外伝 記録番号0017
――特別部署・記録番号0017
この部署に名前はない。
正確には、
名前を持たないようにしている。
表に出ない。
功績も残さない。
失敗だけが、
記録として積み上がる。
「次は?」
ファイルをめくりながら、
誰かが言う。
「十七番。
……まただ」
写真が机に置かれる。
生きている。
だが、
生きているとは言えない。
十年前、
即死のはずだった事故。
未来を“見た”誰かが、
止めてしまった。
「最初は感謝された」
「当然だろ。
助かったんだから」
「……三年目まではな」
記録には、
文字が増えていく。
歩行困難。
内臓不全。
再生異常。
老化は進む。
だが、
死だけが来ない。
「本人は?」
「“もう終わらせてくれ”
だと」
部屋が静まる。
誰も、
反論しない。
この部署が生まれた理由は、
それだけだ。
救いすぎた。
人は、
未来を変えられるべきではない。
そう決めたわけではない。
ただ、
変えた結果を
見てしまっただけだ。
「新しい能力者がいる」
誰かが言う。
「……またか」
「今回は、
死相を見るタイプらしい」
資料を閉じる音が、
小さく響く。
「ヒーロー気取り?」
「まだ、
そこまではいってない」
「なら、
早めに会わせろ」
止めるためではない。
裁くためでもない。
選ばせるためだ。
見続けるか。
踏み込むか。
壊れるか。
どれを選んでも、
楽な道はない。
それでも、
選ばせる。
この部署がやっているのは、
それだけだ。
「……昔は、
俺たちも助けようとしたな」
誰かが呟く。
「だから、
ここにいる」
誰も笑わない。
正義を名乗らない者たちは、
今日も
善と悪の境界に
立ち続けている。
自分たちが、
どちら側なのか
分からないまま。




