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第4章 前編 「動き出す気配」

本日、第4章 前編・中編・後編 の3話投稿しています。

結婚7年目。

新しい命が宿ったと分かった。


嬉しかった。

それは本当だ。


でも同時に、思った。

――また、負担が増える。


母の実家での同居生活は、すでに続いていた。

育児と祖母の後始末を、同時にこなす日々。

そこに、もうひとり加わる。


つわりが始まると、朝起きるだけで体が重い。

胃がむかむかして、立っているのもつらい。


それでも――

洗濯機を回す。

台所を片付ける。

子どもを抱っこする。


どれも、体にずしりとのしかかった。


子どもを抱きながら、荒れた手で頬を撫でる。

カサカサの指先が、小さな肌に触れるたび、胸が締めつけられた。


「ごめんね」


心の中で、何度もつぶやいた。

洗い物をするたび、手はひび割れ、痛みが走る。

その痛みすら、もう日常だった。




そんなある日、次姉から嬉しそうな報告があった。


「できちゃったから、結婚することになった」


言葉の軽さに、一瞬、息が止まった。

頭の中で、

――え、順番……どういうこと?

という疑問が巡った。

でも、口には出せなかった。


姉も妊娠している。

これから出産、育児が待っている。


結婚相手として紹介された人は、初対面の印象から頼りなさそうだった。

目も合わせず、小さい声で「どうも……」と挨拶するだけ。


心の奥に、説明のつかない違和感が生まれる。


……頼りなさそう。

……なんとなく、嫌いかも。


理由はうまく言えない。

ただ、直感的に、信用できない気がした。




そして私の第二子の妊娠も進んでいった。


つわり。

育児。

祖母の後始末。


三つが重なる生活が、本格化する。




朝になればまた家事が始まる。

子どもが泣けば抱き、祖母の後始末も変わらずある。


またか……。


胸の奥で、そう思わずにはいられなかった。


子どもを挟んで三人で寝ていても、夜中に泣けば体を起こし、あやし、寝かしつける。

体は疲れているのに、心は休まらない。


布団に入ると、一日のことを思い返し、ため息がこぼれる。


「……今日も終わった」


でも明日になれば、また同じことが繰り返される。

この連続は、いつまで続くのだろう。


胸の奥にわだかまる不安は、まだ怒りではなかった。

でも確実に、生活を覆い、心の余裕を削っていく。


それでも。


妊娠の喜びと、もう一度家族を守ろうとする気持ちが、かすかな支えになっていた。


新しい命の存在は、疲れ切った心に灯る、小さな光だった。




でも――

何かが、静かに動き始めていた。

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