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2話

「新入生?」


声をかけられて振り返ると、小柄なポニーテールの先輩が立っていた。

額に汗が光っている。


「ウチの見学?

もしよかったら一緒に走ってみる?あっ、体操着かウェアある?無いなら予備貸すけど?」


その言葉に、胸の奥の熱さが小さく跳ねた。

断る理由はなかった。


「……はい」


そう答えると、先輩はにこっと笑った。


案内された部室の中で自前のランニングウェアに着替える。


そして先程の先輩に導かれるままにアップに混ざる。


ストレッチで体を伸ばすと、冬の名残の硬さが筋肉に残っているのが分かる。

流しで走るとシューズが砂を蹴る感触が足裏に伝わる。


ペース走が始まる。


先輩たちの背中は遠い。

でもギリギリ置いていかれるほどじゃない。


息は苦しくなる。

胸が熱くなる。

それでも絶対にフォームだけは崩さないように意識する。


前を走る先輩の肩甲骨の動き、腕振りの角度、地面を蹴るタイミング――

すべてを目で追いながら、ただその速度に必死についていった。


「君、結構走れるねぇ」


振り返った先輩の声は、少し驚いたようだった。


「中学は陸上部?」


「……はい、長距離でした」


短く答えると、先輩はその言葉を聞くと満足そうにしてそれ以上聞いてこなかった。


その距離感が、玲奈には心地よかった。




練習後、ベンチに腰掛けると体中がじんわりと熱を持っている。

汗が首筋を伝い、ランニングウェアが肌に張り付く。


先輩たちは少し離れたところで輪になり、真剣な表情で話していた。


「タイム的には今年も全国は厳しいかな」

「でも去年よりタイム伸びてる」

「絶対、諦めずに最後までやろう」


弱音もある。

不安もある。

それでも、誰も笑ってごまかさない。


負けるかもしれない現実と、ちゃんと真剣に向き合っている。


玲奈は黙ってその姿を見つめた。


(……こういう部なら)


ここでなら、

ちゃんと走れる。


そう、思えた。

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