これからはどうなるの……?
どうぞ
あの後、俺は朝までまた寝こけた。医者によるとまだ新しい体に慣れていないらしく、疲れて寝てしまったようだ。起きてバッチリ目があった看護婦さんに苦笑されたおかげで、朝から俺のテンションはマリアナ海溝よりも低くなっていた。
「見られたのが看護婦だったのが不幸中の幸いだった……」
というのも、寝ている間に服のあちらこちらが寝相ではだけて、見せられないよっ☆状態になっていた。 やってきた看護婦さんに苦笑されながら指摘されたときは顔から火が出るかと思ったね、こんななりでも中身は男の子なのだ。
「しかし、外見だけでなく、精神も女に近づいていってないかなこれ……?」
はだけた服を整えるときに当然のことながら自分の体を見た、その時に自分のやや大きい二つの丘も見た。男だったら興奮して当たり前だろう、なんせ夢と希望が詰まったおっぱげふんげふん……自重自重、取り敢えず俺は自分のそれを直視したのだが………………………
「不思議なことに、まったくもって興奮しない、非常に遺憾である」
そう、男だったら誰もが拝みたいモノのはずである胸を見ても、今の俺からしたらただの二つの大きな膨らみにしか見えなかった、これにはちょっとショックだ。つまり自分は、姿形だけでなく精神もちょっと女に近づいているようだ。これがテンションを下げている理由の一つだ。だけどさらに憂鬱なのが
「はぁ、簡単な検査ですぐに退院とは……これからどうしろと……?」
起きてすぐに簡単な検査が行われた、それは一応昨日は倒れたわけだからその点は理解できる、でも
~~一時間前~~
「フムフム、特に異常は見られないですね、では今日の午後から退院していいですよ、しばらくは慣れないと思いますけどど頑張ってくださいね」
「はいは……え?」
………………………これはないでしょ(泣き)
いやホント勘弁してもらいたい、こちとら女の子歴たった3日ですよ?どないせいっちゅうねん。
………
……………
…………………
「……とりあえず帰る用意しよ」
難しいことはあとで考えるようにしよう。え、なに? 現実逃避だって? キコエナイキコエナイ
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そんなこんなで家に到着、病院から家までは徒歩二十分ほど。これからもたまにこの病院には通うのだからほどほどには近い。
「さてと、……まずは何をすればいいんだろうか?」
うん、見事にめんどくさいことを後回しにしたツケが来てる。何をすればいいのかわからない。
「宿題…はないし、取り敢えず日常品でも調達しようかな」
私服は当然男用しかない、むしろ女性用持ってたら変態だと思う……
「そうと決まればデパートヘレッツゴー」
そういえば下着も買わなければいけないんだよなぁ、はぁ……
と憂鬱な気分に駆られていると
(おいかーけても~♪ おいかーけーても~♪)プルルルル
と自分のケータイがなった。
あれからケータイ一回も見てなかった、ていうかずっと冷蔵庫の中にあったみたい、よく壊れなかったなこのケータイ……
(かなうーのなら~♪ かなうーのなら~♫)プルルルル
おっと、いつの間にか曲に聴き惚れていてしまった、いい曲だよねこれ。
プルルピッ「はいはいどちら様でしょうか~」
とりあえず電話に出る、いつまでも待たしたままじゃ悪いし。
「あ、佐伯! やっとつながったか!! お前今まで何をしていたんだ!! いや、あのあと大丈夫だったのか!?」
そう言って大声で怒鳴るのは我れが友人の悠伎君、耳元で大声は勘弁してください。
「まあまあ、ちょっと落ち着こうよお茶でものみなg」
「あの後病院に運ばれたお前を追って病院へ行ったのまでは良かったんだけどその後しばらく会えないって追い返されちまってな、何回かお前の携帯電話にかけても出ないし、心配したんだぞ!!」
「あー、うん、ごめん」
確かに友人が目の前で倒れて音信不通になったら心配するよね、そして何よりも冷蔵庫にケータイ忘れててごめんなさい。
「全く、心配かけやがって、それで体は大丈夫なのか?」
「えーと、多分、大丈夫? なんじゃないかな?」
ケガとか病気にはなってないから大丈夫っていったら大丈夫だけど、大丈夫じゃないっていったら大丈夫じゃないような……微妙なところだ。取り敢えず女になっている事は今は隠そう。
「何故答えが疑問系……ん? 佐伯、なんか声が高くなってないか?」
「え!? い、いやそんなことにゃいと思うにゅ!!」
なんでこいつはこういうところに鋭いんだ! 思わず噛んでしまったじゃないか!!
「なんか怪しいな……ホントに大丈夫なんだろうな?」
「あはは、大丈夫大丈夫、平気平気」
と言いつつ内心ちょっとビクビクしてます。
そういえば友達とかご近所さんになんて説明しようか何も考えてなかった、まずしなければいけない事ってこれを考える事だったと気づくが、後の祭りである。
「ふーん、なんか怪しいけどまあいいや、それで今どこにいるんだ?」
「ん? 今退院したばっかりで家にいるよ、そいでケータイを冷蔵庫からサルベージしたとこ」
「そういえば冷蔵庫の中にあるとか言ってたな……携帯につながらなかった原因はそれか」
「それに関しては本当に申し訳なく思っている」
「取り敢えずそのへんのことは置いといて、今家にいるんだな?」
「う、うん」
あれ、何か嫌な予感がする、墓穴掘った?
「それならあの事件がどうなった知りたいし、かりにも友人を病院送りにされたんだ。俺にも犯人とは一回オハナシしたいところだし、詳しい事を聞くためにもお前の家に今から行くわ」
「はいは……え? ごめん今なんて言った?」
俺の耳が異常をきたしてなければ、俺の家に来ると言ったように思えるんだけど・・・・
「だから今からお前の家行くっていったんだよ、何か問題あるのか?」
「…………」
「…………?」
「………………………………ダ……」
「………………………………ダ?」
「ダ、ダメェェェェェェェェェェ!!!」
「うぇ!? な、なんだなんだいきなりどうした!?」
「今家に来ちゃダメなの!!」
やばい! 今悠伎に見られるわけにはいかない!! なんとしてでも隠し通さなければ……!!
「取り敢えず落ち着け!! ひとまず何故お前の家に行ったら駄目なのか理由教えてくれ」
「それは、えーと……そ、そう! 今ちょっと散らかってて!!」
「いつものことだろ? それにいつも掃除手伝ってるし」
「う……じゃ、じゃあこの前の事件でちょっと体調崩してて……」
「何!? 何とも無くないじゃないか! 待ってろすぐ行く!!」
「わぁぁぁ!! ごめん嘘今のナシ!!」
自分で墓穴掘ってどーすんだ俺!? どうすればいい!? どうすれば隠し通せる!?
「実はもうお前の家見えるところまで来てるんだ、言いたいことや文句はそこで聞く、じゃ!!」ピッ
「あ、ちょっと待って!! 今は本当にダメなんだってばぁぁぁぁぁぁ!!!」
その時、俺の甲高い絶叫が家中に轟いた……どうしよう……