそりと耳打ちしてくるフィーに僕は同じ様に耳元で囁く。


「僕の世界の作り話で凄い武器を作ったりする種族のことだよ」

「へぇ~、そうなんだ。リーチェと一緒だね?」

「「はぁ!? 誰が一緒だって」」

「「うわぁ!?」」


 僕たちの会話が聞えてしまったのか二人の鍛冶師は同時に声をあげ、僕たちは思わず声を上げ、シュカとドゥルガさんも一瞬ビクリと体を震わせた。


「ご、ごめんなさい……」


 思わず謝ってしまったけど、二人とも耳良すぎない?


「テメェがなんの様だ……ええ? ボンクラ」

「見かけないから死んだと思ってたんだけど? 老いぼれ」


 な、仲も悪すぎないですか?


「はんっ! お前が名を上げたから移動してきただけだ」

「それはどうも……おかげさまで」


 なにか言った方が良いのだろうけど、空気がぴりぴりしていて、会話に入りづらい。

 二人はにらみ合うようにお互いを見つめているし……


「……相変わらず、切れ味の鋭い武器を作るみたいだね……フォルグ師匠」

「はんっ! ナマ言うようになったなひよこ弟子」


 へ……?


「師匠?」

「弟子って……」


 僕とフィーは二人を交互に見て呟く。


「フォルグ、師匠?」


 シュカも驚いたような呟きをしている。

 あれ? そういえば、フォルグってどこかで聞いた様な?


「ふむ……」


 一人、ドゥルガさんだけ納得がいったように頷いている。


「で、なんの用だ……ひよこ弟子」

「武器が一つ折れた、新しいのを作りたいから作業場を借りる」


 って、ええ!?

 貸してじゃなくて借りるって断言してるけど、大丈夫なの? いや大丈夫じゃないよね!?


「勝手にしろ!!」


 ほら、やっぱ……


「それで良いの!?」

「あん? なんだこのひよこは」


 ひ、ひよこ……


「勝手にして良いが、昼間は駄目だ日が落ちてからにしろ!」


 一瞬僕に目を向けたドワーフはすぐにリーチェさんに向き直り、人差し指を突きつけた。


「解ってるよそれぐらい」


 それに、若干拗ねたような声でリーチェさんはそう答え、僕たちの方へ振り返ると……


「フォルグ師匠の鍛冶場で助かったよ、貸してくださいなんてお願いしないで済むからね」


 皮肉たっぷりにそう言い放つ。


「さっ、鍛冶場はこれでなんとかなったし、日がまだ高いから手綱の設計図を描くよ」


 彼女はそこまで言うとなにか思い出したのだろう、リーチェさんは人差し指を上にぴんっと立てると……


「そこの黒髪の子、フォルグ師匠の武器使ってるんだ。調整しておいたけど、見て置いてあげて」


 黒髪の子っていうのは間違いなくシュカのことだろう。

 そうだ、そういえばシュカの武器を買う時フォルグって名前を聞いた覚えがある。

 だから、聞いた様な感じがしたんだ……

 まさか、リーチェさんの師匠だったとは思わなかったし、あの様子じゃフィーも知らなかったみたいだ。

 僕たちが呆気にとられていると、再び「はんっ!」っという声が聞こえ。


「どれ、ひよこ見せてみろ」


 そのひよこって言うのは口癖なんだろうか?


「……ん」


 そして、シュカはひよこと呼ばれたのを気にせずにナイフをフォルグさんに渡した。

 彼はそれを色んな角度から眺め一つ盛大なため息をつき。


「手入れの仕方が素人すぎる」


 っと一言ぼやいた……

 当然リーチェさんにも聞こえるぐらい大きな声だったから、彼女の肩は震えていて、眉はぴくぴくと動いていた。


 シュカの武器を点検してもらい僕たちは武器屋を出て再び酒場へと向かう。

 途中雑貨屋に向かい金剛石をいくつか買ったんだけど……

 その店で僕は驚いた。

 金剛石……つまりダイヤは本当に捨て値同然で売られていて、買う時に売れない物を買ってくれたからとお土産に果実までもらってしまった。


「ユーリなにをボーっとしてるの、さっさと設計図書かないと、それに加工出来るかどうか早く試したいんだから、置いてくよ!」


 先ほど師匠であるフォルグさんに言われたことはスッカリ忘れるようにしたんだろう、リーチェさんはやけに元気だ。

 そんなことより、この世界に来て価値観の違いというのは何回かあったけど……


「うわぁ……」


 僕は自分が抱える原石を見て、確信する。

 今、僕一財産を抱えて歩いてるよ!? っていうかなにこの大きさの原石は!!


「ユ、ユーリ大丈夫? 重い?」

「う、うん、大丈夫……」


 ここではただの石ころだし、これを持ってたからといって襲われる心配はない。

 でも、僕今……


「ダイヤモンド抱えちゃってるよ」


 以前では絶対考えられない現実を重さによって突き付けられ、僕は呟き苦笑いをした。


「だいや、もんど?」


 そっか、こっちでは金剛石という鉱石って解釈はあっても宝石ダイヤモンドはなかったんだっけ?

 なんかややこしいな……


「うん、これを削って加工するとそのダイヤモンドって言うのになるんだ」

「へぇ~、昨日も思ったけどこんな硬い石を加工なんて、ユーリのいた世界は凄いんだね?」

「うん、それに――」

「二人とも早くしなさい!」

「「って、置いていかないで!?」」


 僕の言葉はリーチェさんの叫び声でかき消され、離れてしまっていた慌てて彼女たちを追った。





 酒場について一休みをしていた僕だったけど、今はリーチェさんの借りた部屋にいる。

 理由はダイヤの武器についてだ。


「問題が見つかった」

「問題?」


 僕はどうやらそれで呼び出されたみたいだ。

 彼女は頷くと小さな金剛石の原石を手に取り、ナイフで傷つけようとする。

 だけど……


「この通り、金剛石には傷すらつかない」

「うん、そうだね」


 頑丈だからこそ、結婚指輪に選ばれるんだし当然だと思うんだけど……

 彼女は僕の様子を見て、今度は鎚を取り出し先ほどの金剛石を机に置いた。


「でも――」


 そして、その言葉と同時に手に持った鎚を振り下ろす。

 すると……


「嘘……こ、粉々だよ!?」

「頑丈なのは間違いない、でも衝撃には弱かったってこと……昔から加工出来ないって言われたし、私も今日……いや、今知ったよ」


 そんな、これじゃ……もし大きな石を見つけることが出来ても、剣としてはなんの役にも立たないってことじゃないか!


「そんな顔するのも無理はないね、釜に入れてどうなるかだけど、このままだと確実に打つことは出来ない」


 リーチェさんは難しい顔で言葉を続ける。


「剣を作るなら削り取るしかないね、それに形になったとしても武器としては使えないし、勿論ドラゴンと船を繋ぐ金具なんていうのも無理だと思うよ」


 ダイヤが衝撃に弱いなんて……って、このままだと?


「なにか、方法があるんですか?」

「そう、出来るかは君次第だけどね」


 僕、次第?


「金剛石の武具をマジックアイテムにしちゃうの、衝撃に弱いなら結界を石自体に張って強化しておけば解決でしょ」

「なるほど、魔紋みたいにするってこと……って僕が!?」


 驚いた僕に対しにっこりと意地の悪い微笑みを見せるリーチェさんはゆっくりと口を開き。


「金剛石同士で削ればいいなんて無茶言ったんだから、こっちの無茶も聞いてくれるよね」


 未だ口元をにっこりさせながら、目を細め僕を見るリーチェさんに対し、僕は何度も首を縦に振るしか無く。

 彼女はそれを見ると……


「じゃ、早めに魔法をお願いね」

「わ、分かりました……」


 ま、また魔法陣か、これもフィーの武器の為なんだ。

 それにしても結界か……魔紋とソティルの洞窟の式って応用出来るかな? 調べてみよう。

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