戻れないってどういうこと……?
要望があれば前書き後書き復活させるかもしれません。
「それってどういうことですか!!」
思考停止すること五分、やっとのことで我に帰った俺が発した第一声はそんな言葉だった。いやまさか戻る方法がないとまでは思ってなかったよ!!
「とりあえず落ち着いて聞いてください、これには理由が……」
「これが落ち着いていられるかっ!!」
今まで俺は男だったんだぞ!! それがいきなり女にされて、挙句の果てに戻れないとか問題ありありじゃないか!! 服もないし女の友達もいないから立ち振る舞いが全然わからないし!! それ以前に戸籍とかどーすりゃいいんだよ!!
「これから生活どうすればいいんだよ!! 戸籍とかな「それについて今から説明しますのでひとまず落ち着いてください!!」……!! はい」
俺がギャーギャー言ってると、医者は強い口調でそう言った。、少しパニックになりすぎて周りの声が全く入ってこなかったようだ。
「少しは落ち着きましたか?」
「はい、すいません……」
ちょっとパニックになりすぎていたようだ、少し落ち着いて頭を冷やそう。
「それでは、まずはあなたが元に戻れない理由から話そうと思います、いいですか?」
「あ、はい、よろしくお願いします」
取り敢えず話を聞いてみることにしよう、そこから叫ぶなり頭を抱えるなりしても遅くはないはずだ……多分。
「まず、あなたが巻き込まれた事件ですが、実はあの場所以外にも数件起きていたんです」
「ふむふむ……え!?」
なにそれ!? テレビでもそんな事件報道されてなかったはずだし、全く聞いた覚えもないよ!?
「そして奇妙なことに、それらは同じ日にちに起こりました。しかも、そのすべての事件で性転換させられた人がいるんです。それも、決まって男性から女性にね……」
「!!」
それについては色々心当たりがある、医者さんが昨日に限定して俺に聞いてきたこともつじつまが合うし、犯人も女性は対象外とかなんとか言ってた気がする。
「それで、私たちも不審に思わないわけがなく、あなたたちが寝ている間に色々調べさせてもらいました、そして性転換した人がいる病院と連絡を取り合ってデータを集めました。その結果……」
「その結果?」
まあ言わなくても言わんとしてることは大体分かる。その結果が今の俺の姿というわけなのだろう。
「村宮さんを含め被害者全員の染色体のYがXに変わってしまってしまいました、それによりあなたたちの遺伝子情報が突然変異を起こしてしまったようです。多分あの集団の持っていた薬の効果でしょう、どうやら遺伝子組み換えの薬に近かったようですね……」
「は、はぁ……」
なんだかすごい勢いで説明されているんだけど……、うん、疑問はあとでぶつけよう。
「それでですね、人間の染色体っていうのは2nで表されるとおり、二つの情報が組み合わさってなってるんです。それの片方のYが壊されてしまったことにより、もう一つのX遺伝子が修復しようとして壊れたYの染色体をもとにXが作られたんだと推測しました。人間が元々持っていたのはX染色体で、Y染色体は突然変異によって生まれたとも言われています。そして……」
なんだか放って置いたらいつまでも続きそう、そしてあの人は俺が中学卒業したばっかりだと知らないんだろうか?
「あ、あの説明してくれるのは嬉しいんですが」
「……であるので……あ、はいなんですか?」
会話が止められて如何にも不思議そうな顔してらっしゃる、いやそんな顔されてもね……?
「さっきから言われてることの半分……いや、四分の一も理解できません」
だって中学卒業したばっかで染色体だか変色帯だか知らないけど習っているはずがないじゃないですか、もし習っていたとしても俺はそんな頭のいいほうじゃないからきれいさっぱり忘れてるだろうけどね!
「なので、俺がこうなった過程はすっ飛ばしていいですから、結論だけ言って貰えれば嬉しいです」
はっきり言って俺は勉強が嫌いなほうだ。なのにこんな理解できない理科のことを言われても苦痛なだけである。それよりも俺は今後どうすればいいのか、どうなるのかを教えて欲しい。
「あ、はいそうですか……」
何か少し残念そう、あれですか、自分の好きなことを話すのはそんなに楽しいですか、そんな顔されてもわからないものはわからないです。
「それで、結論を言うと元に戻す薬というのは現在進行系で開発中でして、今は村宮さんを元に戻すこと方法はありません……」
「どうやっても無理ですか? ほら、もっかい薬飲むとか?」
このままっていうのは正直勘弁して欲しい、日常生活に支障が出るし、どこかでぼろが出そうだし。
「多分、あれはY染色体だけに影響を及ぼす薬です、次飲んだら遺伝子障害が起こってずっと寝たきりかもしれませんけど、それでも飲みますか?」
「……それは遠慮させていただきます」
さすがにそれはやってられないってレベルじゃない、ていうか今のあの言葉を聞いて飲む奴は自殺志願者だけだと思う、変態でも飲まない。
「あ、そうだ!! 俺を襲ったやつが元に戻る方法を知ってるんじゃないですか?」
「ああ、それなんですが……」
さすがにあの状況から逃げ出した、てことはないだろう…………死んでるっていう可能性はあるかもしれない、すごく吹っ飛んだし。
「村宮さんや他の人たちのおかげで犯人は捕まりました。しかし警察が調べたところ、彼らは依頼主に
『男なら誰でもいいから15人ぐらいにこれを打ってこい、そうすれば多額の報酬をやろう』と言われたらしく、その依頼主もフードをかぶっていたらしく顔が分からなかったらしいです。つまり、彼らは薬を作った真犯人の情報を全く知りませんでした……」
「そうですか……」
やっぱり俺が思いつくぐらいの解決策は全部試されているよね……これで完全に詰んだ……
「それで、あなたが聞きたがっていた戸籍とか入学の問題ですが」
「!!」
元に戻れないなら元に戻れないでいい、いや全然これっぽっちも良くないけど!! でも、いつまでもうじうじと悩み続けているわけにはいかない、今後のことを考えないと。
「まずは、戸籍の方ですが、勝手なことながら村宮さんの女性の戸籍は作らしていただきました。本当はご両親に確認を取ってからのほうがよかったのですが……」
あー、俺の親はしょっちゅう家を空けて、しかも全然帰ってこない。俺ですらどこにいるのかもわからないし、連絡を取るのは無理だろう。ていうか戸籍って勝手につくっていいものなの?
「心配しなくても大丈夫です、あっち側にコネはありますから」
あっち側ってなにあっち側って? あと自然に人の心を読まないでください。
「まあその発言には突っ込まないようにしといて……フムフム」
ひとまず自分の新しい戸籍を見てみる。うん、ほとんど変わってないな。
変わったことと言えば…3点
名前 村宮 斎花
性別 女
ぐらいしか変わっていない。
「さすがに同名の人の戸籍を作ると後で不都合が生まれてきやすいので、名前は少し変えさせてもらいました。これからは斎花と名乗ってください」
「斎花、斎花ね……」
うーん、ダメだしっくりこない。これは徐々に慣れていかなきゃダメだろうなあ……最初の方は反応が遅れたりするかも……。
「それで、学校の方なんですが」
これも重要だ。俺はこの前とある高校、響音高校に受かったばかりなのだ。でも当然のことながら受かったのは斎花じゃなくて佐伯だったわけで、このままでは学校に行くことすらできない。
さすがに高校にいけないのはちょっと……
「ちょっと今度はそっち側のコネを使いまして、佐伯さんの枠に斎花さんを響音高校に入学させました、あなたはそのまま高校に入れます」
この人手回しが早い……俺が寝込んでた一日の間にここまでのことをやるなんて……ん?
「ちょっと待ってください、この際コネはどの方向からでもいいです、それよりも何故俺の行く高校を知ってるんですか?」
まだこの人にはどこの高校に行くかなんて言ってないはず、それなのになぜわかったし……
「今の時代、他人のこと、ましてや行く高校ぐらいいくらでも調べられますよ」
「なんというプライバシーの侵害、人権なんてあったもんじゃな……」
この際助かったから目をつむるけど、それは立派な犯罪のような気がする……
「……うっ?」
何か急に力が……
「あれ? 急になんか眠く……」
「体がまだ馴染んでないんでしょう、今日はゆっくり休んでください。今回治療費や診査代は国が持つので安心してください」
「わかり……ました……」
やばい、最近強烈な睡魔に襲われすぎな気がする、でも逆らえるもんじゃないし、何回経験してもなれれるもんでもない……とりあえず今は寝よう。おやすみ
そこで俺の意識は途絶えた