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104話 ムルル村

 グアンナを倒すことが出来たユーリは安堵する。

 だが、肝心の止めを刺すことには至らず彼女は魔物に最後の牙を向けられた。

 そこに駆け付けたフィーナたちのお蔭もあり、ユーリたちは無事危機を抜けることが出来たのだが……?

「あ、ぁぁぁぁあああああ!!」

「――っ!?」


 しんっと静まり返る森の中……

 静寂を破ったのはリーチェさんの叫び声だった。


「び、びっくりした……リーチェどうしたの?」


 フィーは片手で僕の背中をぽんぽんと叩いてくれながら、彼女に声をかけると彼女は眉を吊り上げて近づいてきてもう片方の手に持っている彼女の大剣を指差す。


「ん? ……あ」

「あ、じゃない! あ、じゃ!……これ使い物にならないよ、街まで行っても新しいのが出来るとは限らないからね!」


 彼女はそう言いながら背中に背負っていた布にくるまれた物をフィーへと手渡す。

 形から行って剣を手渡したんだろうけど……


「う、う~ん?」


 フィーはそれを受け取るとしきりに首を傾げ始めた。


「なに?」

「これ、凄く軽い――ひぅっ!? な、なんでもないよ?」


 なんかリーチェさんが凄い目をしてた気がするけど……気にしないでおいたほうがいいかな……


「そ、それじゃぁ行こうか?」

「待て……」


 僕たちが歩き出そうとするとバルドが苛立った様子で声を放つ。


魔族(ヒューマ)殺しと言ってたが、こいつはただの魔物じゃねぇのか?」

「ああ、完結に言うと大昔の戦争時魔族(ヒューマ)を殺す為にエルフに頼んだものだ……本来なら森を破壊する行為はしないはずだがな」


 そうだったんだ……エルフって精霊の長でもあり神様みたいだなぁって思ってたけど、昔は森族(フォーレ)だけに手を貸してたのかもしれないね……

 でも、フィーもエルフのお陰で助けられたし、感謝してもしきれないよ。


「おい、女さっさと行くぞ」


 クロネコさんは僕にそう言った後、グアンナの死体の方へ目を向け。


「後、死体に触るな、腐って死にたいなら自由にしておけ」

「ひぃ!?」

「だからやめろと言ったんですよ……シアン」


 シアンさん、一体なにをしていたのでしょうか?

 見てみるとそこには慌てて身を引いたシアンさんと首を振るレオさんとホークさん。

 恐らく……いや、確実にホークさんに見惚れているシュカの姿があった。

 あ、そうだ。


「リーチェさん」

「なに?」


 うぅ、怖い。


「シュカとドゥルガの武器は大丈夫ですか?」


 バルドは怪我をした様子がないから大丈夫だとしても二人は武器で魔物に傷をつけている。

 武器が腐ってもおかしくは無いはずだけど。


「安心しろ、腐らせるのは唾液だけだ」


 心配する僕にクロネコさんが答えてくれた。


「あ、そうなんだ」


 二人も武器が駄目になってたら困る所だったけど、大丈夫ならまだ安心かな?


「おい! さっさと行くぞ!!」


 クロネコさんに促され僕たちは再び歩き出す。

 来た道を戻って行くのかと思ったら、森の中を進んでいく気みたいだけど……


「道合ってるのかな?」


 僕は不安になりフィーへとそう聞く。


「クロネコは方向感覚が優れてるからね~大丈夫だよ?」


 なにその羨ましい能力。

 僕も迷子にならない力が欲しいよ……

 そんなことを考えながらも彼の後をついて行くとすぐに森の中を抜けることができ、街道も確認が出来た。

 多分、さっきの道の先だとは思う、もしかして気を使ってくれたんだろうか?


「時間を取られた、急ぐぞ!!」


 街道に戻った僕たちは急ぎ次の村へと向かう。

 その途中、街道とはいえ魔物に遭遇したけど先ほどの巨大な牛グアンナよりかは遥かに安全だ。

 まぁ、最初魔物にあった時は……


「牛の魔物ってまさか、また!?」

「大丈夫だよーあれはただのキャトレイジって言って凶暴な牛なだけだよ? 食料にもなるよ?」


 慌てふためく僕たちに、落ち着いた様子のフィーがただの暴れ牛だと教えてくれた。

 勿論、倒した牛はフィーとドゥルガさんが捌いてくれたから、美味しくいただけたし、この世界に来て牛肉を食べるのは数えるぐらいだったから、凄く美味しかった……さっきシアンさんが注意されてたのはもしかして、あの魔物を食べようとしてたのかな?


 食事を済ませた僕たちは進み続け……


「や、やっとついたね?」


 日が落ちかけた頃、ようやく村が見えてきた。

 村と聞いていたから恐らくギルドは無いんだろうけど、大きな村を見るとやっぱり街って思っちゃうなぁ。

 とにかく無事村に着くことが出来た僕たちは近くにいた人に声をかけた。


「すみません」

「なんだ? って旅の者かようこそムルルへ、それでどうしたんだ?」

「冒険者が寝泊まり出来る酒場ってあるかな?」

「ああ、それなら精霊の宴が良いだろう、この道を……」


 丁寧に教えてくれた村人にお礼を言った僕たちは、そこに向かい店に雪崩れ込むように入る。


「な、なんだ?」


 当然店の中にいるお客さんも店員さんたちも驚きの表情を見せるが……


「冒険者か? なんだってそんな慌てて……まぁ良いあっち長机が空いてる好きに使え」

「あ、ありがとうございます。あの今日って泊まれるかな?」


 僕が店主らしきおじさんにそう聞くと……近くにいたガタイの良いおじさんが豪快に笑った。


「ガハハハハ!! おいおいユング! 今朝能無し共を追い出して良かったじゃねぇか!!」


 へ? お、追い出し?


「はぁ、無駄な喧嘩されるこっちの身にもなれってんだ……まぁ、お嬢ちゃんたちは運が良かったな丁度ウチの冒険者は――」


 店主さんは豪快に笑ったおじさんを指差し言葉を続ける。


「そこの奴らしかいない、部屋が埋まるなら大歓迎だ」

「おいおい! 感謝しろよ美人が集まって嬉しいだろうが!!」


 よ、良く分からないけど、歓迎はされてるのかな?

 進められた机へ僕たちは腰をつけると、リーチェさんは難しい顔で口を開く。


「ここにはどの位滞在するつもり?」

「馬鹿犬の武器が必要だ……どの位かかる?」


 クロネコさんに言われ、苦笑いをするフィーを見て盛大な溜息をついたリーチェさんは額に手を付き語る。


「あれ、フィーナ専用の特注品……鉱石も特別な物を使ったの……じゃなきゃ森族(フォーレ)とは到底思えない馬鹿力で壊すからね」

「ご、ごめんね?」


 苦笑いのまま謝っているフィーだけど……あれってそんなに凄い物だったの!?

 っていうか壊すって……


「じゃぁ、今持ってる剣じゃ役不足ってこと?」

「それは同じ材質で出来てるから、強度は問題ないよ……けど」

「軽すぎるねー……な、なんでもないよ?」


 僕が持ったら十分重そうな剣を軽いと言い張るフィーはリーチェさんに睨まれ、言葉を撤回する。

 特別な鉱石か……テミスさんがいれば解決できそうなんだけど、それは無理だしなぁ。


「さっきの所に戻って剣を回収するのは?」

「駄目、あの鉱石は焼き直しが出来ないの。その代わり刃こぼれも殆ど起こさないし万が一起こしても少し削れば元通りって代物なんだけどね」

「仕方がねえな……馬鹿犬には馬鹿でかい剣が必要だ……鉱石を探すしか無い」

「馬鹿馬鹿言わないで欲しいんだけど?」

「フィー!? 抑えて」


 うん、僕もフィーのこと馬鹿って言わないで欲しいな。

 でも、今はきっと馬鹿にしてるわけじゃないと思うから、僕は一応フィーをなだめる様に抱きついた。


「ぅ……」

「問題は手に入りにくいってことなんだよね」


 僕たちのやり取りよりも、武器の方が気になっているのだろうクロネコさんたちは呆れた目で僕たちを見ながらも話を進める。

 元々、あの魔物を倒そうとしたのは僕だし僕にも責任はあるよね……


「ね、ねえ?」

「なに……」

「その鉱物ってどんな物なの?」

「鉱物って言っても錬金術で作った合金……探そうって鉱山掘っても見つかることは無いよ」


 なるほど……やっぱりテミスさんがいてくれていたら簡単に解決出来ていた問題なんだね。

 でも、それならまだ可能性はあるかもしれない。

 この世界にも炭やそれを利用した筆つまり鉛筆のような物はある。

 なら勿論、同じ材質で出来ているダイヤもあるはずだ。

 でも、宝石店とかで見たことが一切無い……一応確認しておいた方が良いかな。


「フィー、ダイヤ、もしくは金剛石って鉱物はある?」

「ん? エターレにってことだよね……ダイヤっていうのは知らないけど、金剛石なら……うん、聞いたことあるよ?」


 同じなんだけどなんでダイヤは知らないんだろう?


「金剛石!?」


 僕たちの会話が聞えたのだろうか、金剛石と言う言葉にリーチェさんは声を荒げた。


「アンタ馬鹿なの!? あんな硬すぎる鉱物使い物にならない! 加工すら出来ないんだからね」


 なるほど、だから本とかにも載ってなかったのか……


「出来るよ」

「解ってるじゃない! 出来るって……え?」

「だから、出来るんだ加工……金剛石同士なら、硬度は同じだから金剛石で削っちゃえば……」


 確か地球の大昔の人も同じことを考えて今に至ったってなにかで読んだ覚えがある。


「……金剛石同士で?」

「削るって……お嬢ちゃん天才か?」

「へ?」


 はて、僕はなにか変なことを言ったのだろうか?

 天才なんて言われることを言ったつもりはないんだけど。


「理論上、ありえなくは無いですね……最初は手こずるでしょうが、誰も成し得なかった最高の武器が作れるかもしれません」

「アタシは気がついてたわよ!」

「シアンは黙っててください」


 シアンさん、なんかかわいそうな人だな……


「金剛石なら、いっぱい、捨てられてる……店でも、安い」


 僕としてはダイヤが安売りなんてビックリだよ。

 これも価値観の違いなんだろうか、というか錬金術でどうにか出来なかったんだね。

 でも、まぁ……問題は残ってるんだよね。


「フィーの剣が出来るほど大きな結晶が見つかれば良いんだけど……」

「でも……それさえあれば、試して見る価値はありそう」


 リーチェさんは手を額から顎に移しぶつぶつと呟き始め。


「この近くに鉱山はあるの?」

「着いたばかりだ。調べてみないと解らないな」

「調べろ、今すぐにだ」


 め、珍しくバルドが賛同してくれた。

 少しは仲間意識があったのかな?


「フィーナの奴が戦力外じゃ、俺が金に見合わねぇ仕事をするしかねぇだろうが」


 う、うん、バルドはバルドだったね……


「黙れよ、誰が探さないって言ったんだ? おい、リーチェ、女の言ってることが本当か試しておけ、その間に鉱物がある場所を特定してやる」

「解った……丁度ユーリにお願いされていた物もあるし、それで試して見るよ」


 お願いされていた物?

 デゼルトの装備のことか、それはありがたい。

 ダイヤ……金剛石なら頑丈だし、安心できる。


「それと、時間が余ればナイフぐらいなら作っておくよ」


 リーチェさんは笑みを浮かべそう、口にした。

 僕の案が通ったのは良いんだけど、本当にフィーの剣を作るほど大きな原石は見つかるんだろうか?

 いや、投売りされるぐらいなんだ。

 大きな物が残ってるって信じよう。

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