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100話 龍に連れられて

 見事ドラゴンを手懐けたユーリはドラゴンにデゼルトと名付けた。

 青き龍を船へと繋いだ彼女は一安心するも、起きてきたフィーに対し威嚇をするデゼルトを見て、慌てなだめる。

 やがて起きてくる他の仲間を威嚇させぬよう説明をするのだった。

 そして……

 起きてきた皆は唖然とした顔で僕の頭上を見上げる。

 どうやらデゼルトを見ているみたいだ。

 そのデゼルトの方はさっき人を襲わないようお願いしておいたので今は大人しくしている……頭が良いみたいで助かったよ。


「それで、この子に港まで引っ張ってもらおうって思って」

「なるほどな、悪くない判断だ……」


 どうやらクロネコさんは納得してくれたみたいだけど、問題は……


「いや、結果論でしょ!? 普通一人でドラゴンに向かって行く馬鹿いるの!?」


 たった一人でドラゴンに向かって行った僕を怒るのはリーチェさんだ。

 とは言われても……


「あの時は僕しか起きてなかったし、あのままじゃ船沈んでたよ」

「だから、中になにも無いって思ったら去るかもしれなかったでしょ!! もし、君が負けてたらドラゴンは結局船を沈めるじゃない!」

「うぅ……」


 僕としては去るかもしれないって言うのもあくまで可能性だったと思うし……なにより。


「そう言われると困るけど……それだと船動かないよ?」

「そ、それは……」

「勿論僕もリーチェさんに直してもらおうとも考えたけど……」


 彼女は急に黙り込み静かに首を振る。


「無理、アーティファクトを直せる人なんて数えるほどしかいない。私には出来ない」

「だったら、女が戦って良かったってことじゃないか、ギャアギャア騒いでるんじゃねぇよ!!」


 相変わらず誰にでも喧嘩を売っていくクロネコさんの発言にあからさまに苛立ちだった態度を見せるリーチェさん。

 折角助かったのにこのまま雰囲気が悪くなるのは良くないよね。


「で、でも他に方法があったかもしれないし、僕も軽率だったよ……ごめんなさい」

「わ、分かれば良いよ……良い? 君は一応この集団の頭なんだから、次からはちゃんと考えてそれから行動して!」

「う、うん気をつけるよ」


 リーチェさんはまだ納得はいかないみたいだけど、取りあえずはここまでにしてくれるみたいだ。


『ぐるぐる……』

「ん? わ、わ!?」


 急にデゼルトが喉を鳴らしたかと思ったら頭を撫でるように擦り寄ってきた……これってもしかして僕、慰められてる?


「大丈夫だよ、デゼルト」


 僕がそう言うと竜は頭に擦り寄るのを止めて静かに前へと向いた。


「ユーリのおかげで前には進めるけど、どっちに進めば良いのかな?」

「ああ? そりゃフォーグに向かっていくんだろうが……」


 そうなんだけど、実は僕たちはまだ先ほどの場所から動いていない。

 理由は単純、僕たちの船は僕の魔力の所為でかなりの距離を動いてしまったようで見当違いの方向へと進んでしまった。

 デゼルトに出会った場所まで連れてってとは言ったのだけど、この広い海の中流石のドラゴンも場所を把握することは出来ず、現在に至るという訳だ。

 僕たちが言いたいことを理解したのかクロネコさんは辺りを見回し舌打ちをする……僕もさっき見たから解るけどここには先ほどの孤島みたいな目印が無い。


「方位の魔法は使えるんだけど、ここがどこなのか分からないんだ」

「チッ……これじゃ地図を見ても分からねぇか……フォーグの近くだとは思うんだがな」

「お前らな……だったらフィーナの精霊魔法があるだろうが」


 それは考えた、でも……


「こう海に囲まれてたら精霊も道がわからないよ?」


 僕たちが沈黙する中、一人の男性がその沈黙を破る。


「結果漂流という訳か……おい、ホークお前の出番じゃないか?」

「ええ、出来ればもう少し休んでいたいのですが、仕方ありませんね」


 ホークさんの出番?

 なにか役に立つ道具でも持ってたのかな、でも手にはなにも持ってないみたいだし……

 他の皆もそうなんだろう困惑する僕たちにシアンさんが自信満々な顔を浮べ始めた。

 なぜ、貴女がそんな顔を?


「ふふん、ホークの目は特別でね! どんな物も見渡せるのよ」

「何故、シアンが自慢げなんですかね……」


 どんな物でも? もしかして千里眼とかそういった能力?

 そんなことを考えている内にホークさんは浮遊(エアリアルムーブ)を唱え空を飛ぶ、若干ふらふらして危なっかしいなぁ。

 いや、違うよ……今はそこじゃない。


「なんか、凄く危なっかしい飛び方だねー?」

「全くだな、ユーリとは大違いだ」

「ふ、二人とも……」


 フィーとドゥルガさんも気になるのは其処なんだ。

 そういえば、シュカが黙ったままだけど……

 僕はシュカの方へ顔を向けると彼女はやはりどこか惚けた顔をしながらホークさんを見ている。

 やっぱり、そういうことなんだろうなぁ……

 ホークさんは俗に言うイケメン、僕も最初この世界に来る時はああなりたかったんだけど……それが遠い昔のように思えるよ。

 そんなことを考えていると、ホークさんは船へと戻って来て指を指し口を開く。


「あちらの方に小さい集落がありました。ここからなら約三日と言った所でしょう……とは言っても今までの速さで船が進めたらの話ですが」

「よし、じゃぁそっちに向かうぞ、おい! 馬鹿ドラゴン進め」


 クロネコさんはデゼルトへ向け出発の指示を出すが、全く動かない。

 それどころか欠伸のような物をしたかと思うと甘える様に喉を鳴らし、僕へと擦り寄ってきた。

 それを見てクロネコさんは尻尾を叩きつけるように振り。


「全然言うこときかねぇ……」

「手懐けたのはユーリだからねー」


 そして、何故フィーは誇らしげに口にしたのだろうか?

 そんなフィーは僕へと向き直り、笑顔のまま一言告げてくる。


「ユーリ、お願いできる?」

「うん、デゼルトあっちの方へ進んで」


 デゼルトは僕の声に答えるように『グルッ』っと一声上げ僕の指差した方へと進んでいき、繋がれた船はゆっくりと前へと向かう。

 とはいえロープだといくらドラゴンでもデゼルトは痛そうだし、強度とかが怖いなぁ……


「リーチェさん集落に着いたら、デゼルトと船を繋ぐものを作ってもらえますか?」

「ん? 分かった材料さえあれば持って来たもので出来そうだし、着いたら作っておいてあげるよ……」


 そう言うリーチェさんの目はやはり冷たげだ。

 と言うか僕に目を向けると言うよりは……


「起きたら、ユーリがドラゴンといるからビックリしたよー」

「あはは、逆だったら僕もビックリしてたよ」


 僕に抱きついてきたフィーに向けられている気がした。





 アレから三日ドラゴンに引かれた船は順調に進んでいく。

 デゼルトの食事が気になったけど、どうやら進む途中で魚を獲って食べてるらしく、僕たちにお裾分けもしてくれた。

 ホークさんによればドラゴンを連れているからなのか、なんなのか魔物が近づいてくる気配も無く、僕たちの目的地である集落へと船は行き着いた。


『ぐるぐるぐるぐる……』


 集落へと着いた矢先デゼルトはまるで褒めてと言わんばかりに顔を僕の前に出し甘えた声を出す。


「ありがとうデゼルト、助かったよ」


 頭を撫でてやると嬉しそうに目を細める様はドラゴンでちょっと怖い顔をしているのにもかかわらず可愛く見えてしまう。

 毛も無いしこの子だったら屋敷で飼えるかな? あ、でも陸は大丈夫なのかな?


「フィー、この子って陸に上がれるの?」

「ん? うーんドラゴンだし、陸は大丈夫だよ? 翼が無いから空は無理だろうけど」


 良かったそれなら屋敷にも行けるよね?

 あ、でも……ドラゴンって連れて歩いて大丈夫なのかな……


「でも、ここであげるのはちょっと……」


 フィーは大地の方へと指を伸ばし、苦笑いをする。

 其処には呆然とした顔の人たちがいて……


「あ、ち、違うよ、この子なら屋敷でも問題が無いかなって思って……」

「なるほど、うん、この子ならナタリーでも大丈夫だと思うよー、でも、海の水は駄目だろうからちゃんと洗ってあげようね?」

「うん、そうするよ」

『ぐるぐる』


 どうやらデゼルトは話が終るまで待ってくれたようだ。

 この子は気を利かせてくれているみたいで僕とフィーが仲が良いことを知ると話している最中は待ってくれている。

 それに、他の人はやっぱり駄目だったけど、フィーの言うことなら聞いてくれる様にもなった。

 ソティルの言うことではデゼルトは主人である僕の大切な人と認識して、同等に扱っているらしい。

 因みに他の人はデゼルトより下と判断しているみたいで……特に――


「おい! 女に馬鹿犬!! さっさと降りて説明しやがれ!!」

『シャー!!』


 クロネコさんは大嫌いみたいだ。


「わ、分かってるよ、行こうフィー」

「うん、説明しないで冒険者呼ばれると困っちゃうからねー」


 それだけは困る、早く降りてこの子が危険な存在じゃ無いことを伝えた方が良いね。

 僕たちが船から降りる意思を見せたからだろうか、デゼルトはまるで乗れといっているかの様に船の横に頭を着けて、ぴたりと動きを止める。


「良い子だねー」

「うん!」


 フィーと一緒に頭に乗ると今度はゆっくりと地へ向かい。

 僕たちが落ちないように大地へと降ろしてくれた。


「ド、ドラゴンから人が……」


 岸に降りて人々を見回してみると、森族(フォーレ)の人が多く、どの人たちも小奇麗とは言えない格好をしていた。

 流石にこれだと、食料を分けてくださいなんて言えないな。


「突然すみません、このドラゴンは見ての通り大人しい子なので安心してください。それで……その、海で遭難してしまって……出来ればここがどこなのか教えてもらえないですか?」

「おお、おおおお……ま、まさか……」


 僕の言葉が終るのとほぼ同時に一人、森族(フォーレ)の老人が震えた声をあげ人ごみを掻き分けて来た。

 この人は一体……誰なんだろう?


「ああ、あああ、間違いないそのお顔は……」


 老人は僕の横にいる女性フィーへと顔を向けどこか嬉しそうに膝を着く。


「え、えっと……」


 対するフィーはどこか、困った様な表情を浮かべ。


「立派に成長なさったのですな、フィーナ様」


 老人はまだ名乗っていないはずの彼女の名前を口にした。

 って……


「フィー、ナ……様?」


 なんで、フィーを様付けで?

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