クラスメイトとのスキンシップはどうしてこうなったの……?
ちょっとリアルでものすごくやばい状況におちいってました(スランプが長く続いてしまったって言うのが一番大きな理由ですが)ごめんなさい。それとここから安定した投稿はきついかもしれません。できるだけがんばります
「……………………」
「……………………」
今、俺は教室内でクラスメイトの一人に話しかけられ、言われるままに教室を出てどこともわからない場所へ連れて行かれようとしている、のだが……
(なに一つ会話がない……気まずいを通り越して今すぐ帰りたい気分だ……)
さっきから会話するどころか言葉一つすら発しないし、視線すらこちらに向けてくれない。
(そういやなんで俺は呼ばれたんだ……?)
恨みを買うどころかいままで面識すらなかったはずだし、まだ一度も話したことがない。そんな完全初対面の俺に用があるっていうことはあの自己紹介でなにか言いたいことができたとしか考えられないんだけど……
(あんな自己紹介で聞きたいことができるなんて……あるのか?)
あんな自己紹介を聞いて思うことがあったとすればせいぜい『え? こいつ何言ってんの?』ぐらいなものだろう……自分で言ってて悲しくなってきた。
(もしかして……カツアゲ?)
それなら納得がいくかもしれない、あんな自己紹介をする奴なんてボッチでコミュ障以外考えられないし、これから先味方ができるとも思えない。狙うなら格好の獲物だろう。
(あれ? でも教室では割と悠伎と話していたよね?)
この人の話しかけてきたタイミングは悠伎が席を離れてすぐだったはずだ。偶然かもしれないけどさすがにタイミングを図ったように思える……?
「……ここなら誰もいないでしょう」
そんなことを考えているうちに目的地……というよりは話しやすい場所についたようだ。
「ふう、それで……ボクになんのようがあるの?」
まさかここまで来て何も用はありませんでした、なんてことはないだろうし……まさか本当にカツアゲか何かの類?
「…………あなた、どちらの性別?」
「え……!? いや、見た目通り女……ですけど」
一瞬何を言われたかわからなかったけど、相手の意図を理解して俺は身構えた。
(しらばっくれてみたけど…………これはばれてる……かな……)
さすがにこんなところまで連れてきてわざわざ性別だけきいてはい終わり……なんてことはないはずだ。間違いなくあの事件がらみのことを聞かれるんだろう。
「言い方が悪かったかしら? あなたが思う自分の性別はどっちという質問に変えるわ、ここまで言えば何が言いたいかわかるでしょう?」
「……それがわかったところでボクをどうするつもり? 脅迫でもするつもり?」
まあ脅迫する気だったとしてももうほとんど無意味だけどね、俺の教室での印象は自己紹介で死んでしまっているし、そこに変なオプションが加わったとしてもほとんど何も変わらないだろうし。
「つまりあなたもあの事件に巻き込まれたのね……?」
「……あなたもっていうことは……もしかしてあなた自身もそうなの……?」
あの事件は他の場所でも起こっていたって言ってたし、他の被害者がいたとしてもおかしくはない。でもまさか同じ学校の同じクラスにいるなんて思いもしなかったけど。
「いえ、私は違うわ」
「え、じゃあなんの為にボクを呼んだの?」
それなら別に俺を呼び出す必要性なんてないような気がするんですけど……事件の事でも聞きたいのだろうか?
「私が聞きたい事はふたつ……ひとつは女体化をなおす方法よ。あなたは何か知らないかしら?」
「それはこっちがききたいぐらいだよ……医者に聞いても今のところなにもないって」
そんな方法があるんならまず俺は女子高生なんてやってない、俺はすすんで女になったわけじゃないから今すぐにでも男に戻りたいぐらいなのに。
「…………ならふたつめの質問よ……あなたが事件に巻き込まれたのは隣町のゲームセンターではないかしら?」
「それはそう……だけど…………?」
そんなことを聞いてどうするのだろうか? 犯人たちはとっくの昔にほとんど捕まったし、元の姿に戻るヒントなんてものは全くなかったはずだ。
「そう…………なら――――」
そう言うとその黒髪の女子生徒は俺を回り込むようにしながら背中に手を回して……
「――――もう少し聞きたいことができたわ」
棒状の物を取り出し、それをいきなり俺に向けて振りかぶってきた。
「……………………なっ!?」
バチンッ!!
俺がその場から飛びのいた瞬間、そんな音とともに叩き付けられた。
「…………なんのつもり…………?」
なんとかすんでのところでかわすことができたが、後一歩その場から飛び退くのが遅かったら確実に当たっていただろう。
「あなたは何も悪くないわ、ただ運が悪かっただけ。私の都合と逆恨みよ」
「っ……あんた自分が今何言ってるのかわかっているの!? それに俺は恨まれるようなことをした覚えはないよ!」
いくらなんでも身に覚えのない逆恨みで殴りかかってくるなんて正気の沙汰じゃないでしょ……!! スタンボウが人間を殺す確率は低いにしても零じゃないんだぞ……
「だから言ったじゃない、ただの逆恨みだって……でもあなたがあの時抵抗しなければ……こんな……こんなことには……!!」
ゾクッ!!
その言葉とともに、それまで感情の読めなかった女子生徒の瞳から考えられないようなすさまじい殺気が放たれる。そして俺はこの冷や汗が止まらなくなるような視線に心当たりがあった。
「あのホールと掲示板の前で感じられた強烈な殺気はあんたの仕業か……」
「私が見ていたことに気づいていたのね。あなた、なかなか出来るみたい」
「あんたに褒められてもうれしくないね」
俺は内心焦りまくりながらも表面上はなんとか静常を保ちつつ、頭の中を必死に回転させてこの状況を打開する方法を考える。
(どうする……? ここは4階だから窓から飛び降りて逃げるなんてできない……そして相手の後ろ以外に通路はない。つまり逃げるためには正面突破しかない……わけだけど…………)
相手の間合いの取り方やつめ方がかなりうまく、隙が見えない……素手での正面突破は正直言って無謀だ。
「…………観念しました? 大丈夫ですよ、別に命を奪うわけじゃないから……」
「そんな棒を振りかざしてくる人の言うことなんかまったく信用ならない」
「ふふっ、それもそうね…………まあ、どちらにしても私のやることは、かわらないわ……」
そう言いながら黒髪の女子生徒はスタンボウ(電気をまとった黒い棒状のもの)を構えなおすと、ゆっくり距離を詰めてきた。
(ちぃ……もう迷っているような時間はない……いっそのこと叫べば助けが来てくれるか……? いや、それで一般の生徒が来てしまったらこの人がなにをしでかすかわからない……)
結局どの行動も取れぬまま女性徒の接近を許してしまい、後一歩踏み込まれればスタンボウがとどく範囲内に入ってしまう……しかしどうすることもできない。
「さぁ……覚悟してくださ…………?」
ブー……ブー……
こうなったら腕の一本くらい犠牲にしてでも無理やりに切り抜けようと正面突破を考えていると、女子生徒のポケットから携帯らしきものの音がなった。
「……………………こんな時に」
女子生徒は煩わしげに携帯を取り出すと何かを確認している、それを見て俺は何時でも走り出せるように姿勢を整える。相手はそんな俺の心境を知ってか知らずかはわからないが、こちらから完全に視線を途切れさすことはないように思えた……
「……………………!!」
…………が、どうやら神様はこちらに味方してくれたようだ。女子生徒が携帯で何を見たのかはわからないが、驚愕の表情とともに手を震わせて携帯に魅入っている。今、こちらへ向けられていた視線が完全になくなった。
(今しかない……)
俺は迷いなくスタートダッシュを切った。このタイミングを逃したらもう逃げることはできないだろうし、相手が完全にこちらを見ていない今なら逃げ切れるだろうと踏んだからだ。しかし……
「…………うっ!?」
俺が体制を整えが地面を勢いよく蹴った瞬間、女子生徒は体を翻し俺と同じ方向に向けて走り出した。
(そんな……全て……お見通しだったっていうの……?)
俺は急ブレーキをかけるもバランスを崩し、顔から思いっきりその場で転倒してしまった。
(うぅ……しくじったなあ……)
後悔先にたたず、とはよく言ったもんだとは思う。今の俺の状況を表すのにこれほど適している言葉はないだろう。
「こんな事になるならあのゲームもうちょっとやっておくべきだった……」
こんな隙をさらしてしまったら好きにしてくださいって言ってるようなもんだ……最後のチャンスが、消えた……
…………………………………………
「あ、あれ?」
いつまでたっても相手がなにもしてこない事を不思議に思って顔を上げてみると、そこには影ひとつ存在しない静かな廊下が広がっているのみだった。




